『死』の事実
初めまして、作者です。
久しぶりに作品を投稿致しますが、宜しくお願いします。
この作品は幼い頃から設定を考えていたものです。お楽しみ頂けると幸いです。
それでは、どうぞ__
「ようこそ、天界へ」
「……え、」
目を覚ました。
そして、うつらうつらだった意識が覚醒する。
それと同時に、頭に警報が鳴り響いた。『何処だ』『危ない』『知らない』と。
辺りを見渡す。
そこは、質素な室内だった。
一人の老人もいる。
俺は、痛む頭を押さえながら問いかけた。
「あの、貴方は…此処は、何処ですか」
と。目の前の老人は、少なからず焦っている俺に優しい眼差しを向けた。
いや、伝わっているのか。
そもそも聞こえているのか。
等と、失礼な事すら考えてしまう。
老人は口を開いた。
「おお、君は頭が痛いのか」
出たのは、俺の質問に全く関係の無いこと。
俺の中で老人の『これ、大丈夫なのか…』度が上がりつつも、一応口を割ってくれた。
答える。
「…はい」
弱々しい返答に、老人は目を細めて言った。
「なら、君は頭を何かしらの原因でぶつけて死んでしまった。ということだね。
大方、車の事故と見るべきかな」
「は、は…」
笑えない冗談だ。
答えたと思ったら、これだ。縁起の悪い。
俺はそう考える事にした。
考えれば考えようとするほどに頭痛がするからだ。
そして、何よりも『死んでしまった』という言葉に馴染みが持てなかったからだろうか。
乾いた笑いを顔に張り付ける俺に、今度こそ老人は真剣な顔をした。
「今から言うこと、さっき言ったことは事実だよ。
車の事故は定かではないが…でも、君は死んだんだ」
「しん、だ?」
「ああ、そうだ」
頷く老人。
俺と老人の二人しかいない部屋に、声が響いた。
鏡を見てみたい。俺はきっと、今まで見たことのない顔をしているだろう。
「ここに居るということは、確かに君は地上で死んだ。
いきなり言っても受け入れられないだろうけどね」
「…当たり前ですよ」
嘘かどうかなんて分からない。
一つだけでも言えることは、此処は俺の家じゃない。そして、俺の知っている人じゃない、ということだけ。
頭を二重の意味で抱え込む俺。
老人は、ある物を目の前に持ってきた。
鏡だ。それもかなり上等の。
「ほら、見てごらん」
見た。
と言えるのは正しい表現なのだろうか。
鏡の向こう、そこには、
俺も、老人も映っていない。
何も、部屋の壁すらも映っていなかった。
その時、俺は確かに見た。
老人が、人知れず自嘲気味に笑っているのを。