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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
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修行の始まり

 夜が明けて修行1日目が始まる。外に出ると森独特の自然な香りがする。木々の間から木漏れ日が差し込み、爽やかな朝だ。


「さぁ、修行を始めましょうか。一番大変な属性克服から始めるわ。死にたくなっても死ねないから辞めるなら今のうちよ?」


「お師匠様は本当に残酷だから気をつけてねー」


 ネクロが小屋の前にある椅子でヘラヘラと笑っている。


「大丈夫よ! 私達は負けないわ」


 ヒカリは朝から元気に大きな三つ編みを揺らし、グッと拳を握る。豊満な胸も上下に揺れていた。


「心強いわ、じゃあまずは武闘家の貴方からいこうかしら。多分一番時間がかかると思うわ」


 そう言ってエリーナはまずシェイナを鍛えるため、全員で森の奥に進んで行くと滝が見えてきた。大きさはそれほど大きくもなく、修行僧が滝に打たれると表現するには丁度いい程である。


 大丈夫と言い聞かせつつもシェイナは内心ドキドキしていた。修行などした事もないのだから無理はない。


「じゃあ早速服を脱ぎなさい」


「え!? 裸になるの? 流石に⋯⋯」


 シェイナが顔を赤くして、服を脱ぐことを躊躇う。ネクロはまだしもカイトもいるのだから無理はない。


「冗談よ。冗談。ちゃんと装束を用意してあるからヒーラーちゃんに隠してもらいながら着替えなさい。坊や達が見ようと振り返った瞬間に首を切り落とすから安心していいわ」


「はは⋯⋯」


 カイトは引きつった笑顔でエリーナを見る。もちろんカイトは、シェイナの着替えを見るつもりなど毛頭ないが、エリーナの実力からしてカイトの首を落とすことなど造作もない。

 

「そうよ! カイトが見たら私だって怒るわよ。じゃあ着替えに行きましょう」


 ヒカリもカイトに釘を刺す。シェイナを連れて歩いて行く後姿に見える三つ編みも、覗いたら許さないんだからと言わんばかりに揺れている。少し離れた茂みでシェイナは着替え始める。


「わぁ! シェイナちゃんのお胸キレイ! お肌もツルツルー」


「ちょ、ちょっとヒカリやめてよー。ヒカリの方が胸おっきいじゃん!」


 二人が女の子独特のトークでキャッキャしている。カイトは本能的に振り向きたかったが、エリーナが優しい笑顔でこっちを見ているのが妙に恐ろしい。


 煩悩を振り払うようにカイトはブンブンと首を振る。カイトが心の中で葛藤しているうちに、シェイナは装束へと着替えていた。

 オレンジのショートヘアーには似つかないが、白い肌と少し膨らんだ胸が装束一枚によって包まれている。

 

「兄ちゃん残念だったねー」


「え? カイトはシェイナちゃんの裸見ようとしたの?」


「ち、違うよ! 振り向いたらエリーナさんに殺されてたし」


「ふーん⋯⋯まぁいいけど」


 ヒカリがプイッとそっぽを向いてしまった。嫉妬のせいか珍しくヒカリが怒っている。ヒカリにつられて三つ編みもプイッとそっぽを向いてしまった。


「あら、裸がみたいならお姉さんの裸を見せてあげてもいいわよ」


 エリーナが色艶やかに服に手を当て、胸をチラつかせるような仕草をする


「エリーナさん!!」


 そっぽを向いていたヒカリが慌ててエリーナを止めようとする。


「冗談よ。冗談」


「エリーナさんの冗談って本気かどうか良く分からない時あるよな」


 白装束のシェイナがヒカリにコソコソ呟く。  


「それで、修行っていうのはこの滝に打たれればいいのか?」


「そうよ。 じゃあそこの滝の下に立ちなさい」


 シェイナほどの小ぶりな女性には少々キツイ勢いの滝ではあるが、耐えられない程ではなく、目の前はその水達が行き場を失い池のようになっていた。


「ひゃぅ! 冷たい」


 シェイナは池に足を入れると予想以上に冷たく、膝下まで水に浸かった。そしてゆっくりと滝に近づき、水しぶきを浴びながらも滝の下へと入り込む。


「貴方の試練は日が暮れるまでその滝に打たれ続けることよ」


「なぁんだ! それなら楽勝じゃん!」


 元気よく答えるオレンジのショートヘアに容赦なく水の粒子が次々へとぶつかっては行く先を失い池へと飛び込む。 


「あらそう? ではまず逃げられないように手と足を魔法で固定するわね」


 エリーナが魔法を唱えるとシェイナの足は地面から離れ、腕と足に紫色の輪っかが現れ、十字架に貼り付けられたかのように固定された。


「え? 何? 動けない⋯⋯」


「全ての自然の理より外れ、血に染まる者よ。汝に試練を与えられん」


 エリーナが詠唱するが、何も変化は感じられなかった。ただ一人シェイナを除いては⋯⋯



「いやあぁぁぁぁぁぁあ! 助けて! いや! 来ないで!」



「シェイナ!?」


 いきなり、悲鳴を上げ泣きじゃくるシェイナ。それを見たカイト達には何が起きているのか理解出来なかった。

 そして、カイトがシェイナの苦しむ姿に見かねて飛び出そうとーー。


 しかし、池には見えない結界が張られて近づくことができない。


「あら、修行の邪魔はできないわよ」


「シェイナに何をしたんだ!?」


「荒療治よ。昨日も話したように火属性が水を嫌いなのは魂に刻まれたものなのよ。だからそれを引き剥がしているだけよ。そしてあの子は今、水の粒子全てが、まるで害虫のような不快なモノに感じているはずだわ」


「なっ⋯⋯」


 ヒカリ達は唖然とする。


「今更遅いわよ? 強くなるには並大抵のことではないのよ。貴方達も自分の心配をすることね」


「やめてえぇぇえ! お願い! 来ないで! 殺してえぇぇぇえ! あ゛あ゛あ゛ごろじでぇぇぇえ⋯⋯」


 シェイナの目がくるんと上を向き失神する。しかし、無数の水の粒子が動けないシェイナの身体を蝕み、それすらも許してくれない。

 その水はシェイナの魂をキレイに削ぎ落とす様に、丁寧に、丁寧に触れていく。

 精神も一緒に削ぎ落とすように丁寧に、丁寧に丁寧に⋯⋯





   

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