九話 二人で食べました
九話 二人で食べました
今回はアックスがいるということで、フィッシュ&チップスを作ってみた。作り方はネットで調べ、味付けの加減は今までの経験で。
味見をしても要には薄味にしか感じないので、エスパーダとアックスにぶっつけ本番の形で出すしかない。
要は二人の前に料理の乗った皿を置いた。
「揚げ物……」
さすがにエスパーダは逡巡していた。
アックスはそれを察知して、剣に手をかけようとする。
「今、レパートリーを広げようとしてる最中だから。後はエスパーダに頑張ってもらおうと思って」
斬られてはたまらないので、言い訳をしておく。
「要は分かってない。努力には限界があるんだから。食事も制限しないと」
「じゃあ、それはアックスに食べてもらおう」
「分かった」
言うが早いかアックスはフィッシュ&チップスを食べ出した。
「あーっ!」
エスパーダが叫び声を上げた。文句をつけていたが本当は食べたかったのだろう。先にアックスに食べられて頭に来たようだ。
「アックス!」
「どうした? エスパーダ」
怪訝な表情を浮かべるアックス。
「要の料理の味見は私の役目なの! それなのに……」
「いや……だって、エスパーダは食べたくないんだろ?」
エスパーダの心変わりに混乱しているようだ。
「食べたくないなんて言ってないもん。揚げ物に抵抗があつただけ」
アックスは敵対していた要に顔を向け、助けを求めてくる。
今度こそエスパーダの彼氏であるところを見せつけられるかもしれない。
要は頷き、アックスに言った。
「大丈夫。一緒に食べれば、嫌われないよ」
多分。一人で食べるよりは大丈夫だろう。
「そうか。確かにフィッシュ&チップスは誰もが食べたい料理だからな。俺も日本に来る前はよく食べていた」
「フィッシュ&チップスは庶民の料理だと思ったけど、貴族のアックスも食べてたんだ」
不都合な真実に触れてしまったようで、アックスは黙ってしまった。
そして二人で黙々とフィッシュ&チップスを食べ続けた。