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ごめんね,生クリーム

作者: セナ。

その日はとびきり甘いものを飲もうと決めていた。今日一日頑張った自分へのご褒美のつもりだった。

期間限定のスペシャルにして,生クリームをマシマシで,キャラメルソースもかけちゃって。

駅前のお店に寄って,紙袋を下げて帰宅する途中だった。突然スマホが鳴ったのだ。

思えば今日はついてないことの連続だった。

家に定期券を忘れた。会社で他人のミスを押し付けられた。割と気に入っていたボールペンを失くした。今日発売だった大ファンの作家さんの新刊が売り切れだった。

極め付けは……

たった今,恋人に電話でフラれた。

理由だってありふれたもので,別に君が悪いわけじゃないんだけどと前置きされて,将来が見えなくなって不安になったとかなんとか。

一方的に向こうが話したいことだけ話して,はいおしまい。こちらの話をする暇もなかった。

悲しみも怒りも湧いてこない。ただ電話を切られた後の静寂に虚しさを感じた。

こんな状況でも慣れというのは不思議なもので足を進めれば自然と自宅へと近づいていく。

遠くで電車が通り過ぎる音がして,ふと紙袋を覗くと先程買った飲み物の生クリームが少し溶け出していた。

駅から徒歩十分。

たったそれだけの距離でもう溶け始めてしまうのか。

少しだけ足を速めた。


家に着くと生クリームは半分くらい溶けてしまっていた。せっかくマシマシにしたのに。

いや,マシマシであったから半分も残ったと考えるべきなのか。

もうどうだっていいか。

飲み物にストローを刺し,かき混ぜ,生クリームを沈める。

期間限定もこうなってしまったら写真映えもしない。

勢いよくストローを吸うと乾いた喉に甘さが絡みつく。

容器にはもう生クリームのカケラもないが,それでいい。

生クリームなのかキャラメルソースなのか飲み物自体なのか。一つに混ざってわからなくなったそれは確かに甘かった。

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