武闘会予選3
急にカイト達の辺りが真っ暗になり、何も見えなくなる。
「うおぉぉぉおー!」
「わあぁぁあ」
観客は『闇』に包まれた8つのブロックに大盛り上がり。しかし、小さなドームの様に暗く包まれていては中での戦いは見えない。
各ブロック戦っている様子はあり、所々雄叫びの様な声や悲鳴など混戦が繰り広げられていた。観客からは暗闇の中から時折吹き飛ばされてくる参加者を見て盛り上がっていた。
その中で一番最初に明らかな動きがあったのは「F」ブロックだった。
「神よ我らに光の希望を灯せ」
小さな三つ編みの女の子が詠唱をするとパァッと『闇』が晴れて「F」ブロックだけ全容がハッキリと見える様になった。
「凄いぞ! あそこだけ『闇』を消しやがった」
観客は一斉に「F」ブロックに注目した。その他のブロックはまだ暗いままであり、観客としては面白みがないからだろう。
「やった! 上手くできた。さっきのスライムちゃんでの反省を活かせたわ」
ヒカリは殺伐とした場とは裏腹に上手に『闇』を晴らせたことに喜んでいたが
「きゃあっ!」
いきなりヒカリは小さな身体ごと吹き飛ばされた。両手に斧を持った大男がその斧を振り切っている姿が見えた。
「ちっ。殺すつもりで斬りつけたのに意外とタフだな⋯⋯がはっ」
そう言ったのも束の間、その大男はその場に斧を落とし場外まで吹き飛ばされた。
「いきなり女の子を斬りつけるとは酷い男ですね! あと周りの男共も邪魔です! ハッ」
別の男が大男を軽々と吹き飛ばした。道着を着て武器も持たず正々堂々という言葉が似合うハゲ頭の男だ。しかし顔立ちはハンサムだ。
そして更に気合いを入れるとそれだけで数十人と場外へ吹き飛ばしてしまった。
あっと言う間に「F」ブロックには五人しか残っていない。
周りのブロックも一斉に数十人近くがあっという間に場外に出てきた者もいて、おおよそ強い者達が残っている様子だ。
「あ、ありがとうございます!」
武闘会には似つかないその仕草。おそらく歴代の猛者達を見ても会場で敵に向かってありがとう。と笑顔でお辞儀をする姿はこの天然な三つ編みの女の子ぐらいだろう。
「ちょっと待っていてください! 僕が周りの人も片付けますから」
キラキラ輝かせた瞳でヒカリにウィンクすると消えたと錯覚するくらいの猛スピードで他の参加者へと向かっていった。
そして二人の男もなす術もなく場外へと吹き飛ばされた。
「なんだお前。女好きのナルシストか?寒気がするぜ」
ハゲ頭の武道家は残りの一人も一撃で仕留める勢いで殴りかかったがそれを軽々しく大剣の腹で受け止めた。
「くっ⋯⋯。流石に強いか」
くるっと一回転回りハゲ頭の武闘家は距離を取る。大剣の男も剣を振り改めて構え直す。
「あの姉ちゃんは確かに可愛いな。というか僅かではあるがあの『闇』を晴らす力は化け物に違いないだろうなぁ」
大剣の男は全身を鎧で纏い、見るからに幾つもの戦場を超えてきた貫禄のようなものがあった。
「うるさい! これは運命だ。今日この日この女の子に会う為に産まれたんだ」
「え、えっと⋯⋯あの⋯⋯」
ヒカリが状況に置いてけぼりにいる中、ハゲ頭の武闘家は一人で燃え上がっている。
「くらえ! 掌底⋯⋯ぐわあぁぁあ」
技を繰り出そうと構えた瞬間に大剣の男は消え、ハゲ頭の男を吹き飛ばしていた。
「峰打ちだ。死にはしないだろう」
大剣を背中の鞘に収め小さく呟いた。残るはヒカリと大剣の男の二人だけになってしまった。
「剣士さん相当強いんですね! あの武闘家の方もかなりの強さだったのに⋯⋯」
「いやいや、謙遜するなよお嬢さん。俺じゃアンタには天地がひっくり返っても勝てやしない」
兜の下から表情を伺うことは出来ないが、戦意を喪失していることは伝わってくる。
「一緒に協力して世界を平和にしましょう!」
「笑わせるなよ。この戦いでは一人しか残れない。ましてやそんな甘っちょろい考えでは『闇』に太刀打ちできない」
「そ、そんなこと⋯⋯」
「ただ、実力だけは確かだ。是非とも『闇』を晴らして平和な世の中にしてくれよな。期待してる」
大剣の剣士はくるっとヒカリに背を向け、手をひらひらと振りながら、ブロックの場外へと出た。
「おぉっと! 早くもFブロックが決まったぁぁぁあ。可愛らしい三つ編みのお嬢さんが通過だ。 死人が出なくて退屈だったけど、他のブロックではもっと死闘を繰り広げてくれよな」
司会がヒカリの勝利宣言をすると会場はわぁっと湧き上がり、何がなんだか分からないままヒカリは決勝ブロックへと残った。
ヒカリFブロック通過――
遅くなってすいません。
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