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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第二章 武闘会
41/56

決勝トーナメント

 カーン、カーン、カーン、カーン


 大きなゴングの様な音が会場を包む。やたらエコーがかかっているのもおそらく会場のせいだろう。


「これにて予選通過者が全員決まりました! 君たちおめでとう。 半分くらいは生き絶えたのかな? まあこのくらいで死ぬ様じゃ船に乗ったところで全滅必須だからね。良かった、良かった」


 会場には不快な司会者の声がこだまする。観客の人の中には時折り首を振りながら蹲る様な様子も見えた。


「これからお楽しみの決勝戦が始まるよ! その前に脱落者の方達はいつまでも邪魔だし美しくないので消えて下さいね」


――――――!?!?!?


 司会者の声と共にブロックの『闇』は全てなくなり、場外負けになった者や無惨に殺された人達がふわふわと宙に浮いた。


「な、なんだ!?」


「だって、敗者が生き残るなんてつまらない。あーなんてつまらない人生なんだ。君たち負けてどこに帰るの? また次頑張ればいいやとか思ってなぁい? そんな甘いこと考えてるから負けるんだよね」


 司会者の声がうるさく響くなか、意識のある敗北者達は手足をジタバタしてもがいている。


「んー⋯⋯。醜いから死んで」


 


 ――――パァン――――



 宙に浮いた人達が一斉に弾け飛んだ。まるでシャボン玉が割れた時の様に会場に血の跡も残さずキレイに消えた。


「そんなことしなくてもいいじゃない! どうして? アージェルイス王国の武闘会はこんなんじゃなかったわ」


 三つ編みの女の子は叫んだ。周りの観客の響めきに掻き消されていて全く届いていない。三つ編みをふるふるとさせて女の子は悲しんでいた。


 広い会場に残されたのは勝ち残った8人のみ。カイト達のパーティーは全員無事に突破したようだ。シェイナが一人だけ涙目になっていたのが気になったが、今はそれどころではない。


 カイト達は全員の安否が確認されるとひとまず安心し、カイトの元に駆け寄ってきた。


「この武闘会はこんなに酷い大会なのか!? 毎回こんなに死人が出るなんて⋯⋯」


「違うの! 確かに毎回内容は違うけれど、負けた人達の命を奪うような事は無かったわ」


 ヒカリは大きく首を左右に振って泣きそうな顔でカイトに訴えかけた。

 ネクロは相変わらず飄々としていて、まあ弱い奴が悪いんじゃない? と言わんばかりの顔をしている。


「じゃあ一体これは⋯⋯」


 シェイナも不安そうな顔で呟いた。この大会何かがおかしいと誰もが違和感を唱えていた。

 観客も麻痺しているのか、先程不安そうな顔をしていた様な人もおらず不思議と取り乱したり逃げ出したりする人もいなかった。


「さあ、スッキリしたところで決勝戦に行こうか! 8人の勇者たち改めておめでとう! 君たちはもう導きの船に乗ることが決まった。この勇気ある者に大きな拍手を!!」


「「わあぁーーー!!」」


 観客達は闘技場に残された8人に盛大な拍手と歓声を送った。

 

「とにかく今はこの大会のルールに従うしかない。お客さんがいる中で下手な動きはできない」


「兄ちゃんカッコいい! 何か前より頼りがいがあるねぇ」


 戦闘狂なネクロはご機嫌だった。今までエリーナの元でずっと二人で過ごしていて、多くの人を相手に戦うこともあまりなかった。

 そしてエリーナの元で成長していくカイト達を見て更に自分の強さを確かめたいと思っていた。


「うん! カイトはカッコいいよね! みんなも無事で良かった。でもやっぱり他の人たちを消してしまうなんて許せない」


 ヒカリは三つ編みをわなわなとさせながら珍しく怒りを露わにしている。

 普段優しい人は怒ると怖いのは言うまでもないだろう。


 気づくとA〜Hまでのブロックが消えていた。代わりにその8ブロックを足したくらいの大きい会場が出来上がっていた。


「さあさあ、続きを始めよう! やっぱり8人といえばトーナメントがいいよね! 勝ったのが早い人順にいれていこう。だってさ、早く終われば早く休めるしなんかずるいじゃん」


 次々と調子の良い言葉が出てくる司会者からルールが決められていく。


 大きなホワイトボードの様なものに既にトーナメントの表が書かれていた。


1.ヒカリ

     ――――

2.コーネル



3.ネクロ

     ――――

4.カイト



5.グリム

     ――――

6.ブラッド



7.ユイ

     ――――

8.シェイナ



 以上のように自動的に対戦相手が割り当てられていった。

 

「あ、ついに兄ちゃんと戦う時がきたね! 存分に楽しませて貰うからね!」


「私の相手は⋯⋯と、あの小さい女の子かな?」


「人のこと言えないくらい姉ちゃんも小さいけどね」


 シェイナの相手は小さくて可愛いらしい青髪の女の子であった。小さいシェイナが小さい女の子と表現したことに小さいネクロが反応した。

 広い舞台に物理的にも小競り合いが繰り広げられていた。


 このトーナメントより物語は大きく動くことをまだ誰も知る由がなかった。




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