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【コミック5巻制作中】クラスメイトの元アイドルが、とにかく挙動不審なんです。  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第八章

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294話「アイドルとカラオケ」

 受付を済ませ、みんなでカラオケルームへ移動する。

 指定された部屋番号の扉を開けると、そこにはスタンドマイクの置かれた小さなステージに、天井からぶら下がる銀色のミラーボール。

 そう、今日やってきたのは、一年生の頃の遠足の後、みんなで初めてカラオケをした時と同じカラオケボックスへとやってきたのである。


 何故ここを選んだのか?

 それは言うまでもなく、今ここに集まったメンバーが、あまりにも異次元メンバーだからに他ならない。


 駅前の大きいカラオケボックスは、この時間絶対に混んでいるだろう。

 でもここなら、駅から少し離れているし存在自体がマイナーなため、駅前よりは確実に混んでいないだろうという消去法で選んだのだが正解だった。

 人がいないわけではないが、受付も空いていたし知らない集団と鉢合わせる気配はなさそうだ。


「うわぁー、何だか昭和って感じ! ドラマのロケとかにも使えそう」

「たしかに雰囲気いいねー! カラオケなんて何時ぶりだろ」


 部屋へ入るなり、あかりんもYUIちゃんも楽しそうにはしゃいでいる。

 きっと二人にとって、今日は貴重なオフ。

 そして、今日みたいに普通の高校生として遊ぶ経験なんて、あまり多くはないはずだ。

 だからこそ、まずはこのロケーションだけでも楽しんでくれているのなら、ひとまず連れてきて良かったと胸を撫で下ろす。


 ――これから、現役アイドルや歌手とマジでカラオケするんだよな……。


 いざカラオケルームに入ってみると、急に現実味が増してくるというか緊張感が生まれてくる。

 それも仕方ないことで、俺は歌手でもなければ人から有難がられるような歌声を持っているわけでもない。

 こんなプロの、しかも超が付くほどの人気な人達の前で歌を歌うなんて、軽い罰ゲームみたいなものだと、今更になって気が付くのであった……。


 ピッ――。


 しかし、部屋へ入ってまだ間もないけれど、さっそく選曲した通知音が聞こえてくる。

 俺はスマホを片手に、せめて少しでもまともに歌える曲を探そうとしていただけに、そのあまりに速い選曲に驚きつつ顔を上げる。


 ステージにある大きいモニターへ視線を移すと、そこに映し出されたのは誰でも知っているであろう有名なバラード曲のタイトル。

 きっとあかりんもYUIちゃんも、俺達に気を使ってくれているのだろう。

 俺達が先に選曲できないことを分かったうえで、こうして率先して歌おうとしてくれているのだ。


 でもちょっと意外だ。

 俺はてっきり、二人は持ち歌を歌ってくれるのかなと思っていたからだ。

 けれど、よく考えたら今日は二人とも完全にオフなのである。

 持ち歌ではなく、自分の好きな歌を歌うことは何もおかしなことではない。


 まぁ正直に言えば、本人の生歌は勿論聴きたい。

 けれども、持ち歌ではない今ここでしか聴けないであろう歌を聴けるということの方が、むしろその価値は高いのである。


 二人は、女性ロックシンガーとアイドル。

 それがまさかの、男性のバラード曲を歌ってくれるのだ。

 こんなの、きっと年末の特別歌番組で聴けるかどうかぐらいのレアさだろう。


 さて、まずはどっちから歌ってくれるのだろうと、俺はワクワクした気持ちとともに二人の座る方へと目を向ける。


 ……しかし二人とも、何故かマイクを手にはしていなかった。

 曲はそろそろ歌が始まろうというのに、どういうことだろうと思っていると……、



「あなたの笑顔を~、いつ~までも~、僕が守~るからぁ~♪」



 マイク越しに響き渡る、聴きなれた孝之の歌声。

 そう、なんとこの異次元カラオケの一曲目を、あかりんやYUIちゃん、更にはしーちゃんでもなく、まさかの孝之が先頭を切ったのであった――。


「わっ! いいねぇ上手ー!」

「いいぞぉー!」

「どうもー!!」


 立ち上がり熱唱する孝之に、あかりんもYUIちゃんも一曲目から大盛り上がり。

 そんな二人の声にも、おどけて応える孝之のハンパじゃないメンタル。

 これがスポーツマンの強心臓ってやつかと感心しつつ、自分の親友までもが異次元な存在であったことを思い出す。


「粉雪の舞い散る~、並木通りで二人~♪」


 甘い……! 今日も甘いぞ、孝之!!

 我らがバラード孝之は、誰が相手だろうと揺るがないんだっ!!


 やっぱり孝之! 俺が女なら惚れてるねっ!

 

 親友の盛り上げもあって、俺も気が付けば先ほどまでの緊張はすっかり和らいでいた。

 そんな孝之に対して、しーちゃんも一緒に盛り上がっており、隣の清水さんだけは少しだけ表情を引きつらせていた。


 こうして、一曲目からバラード曲で場に一体感を生み出す孝之。

 バスケだけでなく、歌の才能まで発揮する孝之は、将来は歌手にだってなれるのかもしれない。

 そんなことを考えながら、この異次元カラオケはスタートするのであった。




一曲目は、やっぱりバラード孝之でした。

クラきょどですが、コミカライズもされておりまして、本日ニコニコ漫画様で200万PV達成いたしました!

皆さまのおかげです!ありがとうございます!

コミックでも面白いので、まだの方は読んでみてくださいね♪

 


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