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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
6/56

フラウの花

100PVありがとうございます(*´꒳`*)

ブックマーク2件もいただいて凄く嬉しいです!

「えっと、あの、その⋯⋯」


「なぁに?」


 少年は小さな手をもじもじさせながら、ずっと抱えていた想いをついに伝える。


「三つ編みとてもかわいいねっ!」


 勇気を出して言った言葉は自分が思っているそれとは特別間違いではないが、かけ離れていることに気がついた。


「ありがとう! 凄く嬉しい」


 三つ編みの女の子は笑顔でそう答えた。とても嬉しそうな⋯⋯綺麗な瞳を潤ませながら

 


――――――――――――


「ふわぁ。もう朝かぁ⋯⋯」


 フカフカのベッドでいつの間にか寝てしまっていたらしい。記憶もなくし、いきなり『闇』とか魔物とか身体的にも精神的にも疲れていたことは間違いない。


 身支度を整える中、御大層な大剣がテーブルの上に置いてあった。戦闘中も何度か抜いてみようとするも全く抜けず⋯⋯というよりは剣の柄を握った途端に力が抜けていき鞘から抜けない状態だった。


「この大剣は一体なんだろうか。ダークダガーからダークナイトにでも昇格したら使えるのかな⋯⋯」


 そもそも職業に昇格という概念があるかすらカイトにはわからない。一生このままパッとしないダークダガーという良く分からないままなのか⋯⋯また変なところでカイトは不安材料を手にする。


 腰にふたたび短剣と大剣を身につけてロビーへと向かう。そのおかげか、やけに足取りが重たい。


「あ、カイト! おはよー」


 相変わらず一目見れば遠くからでも分かる大きな三つ編み。ヒカリはカイトより早くロビーに来てテーブルに地図を広げていた。


「カイトの記憶を戻すのにどうすれば良いか考えていたのだけど思いつかなくて⋯⋯でも地図をみたらとある場所を思い出したの」


 ヒカリはマイトの村から少し北西にある洞窟を指差して言った。


「ここの洞窟は暗闇の洞窟って言って、光属性の魔法を持ってしてもまだ最深部に到達した人がいないと言われているのよ」


「そうなんだ。強力な魔物も出てきそうだね⋯⋯」


「確かに強い魔物も多いらしいけど、それ以上に貴重なアイテムや装備も入手できるの。これからの旅に必要な物もあるかもしれないし、カイトのレベル上げにもきっとなるよ!」


 ヒカリは自信満々と告げた。記憶の手がかりになるかどうかは分からないが、正直色んなところを旅するには強くなければいけないと感じていた。


「ただこの場所は奥に行けば行くほど、結界の力も弱くなるから『闇』の影響も受けやすくなるの」


「なるほど。無理は禁物だね⋯⋯」


「うん。でも私がしっかりサポートするから任せて! 戦闘補助の魔法もいくつかあるし、回復魔法もあるから慎重に進めば大丈夫よ!」


 頼もしい限りではあるが、女の子にそれを言わせてるのは何処となく情けないと思ってしまった。


 暗闇の洞窟に向かう前に村で補助アイテムを揃えることにした。資金的には昨日倒したスライムやらの金額なので心許ないが仕方ない。

 コマンドを見れば金額が見れるのだが今は32Gゴールドと表記されている。


 道具屋に入るとなにやら見慣れない小袋やピンクの液体の入った怪しげな瓶などが並んでいた。



「うーん⋯⋯やっぱり薬草がいくつか必要かな。あとヒカリのMPを回復するのにマジックポーションも必要か⋯⋯」


「ねえねぇカイト! この指輪みて! かわいい! 輪っかのところが草でできてて頭にお花が付いてるー」


 ヒカリはテンションも上がり完全に女の子がお買い物を楽しんでいるような⋯⋯でもかわいいからまぁいいかと将来的に尻にしかれそうな男になることは間違いないマインドである。


「嬢ちゃん! それはフラウの指輪っていってな、少しずつだけどMPを回復してくれるんだ。その頭に付いてるのがフラウの花で癒し効果があるってわけよ」


 急に道具屋のいかついおっちゃんが話しかけてきた。僕たち二人を見て何やら微笑ましい顔をしているのは気のせいだろうか⋯⋯


「理に叶ったアイテムですね! ヒカリにもぴったりだね」


 フラウの指輪は18Gと表記されていて指輪を購入しても他のアイテムも問題なく手に入れそうだったので購入することにした。


「じゃあこの指輪ください」


「毎度! あんちゃんも男だね!」


 カイトは道具屋のおっちゃんにからかわれながらもヒカリの為にフラウの指輪を購入した。


「え!? いいの? ありがとう!!」


 満面の笑みと心なしか大きな三つ編みも喜んで跳ねているようだ。ヒカリは小さい子供のようにはしゃいでいる。


「じゃあ早速その指輪しなきゃ! カイトつけてくれる?」

  

 早く早くと言わんばかりにヒカリはカイトに指輪をつけてとねだっている。


「え?あ、えっと⋯⋯その僕がつけるの?」


 なんとカッコ悪い返答だろうか。カイトはあまりの急展開に恥ずかしくなってきた。恥ずかしくなったことすら恥ずかしい。


「カイトが買ってくれたんだもん! カイトがつけて! お願い」


 なんとまあかわいいお願いが飛び出すのだろうか。そう言われて叶えてあげない男がいたとしたらもはや男ではなく別の生き物だろう。


「わ、分かったよ。じゃあ右手につけるね」


 ヒカリの見惚れるような白い手を見て戸惑いながらもカイトは優しく手を添えてヒカリの薬指にフラウの指輪をはめた。


 シュルシュル⋯⋯


 少し大きかった指輪は草の部分がヒカリの指にぴったりのサイズへと変化した。


「わぁ、凄くかわいい! ありがとうカイト! 大事にするね」


「うん! ヒカリにとても似合うよ」


 後ろでニヤついている道具屋のおっちゃんのことも忘れ二人の世界になっていた。その他にも薬草、マジックポーションなど基本的なアイテムを揃えて道具屋を後にした。


「うふふー♫ お買い物楽しかったぁ!」


 買い物からずっと上機嫌なヒカリを見ているとこれからとても戦闘に行くような雰囲気ではなかった。まるでピクニックにでも出かけるような感じだ。


 暗闇の洞窟に向かう途中にも魔物は出てきたが、やはりスライムやゴブリンなど平和そのものであるから余計に浮かれた気分にもなるが、今のカイトは不安な精神状態であることも間違いではない。


 ヒカリの底抜けの明るさに救われているだけで一人でいれば気が狂ってしまいそうなくらい不安なのだ。


「ついたよ! ここが暗闇の洞窟! 私も来るのは久しぶり。クライヴと一緒に来て以来かな」


「え? クライヴと?」


「そうよ。幼馴染でもあったし、二人とも光魔法が得意だったからそこまで奥の階層まで行かなければ平気だったの」


「そっかぁ、クライヴとならきっと気楽だよね……」


「え? なぁに?」


「ううん。なんでもない。僕もしっかりとレベル上げて強くならなきゃ」


 カイトはこの洞窟までの道中にも多くの魔物を倒したが一向にレベルは1のままだった。その不安もあり、クライヴへの分かりやすい嫉妬とも呼べる感情を抱いていた。

 

 真っ暗な入り口を見ていると今にもその不安の感情と一緒に飲み込まれてしまいそうだ。


「神よ我らに小さき光の希望を灯せーー」


 ヒカリが何やら呪文を唱えると二人の周りがパァっと明るくなった。


「さぁ行きましょう! これなら洞窟内でもはっきりと見えるわ」


 なるほど。言われてみると洞窟内が明るい訳がなく勝手になんの準備もなく入れると思っていた自分が恥ずかしい。

 それでもヒカリ曰くこういった魔法で照らす洞窟の方が少ないのよ。と優しいフォローが入っていたことは秘密にしておこう。



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