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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
28/56

合流

 ザアアァァアという音と、冷たい感触でハッと目が覚める。先程までの砂の音ではなく、滝に打たれている音だった。


 手足の拘束は解け、身体にも特に異常は無いみたいだ。


(助かっ⋯⋯た⋯⋯?)


 先程までの死闘が夢であったかの様に、綺麗な身体を見てホッとする。

 エリーナの魔法のせいもあってか、水の一粒一粒を魂が拒絶し、害虫にまで見えていた水流が、水の無数の粒子が優しくシェイナの周りを囲んでいる。


「私が恐がってただけなのね。ホントはこんなにも優しくて、温かい存在なのに」


 滝から一歩踏み出し、池の水を救い上げるとピチャッ、ピチャッとまるで踊っているかの様に手の中で動く。


「それにしても、大人の私が言っていた魔女って⋯⋯」


 大人シェイナを、あの何もない真っ白な空間に閉じ込める程の存在。文献で見たことのある魔女と言えば『レイナ』しか思いつかない。

 しかし、文献になる程のグランドマスターであり、百年以上前の記事である事からこの世に存在しているとは考えにくい。


「シェイナー!!」

「シェイナちゃーん!」


 あまり得意ではない考えごとをしているうちに、森の中から、カイト達が急いでこちらに走ってくるのが見えた。


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。良かった! 試練は無事終わったの?」


「うん! バッチリ強くなったぜ!」


 グッとサムズアップするシェイナの姿に、二人は気が抜けてしまった。


「あらぁ。貴方も試練に耐えたのね。皆期待外れだわ」


 エリーナはいつもの様に本気か、冗談か良く分からない事を言っていたが、微かに残念そうな顔をしていた。少なからず、とっておきの試練を全員が突破してしまった事で、興が冷めた感覚だった。


「そういえば⋯⋯大人の私が魔女にぶち込まれたとか言ってたけど、あれはどういう意味なんだ?」


「大人のシェイナちゃん!? 凄く見てみたい! ねぇねぇ! 何処にいるの?」


 ヒカリが話の腰を思い切りへし折りながら、目をキラキラさせて大人シェイナへの興味を示す。三つ編みも見たい、見たい!と跳ねるヒカリに合わせて上下に揺れ動く。


「いや、もう倒しちゃったよ?」


「え? 倒した⋯⋯?」


 キョトンとした顔でヒカリが答える。


「だって倒さなければ、私が死んでたからね!」


「そっかぁ⋯⋯。見れなくてちょっぴり残念だけど、シェイナちゃんが無事なら良かった!」


「ヒカリってちょいちょい天然だよなぁ。あと数年すれば大人の私が見れますので少々お待ちを。というか、大人になっても胸が大きくならないとか反則だろぉ!」


 シェイナは成長した姿に、身長はあれど胸はあまり成長していないことにガッカリしていた。ヒカリの大きくて柔らかそうな胸を見ながらため息を吐いていた。


「ちょ⋯⋯ちょっとシェイナちゃん! お胸が大きくても肩が凝ったり、かわいいお洋服が着れなかったり色々大変なのよ!」


 もう! と腰に手を当てて怒りながらも、ぷるんと胸が揺れていた。


(フォローになってないし、そういう所が天然なんだよなぁ⋯⋯)


「まあまあ、二人とも⋯⋯。ちなみに僕も試練の洞窟の中で、レイナとかいう魔女に会ったんだ。エリーナさん、僕にもどういう訳か教えてください」


 試練の中でシェイナとカイトの二人が、魔女の事を知った。これがとても偶然には思えないカイトはエリーナに質問する。


「魔女⋯⋯ねぇ。私が用意した試練にそんな内容は含まれていないわ。もしあるとすれば、強大な魔力で貴方達の精神世界に乗り込んでいった可能性があるかしら」


「僕達の⋯⋯精神世界」


「そうよ。私は貴方達の魂に問いかけ、苦手な属性を克服する為、その人によっての試練を用意しただけ。それに⋯⋯」


「それに?」


「魔女のレイナは百年以上も前の人物よ? 普通の人間なら、もう生きてはいないわ。私達新参者のグランドマスターならば、まだ世界各地にいるけれども」 


「じゃあ一体どうやって⋯⋯」


「きっと『闇』の影響があるのかもしれないわ。どうやって干渉したのかは正直分からないのよ」


「やっぱりあの『闇』を何とかしないといけないのね。とにかくカイトが無事戻ってこれて良かった」


 改めて、魔女との嬉しくない邂逅によって生き残れたことにヒカリは安心した。


「そういえば、ヒカリの試練はどうだったの?」


「えっ!? 私? あ、あの⋯⋯あはは。私は全然平気! 大丈夫だよ。ほんと、凄く元気よ!」


 ヒカリに試練の内容を問い質すと、顔を真っ赤にして、分かりやすく急にあたふたし始める。

 前に出した両手と三つ編みを左右に振り、本当になんでもない! 無事だったんだから良かったじゃない。と捲し立てる様に話を進めた。


「う、うん。じゃあそこは後で時間がある時にでも」


「ありがとう。カイトは相変わらず優しいね! 後でお話ししましょ」


 なんか上手く誤魔化された様な気もするが、今は全員が無事という事実の方が大切。

 カイト達は『闇』についてまだ何も分からないが、きっと世界が『闇』に覆われてしまったら恐ろしいことになるということは感じていた。


「じゃあ無事に全員帰還したということで、次の修行へと参りましょうか。次は実戦よ」


「わーい。お師匠様の修行! 僕もやりたーい」


 ネクロはどうやらカイト達が修行している間は退屈だったようだ。実戦ではネクロも参したいと駄々をこねている。


「そうねぇ。ネクロにも後で稽古つけてあげるわ! 片腕でも戦えるように」


「やったー!」


「じゃあとりあえず小屋に戻りましょう。そこで実戦の稽古を始めるわ」


 また森をかき分けて、小屋へと戻る。行きの緊張に比べて少しは楽になったはずなのだが、まだまだエリーナの厳しい修行は続く⋯⋯


 

 

 

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