五話 誰が運ぶかでモメました
五話 誰が運ぶかでモメました
アックスを部屋に招き入れて、ルームランナーを設置してもらうことになった。
「これはどこに置く?」
「テーブルの上……は無理か」
テーブルの脚を登るにはルームランナーが邪魔であるが、持って登らないと意味がない。
エスパーダが要を見上げるとアックスが言った。
「俺にだって出来る! 人間の手を借りなくても」
明らかに要に対抗心を燃やしている。任せてお手並みを拝見したいどころだが、運ぶ物はエスパーダの物だ。要が支払ったが、エスパーダの物だ。
「エスパーダ」
エスパーダはまた手を挙げた。そしてアックスに言う。
「もし壊したら、今日使えなくなるでしょ。私は早く使いたいの」
そのためにエスパーダは白ジャージでいるのだから当然の答えだ。
しかしアックスは首を横に振った。
「俺の装備は、軍事会社ドモヴォーイ社の最新型だ。重力制御機能をいじれば、テーブルの脚くらい歩くように登れる」
アックスはエスパーダに向けてドヤっている。しかしそれほど効果はないようだ。男性が自慢したいことは大体の女性は興味がないからである。
「あー、はいはい。ちゃんと運んでくれれば文句ないから」
エスパーダはあっさり折れて、先にテーブルの脚を登っていく。アックスの勇姿も見る気がないらしい。
アックスはガッカリしていた。が、要の視線に気付き、平静を装って脛当てをいじり出した。そして段ボールを右手で担いで、テーブルに向かってジャンプした。
段ボールを担いでジャンプしたのにも驚いたが、テーブルの脚に垂直に立っていることにも驚いた。これが重力制御なのだろう。
足だけでテーブルの脚を登っていくアックスを見て、小人の技術力は侮れないと要は思った。