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お岩さん、時空を翔けめぐる  作者: 青空夢花
2/5

お岩さんの恋

「あ~、よく眠ったぁ~。」

 お岩は目を覚ますと、当たりを見回しました。何やら騒々しく激しい物音がします。

 突然鉄砲の玉がお岩の肩をすり抜け1人の男性に当たり、男性はうめき声と共にバッタリ倒れました。

「いくさ(戦)だ!

でも…どうして私は戦場になんかいるんだろう?

まずは逃げなくちゃ…。火縄銃に当たったら大変だ。」

 お岩が永い眠りから目覚めた場所は、熱帯植物が生い茂っている南の島でした。

 そして、時は…

お岩の生きていた時代より遥かに後の

《第二次世界大戦》の真っ直中でした。




 お岩は林の方に逃げて行きました。途中で何かにつまずいたので振り返ると、そこには1人の若者が横たわっていました。

「うう~っ、く…苦しい。」  

 若者は大怪我をしていました。苦しそうに顔を歪め、荒い息づかいで意識も朦朧としているようでした。

何て素敵な殿方かしら。

お岩はその若者に恋をしてしまったようです。

美しい顔立ちをした若者が苦しみに耐えている姿をみて、お岩はどうして良いのかわからず、彼の手を握りしめました。

「神様お願いします。この人を助けて下さい。私はどうなったって構いません。

この人の命を救えるのなら、私の命を捧げます。」

お岩は一生懸命祈りました。

「う…ん。」

 若者は生死をさ迷う意識の中で、薄目を開けました。

「あっ、気がついた? お願い…私の為に生きて欲しいの。」

「き…きみ…は?」

「私はお岩です。」

「お岩…さん? 僕の名前は…武だ。

だけど、女性の…あなたが…何故ここに…?」

「それは私にも…気づいたらここにいたの。」

「こんな…戦地で、君のような…優しい女性に出会えるとは…思わなかった。

でも、僕は…もう…駄目だ。もうすぐ…死ぬ。こ…今度生まれ変わったら、君の…ような…す…素敵な女性と…出会いたいな。

そ…その時は、僕とけ…結婚してくれる?」

「もちろん、その時は喜んであなたと夫婦になるわ。」

 お岩がそう言うと、安心したように武と名のる若者は息を引き取りました。




 お岩は死んだ武の胸の上で泣き崩れました。

 すると、武の体から魂が抜けていくのが見えました。

 そしてその魂がお岩の前に来ると、一瞬ギクリとして後ずさりしました。それから気を取り直したように言いました。

「一緒にあの世に行こう。」

「それは無理よ。あなたの事は好きだけど、あなたはもう死んでしまっているんですもの。」

お岩は悲しげに言いました。

「そうだね。それじゃ、先に行って待ってるから…。」

そう言うと、武は天国へと旅立って行きました。

「ごめんなさい、武さん。あなたの事がどんなに好きでも、生きている私はあなたについていくことは出来ないのよ。

でも、もし私が死んだらあなたのお嫁さんになってあげるわ。」

 お岩は呟きました。その後とても眠くなり、深い眠りに落ちていきました。




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