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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第二章 武闘会
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ヒカリVSコーネル

「さあ、それでは早速決勝トーナメントにいってみよう! 勝ち残った8人は導きの船に乗る勇者達だ! さらにここで優勝した人にはとっておきのご褒美があるから頑張ってくれよな」


 司会者は相変わらず声だけのようだ。観客の歓声と入り混じっており不愉快加減が少しだけ減った様な気がしていた。


「ご⋯⋯ご褒美!?」


 目に$マークが見える様にシェイナはキラキラと目を輝かせていた。相変わらずお金の話しになると俄然やる気が出ていた。


 参加者はいつの間にか統一された広い舞台の上にいた。小さい少女もいれば、黒髪の好青年、不気味なピエロの様な仮面を被った男なのか女なのかも分からない者など様々だ。

 ただ、あの理不尽とも呼べる状況下の中勝ち残ったのだから相当な強さなのも間違いない。


「決勝のルールは簡単! 時間は30分。あとは予選と同じで相手を場外に落とすか降参したり、死んでしまったら負けだよ。だらだらと戦ってもしょうがないでしょ?」


「とにかくみんな場外に落とすことを心がけよう! これから『闇』に立ち向かうための戦力が減っても何の意味もない」


 カイトは会場の7人にそう呼びかけた。小さい女の子はウンウンと頷いていたが、仮面の人物は全くもって無反応だ。マントで身体を覆い隠しており不気味なオーラを更に助長している。


「そうですね! 私達は世界を救うために導きの船に乗るんです。これから一緒に戦いましょう!」


 黒髪の好青年はカイトの呼びかけに反応した。カイトよりも主人公が似合いそうな青年は黒髪のイケメン。青銅の鎧を纏い、腰には剣を携えていかにも勇者の風格を感じる。


「カ⋯⋯カッコイイ!」


「あ、ありがとう! 僕はカイト。君の名前は?」


「私の名前はコーネル! 是非とも宜しくお願いします」


 黒髪の好青年コーネルはピシッとした姿勢でお腹に手を添え軽く一礼をする。その姿は騎士の様で佇まいから育ちの良さが滲み出ていた。


「私の一回戦の方ですね! 私はヒカリといいます。お手柔らかにお願いします」


 コーネルに影響を受けたのか、いつもよりしっかりしなきゃと三つ編みの女の子もペコリとお辞儀した。


「それに今回の大会は様子が⋯⋯」


 ヒカリは今回の大会がいつもとは違う様子を伝えようとするが司会者に遮られてしまう。


「もう自己紹介はいいから、初めてもいいかな? 時間も限られてるんだし早くやりましょ」


 未だ顔も見せない司会者は何やら焦った様子で試合を始めようとしている。

 シェイナやヒカリの話によると、例年は相手を殺してしまったら失格になっていたのだとか。何故今回からルールを変更したのかは誰も分からない。


 出場者達はヒカリとコーネルを残して舞台を降りた。


「ヒカリー! 頑張ってねー!」


「シェイナちゃんありがとう! 頑張るね!」


 シェイナが明るく手を振って応援すると、ヒカリも笑顔で手を振り返した。

 ヒカリは少し緊張した趣でコーネルと向かい合わせとなる。

 

 一方コーネルは緊張や動揺などもする様子もなく、舞台での立ち姿ですら優雅に見えてしまう。


「二人とも準備はいいかい? それでは一回戦ヒカリVSコーネル レディーファイッ」


 カーン!!


 開始のゴングが鳴らされたが、二人ともすぐには動かなかった。ヒカリもなんとなく紳士の騎士がすぐに襲ってくるとは思っていなかった。もちろん、ヒカリ特有の純粋な心の持ち主が成せる技である。


「ヒカリさん、よろしくお願いします」


 コーネルはヒカリに向かって一礼をする。


「わ、私の方こそよろしくお願いします」


 ヒカリも慌てて好印象のコーネルにお辞儀する。それにつられて大きな三つ編みもコーネルに敬意を表すようにピンとしていた。


「あれだけの参加者の中から勝ち残ったのだから、相当お強いのは分かります! 失礼のないよう全力でいかせていただきます!」


 コーネルは右手でゆっくりと腰の剣を抜き、顔の前に持ってくると両手に持ち直し構える。


「私も負けないんだから! フェムト」


 純白のローブを薄黄緑のオーラが包んでいく。三つ編みもオーラの影響でゆらゆらと揺れていた。


「では⋯⋯ 影波斬!!」


 前傾姿勢になったままコーネルは動かない。瞬き一つしなかった。


「ヒカリ! 後ろだ!!」


「えっ!?」


 カイトの叫びに反応したヒカリは思い切り飛び上がった。


――――ブォン


 先程までいたヒカリの位置に大きく空を切る音が聞こえた。


「あ、危なかったぁ」


 身体能力を上げたヒカリは加減なく飛び上がったため、闘技場全体が上空から見渡せるほどの位置にいた。

 

「ちょっと! チョットォ! 外野からの掛け声はダメだよ。次もやったら反則負けにしちゃうからね」


 不快な声の司会者の不快な呼びかけはヒカリにも聞こえるくらいのボリュームだった。


「兄ちゃん! さすがにそれはダメだよ〜」


 ネクロが呆れた声でカイトに注意した。


「つ⋯⋯つい⋯⋯でも声をかけなきゃヒカリが危なかったよ」


「もうカイトったら! 好きな人の心配はいいけど少しはヒカリの強さを信じてあげてよね! ちゃんと防御のフェムトと一緒に無詠唱でリヒールかけてたよ」


「ごめん⋯⋯。そうだよね! ヒカリもかなり強くなってるんだ。信じて見守るよ」


 シェイナにまで注意され、ヒカリが心配で周りが見えなくなっていたカイトの頭は冷えた。




△▼△▼△▼



「攻撃が早すぎて見えなかった⋯⋯。もう一段階スピード強化しないと⋯⋯きゃあっ!」


 フェムトを重ねがけしようとした瞬間、ヒカリは猛スピードで闘技場に叩きつけられた。

 ヒカリ程の小柄な女の子であればもはや致命傷である。


 消して軽くはない身体がバウンドして、ヒカリはくるっと宙で一回転してまるで何事もなかったかの様に着地した。


「お見事です! 一撃で倒せるほどの威力は込めたのですが」


「びっくりしちゃった。コーネルさんの攻撃凄く早くて強いのね」


 先程ヒカリを叩き落とした場所から降りてきてコーネルは余裕の笑みでヒカリの事を称賛した。


「いえいえ、ヒカリさんも流石です! 是非強化魔法かけて下さい! 全力で戦いましょう」


「ありがとう! でもこれで私が勝っても恨まないでね」


「可愛い顔をして随分強気ですね! ええ、文句など言いませんとも」




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