暗闇の洞窟
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「ヒカリのおかげで暗闇の洞窟とは名前だけなんじゃないかと思うよ」
「そうでしょ? 私ってば凄いのよ」
えへんと言わんばかりに腰に手を当てて可愛く仰け反ってみせる。心なしかトレードマークの三つ編みまで偉そうに見えた。
魔法のおかげで周囲は明るく、戦闘も全く問題なし。ただ、自分を中心に半径2mというところで、いきなり遠くから魔法や弓矢などの武器で攻撃されたら反応できないのが難点である。
暗闇の洞窟は階層ごとに分かれているらしい。最深部がどうなっているのかはまだ分からないらしいが、深くなればなるほど内装もしっかりしてくるのだとか。
今のところ洞窟特有の土埃が舞い、喉が痛くなりそうな雰囲気ではある。敵も一階層はスライムなど見慣れた敵のオンパレード。たまに見る誰が設置したのか疑問に思う宝箱が御大層に置いてある。現在入手したのは薬草二個、300Gだけというなんともパッとしない感じの報酬だった。
「もっと下の階層に行けば役に立つアイテム手に入るのかな?」
「うん! そのかわり出てくる魔物は少しずつ強くなっていくみたい。もうちょっと下まで行ってみようよ」
敵も弱いせいか二人とも気にせず奥へと進み、特に苦戦することもなく五階層まで来ていた。その間今までは見慣れた敵さん達のバリエーションも増えてきた。
洞窟ならではのコウモリの魔物、凶暴な土竜、二足歩行の蜥蜴などなど。カイトは華麗な身のこなしで敵の攻撃を交わし、リーチの短い短剣で薙ぎ払い敵を仕留める。
「カイト凄い! ほんとにレベル1なの?信じられないよ」
素直に驚いているヒカリの反応に嬉しくもあり、ちょっと照れながらも少し得意気に短剣を鞘に戻した。
カイトはそこで一つ違和感を感じていた。敵は強くなっているのは間違いないのだが、手応えが感じられなかった。そこでふとカイトは立ち止まった。
「カイト? どうしたの?」
「ヒカリ⋯⋯今僕のこと見てくれないか?」
「えっ? 急にどうしたの? 私ずっとカイトのカッコいい姿見てたよ! そう言われるとちょっと恥ずかしく⋯⋯」
「あっ! えっと、レベルを⋯⋯見て欲しいなぁ⋯⋯なんちゃって」
「えっ! レベル? そうだよね。そうそう! 分かってたよ。うん! 今見るからね」
この前のお返しをしようとして、勘違いさせてしまったことにこちらもちょっと恥ずかしくなり、ヒカリも照れを誤魔化すかの様にあたふたしている。そして落ち着きを取り戻しカイトのレベルを確認する。
「わぁ! 凄いよカイト! 今レベル8になってる!」
「え? レベル8!? これまでスライムやらを一杯倒してきて1レベルも上がらなかったのに?」
「うーん⋯⋯ここの敵が強くなってきたからなのかなぁ?でもカイトのレベルが上がって良かったぁ」
先程の照れとは変わり今度はカイトのレベルが上がったことを自分のことの様に喜んでくれる。ヒカリの純粋さにカイトはどこか嬉しいような感情とちょっとした不安のようなものも同時に抱いていた。
カイトは記憶を無くしてから二日目。まだ多すぎる情報について整理できず、ヒカリに惹かれるほど自分という存在が受け入れて貰えるのかという葛藤が産まれる。
「この勢いでレベルが上がれば『闇』にも対抗できるようになるかな⋯⋯」
「うん! きっと大丈夫! 私もカイトに負けない様に強くならなきゃ」
「そういえばヒカリってどちらかというと戦闘向きじゃないよね? どうやってレベルを上げたりするの?」
「私はヒーラーだから回復したりサポート呪文で経験値が入るの。だから私は一人よりこうやって二人で戦う方が効率はいいの」
「なるほど! じゃあヒカリのレベルも上がるようにサポートお願いするよ」
「うん! 任せて! いくら傷ついても私が治してあげるから」
「うっ⋯⋯それはそれでちょっと怖い気も⋯⋯」
二人の方針が決まったところで当初の目的であるレベル上げとアイテム集めを遂行することにした。
そうこうしている内にカイト達は15階層まで潜っていった。カイトの調子も良くレベルは順調に上がっていき、新しいスキルも覚えていった。
「ふぅ、だいぶ降りてきたなぁ⋯⋯」
15階層は今までの作りとは違い、石造りの建物の様な形になり敵の数も増えてきた。一本道の様な洞窟も終わり枝分かれした道も増えてきた。
「ここまで来たのは始めて⋯⋯全然雰囲気が違うね」
「うん。気を引き締めていかないとまずいね⋯⋯」
15階層まで降りてきたことには理由があり、そもそも洞窟層だとロクなアイテムが無かった。入手したのは、薬草やマジックポーション。そのアイテムも使いながら奥へと進んできた。
戻ることを考えると本来は温存しておくべきアイテムだが、道中で「銀の羽」を手に入れていた。これは洞窟やダンジョンから一瞬にして外に出られるというアイテム。
ヒカリが言うには結構な金額なので、冒険者は一つ買うのがやっとらしいので運が良かった。
石造りの洞窟では魔物が多くいるにも関わらず、薄暗く風が抜ける音のような物静かさがあった。
今までにはなかった扉もあり、ドアの向こうには何やら気配を感じ、カイトは恐る恐る扉を開ける。と、その瞬間
「グオォォオーッ!!」
カイトに覆い被さるようにいきなり左の鋭い爪で襲いかかってきた。強襲に驚きカイトはすかさずバックステップ。
猿型の魔物で体調は軽く3メートルはあるだろう‥
「カイト!!」
思わずヒカリが叫ぶ
「くっ⋯⋯大丈夫! さっき覚えたスキルがある」
「スナイプダガー!!」
グゥゥオオオオォオ
カイトは魔物の急所を突き刺し、一撃で仕留めた。しかし、カイトの右腕は先程の攻撃を避けきれずに痛々しい爪痕が残され血に染まっていた。
「カイト!! その傷治さなきゃ! ヒーリング!」
すかさずヒカリがカイトの腕に触れ治療を施した。すると血が止まり、爪痕で抉れた肉体も徐々に回復した。
「大丈夫⋯⋯?私びっくりして動かなかった⋯⋯やっぱりカイトは凄いね!」
「そんなことないよ。ちょっと危なかったし少しでも反応が遅れたら腕ごと持っていかれるところだった⋯⋯」
「やっぱりまだ二人だと危険だよ! そろそろ戻りましょう」
「確かにレベルは上がったけどまだこんなんじゃ⋯⋯」
クライヴには勝てない。そうカイトは言いかけたが言葉をのんだ。変な嫉妬心でヒカリを巻き込むわけにはいかず洞窟から出ることを決めた。
――――ゴォォォオン――――
「きゃっ! 一体何の音!?」
「洞窟の奥からだ! 行ってみよう」
洞窟を抜け出そうとした時もの凄い音がして二人は様子を見に行くことにした。そしてそこには五メートル近くはある立派な石彫の扉があり二人はその扉を開けた。
――――ゴゴゴゴゴ⋯⋯――
そしてそこには巨大なゴーレムの影と一人の女の子が対峙していた。