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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第二章 武闘会
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武闘会予選4

「アハハハハハハ!! 楽しいなぁ! どんどんいくよ?」


 Aブロックの方から無邪気な子供の声が聞こえてくる。同時に血生臭い香りと、悲鳴が入り混じっていた。

 

「くっ、何も見えない。てやぁ! おりゃあ」


 暗闇の中とにかく当たれと剣を振り回して空を切る者もいた。決して強者ばかりが参加しているわけではない。剣を持つこと自体数回の初心者も混じっている。

 そもそも彼らは何の為に導きの船に乗り、生命をかけて戦うのか。


 それは誰しも欲しがる経験があるだろう「富と名声」というものである。『闇』を晴らし無事に帰ってくることができれば国の英雄に違いない。

 そして、努力することを怠り己の立場を忘れ夢だけを追い求める惨めな者たちだ。

 もちろん人の夢と書いて「儚い」と読むのだ。


「ぐわぁぁぁあ」


 首から血飛沫を上げ、倒れ込む人がいる。そして暗闇の中生暖かい鉄の匂いに怯え戦意を失っている人もいる。

 まさに地獄絵図だ。ネクロは暗闇の中での戦術は得意としている。森とエリーナなんて聞けば簡単に吐くことのできる素敵セットで見えない中での戦闘は仕込まれている。


「あぁ、なんで両腕がないのだろうか。あのドラゴンめ⋯⋯」


 ネクロは暗闇の中小さな腕と小型なナイフでひたすら踊る。片腕しかなくても華麗に踊る。観客から見えなくても自分だけの舞台。このフィールドは全て僕だけのもの。


「孤独な舞踏詩」


 そう小さく呟くとネクロは更に速度を増した。相手の悲鳴すら置き去りに、血飛沫は華麗な飾りに、光を求めて孤独で小さな少年はひたすらに華麗に舞う。


「さよなら、そしてありがとう」


 一人でに暗闇の中お辞儀をする。誰も見ていない中で血の涙を流す。誰の犠牲も問わず。誰の為も思わず。ただ孤独を埋めるように――






ネクロ全員殺害によりAブロック通過――





△▽△▽△▽△▽△





 キィン、キィン、キィィィィイイン、


 激しい金属の擦れる火花は時折人の姿を映し出す。鎧で致命傷を避ける選手や鎖の様なジャラジャラした音も時折聞こえる。


 カイトは狭いフィールドに大勢と戦うという経験もなく苦戦していた。両手にはオーラソードを握っているが、ぼんやりと覇気が漏れ出すその姿は格好の的である。


「くっ、スキルを使う隙もない。かと言って闇雲に動いては体力を消費するだけだ」


「死ねえぇぇぇえええ」


 とにかくオーラソードは余り得策ではない。エリーナの修行を受けていれば多少の気配を感じる事はできる。ただ、標的が多すぎて集中できる様子ではない。

 数十人が暗い中で戦闘すれば正常な判断をする方が難しい。


 勢いよく振りかぶってきた剣をオーラソードでいなし、素早く蹴りを放つ。大勢が崩れたところにもう片方の手に持っていたオーラソードを投げ、剣ごと場外へと吹っ飛ばした。

 

 静かに背後を狙っていた、シーフの様な敵もオーラソードの柄の部分で溝落ちにと叩きこむ。


「ぐふっ、かはぁ」


 その場で気絶してしまいカイトは追い討ちをかけなかったが、気づいた他の参加者は場外へと放り投げた。

 

「甘ったれてんじゃねぇよ! 殺すか場外にやらねぇと何が起こるかわからねぇ」


 顔も見えないが、野太い声でやたらと叫んでいる。しかしカイトにはそんな声も耳に入ってはいなかった。

 

「ならばとっとと死ね!」


 カイトの持っていた僅かに光っていた剣が周りの『闇』を取り込み増幅していた。そして禍々しい姿に変貌を遂げ、その存在感で周りの参加者は動けなくなった。

 

「お前らなど一振りで十分だ」


 カイトはそう言うと左手の剣を軽く一振りした。誰に触れるわけでもなく、当たる気配もないが一瞬時が止まったかと思うほどの凍った沈黙が辺りを覆う。

 その感情を脳が理解しようとする瞬間に全員が何か見えない衝撃に撃ち抜かれて、声を発することすら出来ずに倒れた。


 それと同時にカイトのブロックの『闇』がかき消された。


「あ、あれ? 全員倒れてる⋯⋯」





カイトFブロック通過――







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