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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
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グランドマスターVS武闘家&ベーシックヒーラー

 カイトの修行が完了し、大幅なパワーアップを遂げた。残りはシェイナとヒカリペアである。


「さあ、始めましょうか」


「カイトに負けないように頑張らなきゃ!」


 二人の表情は明るく、カイトの成長を目の当たりにしてモチベーションが上がらない訳もなく気合いが入る。


「よっしゃ! じゃあ全力でぶつかりたいから速度と力に割り振ってフェムトをかけてくれ!」


「分かったわ! フェムト!」


 フェムトにより、シェイナの力と素早さにブーストがかかる。薄く発光しながら、やる気満々で両拳を合わせたと思ったら、土煙だけを残して既に姿は消えていた。


「え!? シェイナの姿が見えない!」


 先程スピードを活かして戦ったカイトですら、見失う程のスピードで翻弄する。


「⋯⋯上ね」


 その場で唯一冷静なエリーナは、上を向きそう呟く。エリーナは木漏れ日に照らされたシェイナを捉えていた。


「掌底波!!」


 これまで何度もお世話になった基本中の基本技、掌底波を空中から放つ。以前は掌より少し大きいくらいの衝撃波が、今ではエリーナを飲み込むくらいの大きさで驚異となり襲いかかる。


「流石に返すのは辛いわね⋯⋯」


 避けるのは無理と判断し、サイドステップで避ける。エリーナがいた場所は、激しい衝撃と爆風による土埃が立ち込めていた。

 

 そしてエリーナの側腹に鋭い打撃が打ち込まれた。骨を砕くような鈍い音を立て、終始余裕の表情だったエリーナからは笑みが消えていた。

 掌底波を囮に使い、避けると確信していたシェイナは掌底波を放つと同時に超スピードでエリーナの後ろを取る。余裕のエリーナに渾身の蹴りを叩き込んだ。


「ふふ⋯⋯。少しだけ油断したわ。いいでしょう。貴方も痛めつけてあげるわ」


 蹴りをまともに受け、屈んでいたエリーナは腹部に手を当てると青白い光とともにスッと立ち上がると、いつもの妖艶さを含む余裕の笑みに戻っていた。


「さっすがグランドマスター! あらゆる格闘技、武器だけじゃなく回復もできるのかよ」


「私ぐらい長生きしていると、大抵のことは出来てしまうのよ。さぁ、無駄話はよろしくて?」


「ぐふっ⋯⋯!!」


 エリーナとの距離は十分にあったはずだ。先程まで話していたとはいえ、シェイナは警戒を怠らなかった。

 しかし、その予想外のスピードでシェイナの鳩尾を肘打ちで貫いていた。


 シェイナは堪らず腹部を抑えて前屈みになる。そこへエリーナの後ろ回し蹴りが炸裂し吹き飛ばされる。

 シェイナは何度か地面をバウンドし、激しい土煙と共になす術もなく倒れた。


「き、効くぅ⋯⋯」


「あら、貴方以外とタフなのね」


「こんなこともあろうかと、予めリ・ヒールをかけて貰ってたからな!」


「それはまた珍しい魔法ね⋯⋯。今回は収穫が多いかしら。あのヒーラーちゃんも侮れないわね」


 ヒカリは先の修行で幾つか魔法を習得していた。その内の一つ「リ・ヒール」とはダメージを受けると自動的に回復する闇属性魔法である。

 リジェネと違う点は継続的に回復する訳ではなく、攻撃を喰らってから発動する為強力な回復魔法。その外道さ故に闇属性と言っても過言ではない。

 

「えへへ! 私だってちゃんと強くなってるんだから。カイトやシェイナちゃんに負けてられないもん」


 何やら得意顔ならぬ得意三つ編みと言わんばかりに、腰から先にかけた三つ編みがヒョコヒョコと跳ね上がっていた。感情豊かな三つ編みである。

 本体のヒカリはそれとも知らず、両足を広げ腰に手を当て、力強くも可愛いらしいブイサインを送る。


「それをさっき僕にかけてくれても⋯⋯」


「はっ! そ、そうよね。つい私が入っちゃいけないものだと思って⋯⋯。今はシェイナちゃんと私の番だから、えっと⋯⋯ごめんね」


 散々痛めつけられたカイトだったが、その魔法を自分にもかけて欲しかったと拗ねていた。

 ヒカリはいつもの天然を発揮するも最後はカイトに申し訳なくなったのか、シュンとなっていた。


「ぼ、僕の方こそごめん。冗談のつもりで」


「いいの。私もっと強くなるんだから。みんなを守れるくらい」


 それを女の子に言わせる事と、自分の不甲斐なさを棚に上げたカイトは少し恥ずかしくなった。

 そんな二人の会話をよそにシェイナは目を閉じて気を溜めはじめる。


「はあぁぁぁあ!!」


「あら、水属性の凄いパワーを感じるわね。これも修行の成果かしら」


 シェイナの気で多くの大木が揺れていた。フェムトとは違った覇気を含んだ青白い気を纏い、爆発しそうなくらいに肥大化した覇気は碧い龍へと形を変えエリーナに襲いかかる。


「水龍翔蓮波ぁーーーー!」


 巨大な龍は大きな口を開け、シェイナの元を離れる。水龍は全身が水と呼ぶには悍しいほどの気と、触れるとそのまま飲み込まれてしまいそうなほど恐ろしい気を持ち合わせていた。


 その口からは水滴を垂らし、獲物を捕えようとするスピードはまるで激流のようである。

 しかし、エリーナは余裕の姿勢を崩さない。まともに喰らえば跡形もなく吹き飛ばされてしまうだろう威力にも微動だにしない。


「今だ! ヒカリ!」


「準備は万端よ! ホーリージャッジメント」


 ヒカリが三つ編みと共にフワッと宙に浮くと、光速の輪が出現しエリーナの四肢を拘束する。身動きの取れないエリーナにもの凄い爆音と共に水龍翔蓮波が炸裂する。


 そして、その衝撃が止まないうちに無数の光の矢が爆発の中心へと放たれていく。

 まるで特撮映画のシーンのように次々の爆発と衝撃が巻き起こり、森中を包み込むほどの爆煙となっていた。


「す⋯⋯凄い⋯⋯」


 以前ゴーレムに苦戦していたとは思えないほど、強くなっている二人にカイトは言葉を失っていた。


「はぁ、はぁ⋯⋯どうだ? 流石に耐えきれないんじゃないかな」


「お姉ちゃん達、山に登った時より強くなってるーー!」


 現在二人の最強技を同時に叩き込んだ。手応えは十分であり、あれほど二人に興味無かったネクロも感心するほどの強さであった。

 

 エリーナの立っていた場所は大きく抉ぐられていて、小屋の前に生えていた草や苔なども消滅し、クレーターの様になっていた。


 そして、土煙が掃けてエリーナが見えるかと思われた瞬間――激しい閃光がクレーターから溢れ出した。


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