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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第二章 武闘会
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武闘会予選2

 カイト達が抽選を受けた後は意外とすぐに締め切られた。予選開始もあと一時間後には始まるらしい。

 全員が導きの船に乗るには意地でも勝ち残らなければならない。そして、今回の武闘会でどれだけ船に乗れるのかも明かされていない。


 ヒカリの話によれば決勝戦まで残った者は基本的に乗船の権利を得るとの事。となれば全員が予選を勝ち残り本戦に出場すればいいだけの話。今回全員が違うブロックになったという事もあり、運はカイト達に向いていた。


 コロシアムの受付を終えて中に入ると広いエントランスがあり選手用の控え室や、練習場には人型のロボットみたいなものがあり壊しても自動的に修復する為スキルを打ち込んでいる者が多数見られた。

 武器も持ち込み可能な為、剣、斧、弓、槍、双剣、ブーメラン等多種多様の選手がいる。その中には武器を持たず素手の選手もいた。


「みんな凄く強そうだなぁ⋯⋯」


「まったく! 相変わらず弱気だよね? 絶対カイトの方が強いに決まってるのにさぁ」


「いや、そんな事ないよ。『闇』に対抗出来る様な人が集まるんだから僕なんかより強い人もいっぱいいるはずだよ」


「そうね。この大会はクライヴが出てるのを何度か見たことあるけど強い人ばかりよ?」


「クライヴも出場してたの!?」


「うん! クライヴはこの大会で優勝して導きの船に乗ったの。それから騎士団長まで上り詰めたのよ」


 その話しを聞いてカイトは目線を落とし俯いた。落ち込んだわけではないが、様々な感情と思考が混ざり上手くまとまらない。

 

「そうかぁ⋯⋯でも僕達は負ける訳にはいかない! 必ずみんなで導きの船に乗ろう」


 モヤモヤしている感情を吹き飛ばす為にも、カイトは仲間や自らを鼓舞した。

 

「うん! 全員で頑張りましょう。あれだけ辛い修行をしたんだからきっと大丈夫よ」


「お師匠様が送り出してくれたんだから自信持っていいと思うよー。それじゃなきゃきっとここで全滅しちゃうからね」


 ネクロはさらっと恐ろしいことを言うが、逆に今のパーティーにとっては自信になる。ドSを超えた極Sのエリーナの修行は思い出すと吐いてしまうくらい壮絶なものだった。


 ジョワーーーーン、ジョワーーーーン、ジョワーーーーン、


 会場全体にドラの音が鳴り響く。


「あ、あ、マイクOK? えーっとそれではこれより第23回アージェルイスの武闘大会の予選を行いまーす。それに伴い簡単なルール説明をするからちゃーんと聞いてくれよ?」


 会場の至る所から司会者らしき人物の声が聞こえる。どこか調子の良い声ではあるが、こうも重なって聞こえると不快な音でしかない。


「今から各ブロック同時に試合を始める。君達の運命を変えるであろうその扉を開けてやる! カモン! 死に急ぐ挑戦者達よ!」


 エントランスの先には見上げるほどの巨大な鉄の扉があり、司会者の声に釣られて続々と集まってくる。


 そして歴史的に古く、もうその役目を終えたいと言わんばかりに勿体ぶってギイィィィと大きな音を立てて鉄の扉が開く。

 その先には観客を合わせて数万人は収容できるであろう闘技場が広がっていた。


 この大会はお祭り感覚でもあり、全世界から集まった猛者達と『闇』から救う未来の勇者を見ようと大勢の観客が見ていた。

 扉を開けた瞬間には歓声と歓喜の声、叫び声、悲鳴のようなものが入り混じって闘技場全体が地鳴りの様になっていた。


「さて、全員集まったかなぁ? まだ来てない人は手を挙げてね! あ、いなかったら挙げられないよね! ゴメンゴメン」


 調子の良い声は広い会場に響いていた。闘技場の中には10m四方のブロックが8つ用意されていた。そしてブロックの中央には大きく『A〜H』の文字が刻まれていた。


「みんなそれぞれ抽選を受けたブロックに移動してくれ!」


 各々の強豪達は自分のブロックへと歩みを進める。各ブロック五十人といったところだろうか、10m四方のブロックが小さく感じてしまう。


「さぁ、移動が終わったならこれからルールを説明しよう! 一回しか言わないからよーく聞いてくれ」


 一向に声だけで姿を見せない司会者は意気揚々とルールの説明に入る。

 周りの者たちもどこに視点を合わせていいのやら重なる司会者の声に耳を傾けていた。


「ルールは簡単! どんな手を使ってでもいいから生き残れ! ただし、リングから落ちたらもちろん負け。相手を殺しても構わない。船に乗りたがる君たちみたいな自殺志願者なら全く問題ないだろう。アハハハハハハ!」


 不快な司会者から不快な発言。確かに『闇』に対抗するにはフェアな戦いをしている場合ではない。かと言って狂人の様な振る舞いは到底カイト達には納得出来なかった。


「なるべく殺したくはない。でも負けるわけにはいかない」


 カイトは額に汗をかいていた。甘ったれた考えなのは分かっているが、その為に辛い修行に打ち込んだ。

 乾いた空気と殺伐とした雰囲気がカイトの心を冷たく優しく撫で回してくる。

 

 何か嫌な予感を感じるほかなかったからだ。他の選手は殺し合い発言に臆すことなく、そんなの当たり前だろと言わんばかりにやる気十分だ。

 そして不快な声は不快な開始の合図を宣言した――






「さぁ! 殺し合え!」






 各ブロックが『闇』に包まれた。


 


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