表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
15/56

ネクロの秘密

 適性レベル50という話しはエリーナの脅しではなく、最低でも50は必要ということが良く分かった。ワイバーン二匹は二人の連携によって対処できたものの、何度も襲われたらあっという間にMPは尽きる。


 何があっても対処できるようにシェイナを先頭として間にヒカリ、後ろにネクロというような陣形を取っている。

 ネクロが後衛として役に立つかは疑問だが先程の話しから見殺しにするようなことはないだろうとの判断をした。

 

「そもそも早朝で『闇』もないのになんでこんな強力な魔物がいるんだ」


「そりゃあ世界にはキケンな場所なんて幾らでも存在するさ。まだまだ謎に包まれている場所も多いからね」


「私もほとんどマイトの村で過ごしていたし、アージェルイスのお城に行くにもあまり危険ではなかったから⋯⋯」


 バダイモーゼの世界は草原や森は冒険者や商人などであればそれほど危険ではなく、スライムやゴブリンなどは野良犬的な扱いである。

 しかし、世界各地に点在するダンジョンや洞窟にまで結界をする必要もなくそういった場所は必然的に強い魔物が集まってしまう。


 途中で誰がどうやって置いたのか岩肌に無雑作にある宝箱などを開け、そこには高級薬草やマジックポーション改などさすが高レベルダンジョンと思えるようなアイテムが入手できた。


 しばらく進んでいくと、周りの岩が突然虎へと変化し襲ってきた。ロックタイガーと呼ばれこの山特有の魔物。堅そうな岩の様な毛皮を持ち獰猛な魔物である。


「うわっ! ビックリした」


 ロックタイガーはシェイナに向かって飛び掛かったが間一髪でかわした。恐らくフェムトがかかってなければ避けることはできない。速度を上げると同時に反応速度も上がり、相対的に相手の動きが通常より遅く見える。


 噛み殺す勢いで飛び掛かったロックタイガーは標的のシェイナにかわされ、そのままの勢いで地面に着地する。

 獲物を仕留められなかったロックタイガーは怒りを露わにした表情でその感情に任せたまま吠えた。



――――グルアァァァァア――――


 

 すると三人目掛けてどこからともなく出現した巨大な岩が猛スピードで襲いかかる。


「キャア!」「うわぁっ!」


 シェイナとヒカリは腕でガードするも正面から直撃して、防御面を上げているにも関わらず大ダメージを受けた。


「まさか⋯⋯! 魔法!?」 


 魔物が魔法を使ってくるとは思わなかった。そもそも魔法を使う敵など今までいなかったのだから無理はない。

 物理的強化をしたところで魔法対抗力がなければダメージを受けるのは当たり前である。


「ぐっ、かなり効いた⋯⋯」


「ヒーリング⋯⋯!!」


 ヒカリは広域魔法のヒーリングを唱え、体力を回復する。


「あははっ! やっぱり弱いって大変だね。魔物だって魔法を使うし、あの程度の魔法わけもなく跳ね返せるわけ。お姉ちゃん達お師匠様の修行受けた方がいいよ。耐えられないかもしれないけど」


 可愛らしげに思えたネクロが今は憎たらしく感じる。しかし、カイトを助けるためには何がなんでも山頂の花を入手して帰らなければならない。

 それに今ネクロに構っていれば間違いなく死ぬ。ヒカリはまた自分の無力さで何かを失うことなど耐えられなかった。


「ヒカリ! まだ強化魔法使えるか?」


「シェイナちゃん! 今度は私が戦うからあの魔物を翻弄してくれる?」


「戦えるのか!? ⋯⋯分かった! やってみる」


 シェイナは向上した素早さのままロックタイガーを相手にする。スピードはシェイナの方が少し上まわっているが、武闘家のシェイナでは相性が悪くロックタイガーが飛び込んでくるタイミングを見計らってギリギリで避ける。

 そこを狙って何度か殴っているが岩肌の体毛が邪魔をしてダメージが与えにくい。


 またあの岩を飛ばす魔法を使われたら厄介だが、ロックタイガーが吠えるのが合図なのか常に動き周り殴っていれば使ってくる事がない。

 シェイナはロックタイガーと距離を詰めて常に動き回る。


「じゃあ覚悟してね! 岩猫さん!」


 ヒカリの魔力が徐々に高まっていく。ロックタイガーはそれを感知してヒカリへと標的を変更し、対峙していたシェイナを抜き去っていく。


「させるか! はあっ!」


 ヒカリの方へと走るロックタイガーをシェイナが追いかけ、素早さが上がっている為サイドに回り込みシェイナの飛び蹴りが炸裂。


 その勢いは凄まじく、走っていた速度は直線のベクトルだった為、横の力が加わるだけで大きく逸れる。ましてやシェイナの飛び蹴りを喰らってロックタイガーは派手に吹っ飛ばされた。


 しかし、見た目の派手さとは裏腹にそこまでダメージは無いようだ。


「スキル:トラッキング! ホーリーレイン!!」


 溜まった魔力を解放する。ヒカリの身体が神々しい光に包まれ、フワッと宙に浮く。両手を広げた姿はまるで女神のような美しさであり、三つ編みもふわふわと魔力で揺らいでいる。

 そして両手を広げ無数の聖なる光がロックタイガー目掛けてほとばしる。


 命の危機を感じたロックタイガーは飛び蹴りを喰らって体勢を整えていたところだが、鋭い爪を立て一瞬にしてサイドステップをする。

 そこを通り過ぎた無数の光はロックタイガーを蒸発させようとする威力であった。

  

「逃げられないわよ! 岩猫さん!」


 間一髪避けたロックタイガーはすぐにまた地面に爪を立て、逃げようとしていたが無駄な努力に終わる。

 先程避けたはずの光は鋭角に曲がり、ロックタイガーを追尾した。聖なる光はロックタイガーを捕らえた。


 最初の光が当たるとその硬い岩から相当な質量と思われるロックタイガーを簡単に宙へと打ち上げた。そして逃げ場を失い次々と聖なる光がロックタイガーを撃ち抜いていく。

 


――――グオォォォオ――――



 最後の断末魔と共にロックタイガーは消滅した。



「やったぁ! ヒカリ凄いね! あんな攻撃魔法使えるの?」


「えへへ! この前の洞窟でレベルが上がって覚えたの。今日初めて使ったから上手くできるか不安だったけど良かった」


 ヒカリはホッとしたような表情で、強くなった実感も湧いたのが少し嬉しかった。三つ編みも嬉しそうにぴょこぴょこと動いている。


「お姉ちゃん見直したよ! いい技持ってるね。サポートしか出来ないと思ってたよ」


 ネクロもヒカリの技の威力を目の当たりにして少しだけ興味が湧いたようである。


「次からは僕も戦うよ。二人とも魔力も体力もキツくなってきたでしょ?」


「今更かよ! そうなる前に戦ってくれても良かったじゃんか! 散々苦戦してるところ見ていた癖に」


「まあいいじゃない。今の私達にはここは厳しいのは事実だわ⋯⋯。ネクロちゃんの力も貸してくれるならすごく嬉しい」


 どこか納得のいかないシェイナは道端にあった石ころをちぇっと言いながら蹴飛ばした。


「時間も限られているからね! お姉ちゃん達もあのお兄さんを助けたいんでしょ?」


「もちろんよ! 早くカイトを助けてあげなきゃ」


「じゃあいくよー! まだ山の半分も登ってないから早くしないと『闇』に飲み込まれちゃう! こんなところで『闇』が来たら手に負えないよぉ」


 今度はネクロが先頭に立ち、意気揚々とすすんでいく。少し歩くと、先程までのワイバーンが三匹ほど出現しネクロ目掛けて体当たりしてきたが全て一撃で右手を軽くなぎ払うだけで倒していった。


「つ、強すぎる⋯⋯一体レベルいくつなんだ⋯⋯?」


「ネクロちゃんすごーい! これなら山頂まですぐに着いちゃうね」


 シェイナが苦戦して倒した敵をまるでスライムが寄ってきたのを手で払うような勢いで倒していく。


「だから僕が強いんじゃなくてお姉ちゃん達が弱いんだってばぁ⋯⋯」


 ちょうど山の半分に差し掛かるところで休憩を取ることにした。とはいえ魔力が吸い取られていくので長居は禁物である。


「なぁネクロ! 強いのは分かったし、レベルも聞かないけど一体何の職業なんだ?」


「うーん⋯⋯まあレベルは聞かれたとしても答えられないけど、職業はシーフだよ! シーフ! 僕にピッタリでしょ」


 腰に手を当て小さい身体で威張って見せるがシーフといえばそこまで強い職業ではなく、寧ろ下から数えた方が弱い分類に入る。


「シーフ!? シーフってそんな強くなるのか? あり得ないだろ」


「まぁ⋯⋯お師匠様効果かな。お師匠様は僕なんか指一本触れられないくらい強いんだから!」


「エリーナさんって本当に強いのね。私達も頑張らないと」


 ヒカリは持ち前の明るさと前向きな気持ちで強くなることを決意する。

 ただしネクロは肝心な事を隠していた。ただのシーフではなく














()()()シーフ』だということを。

気になったらブックマークや評価いただけると嬉しいです(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ