小屋の主
1000pvありがとうございます!
頑張って描き続けます♫
一瞬闇に覆われたかと思えばタリスマンの光が儚く見えるほどの強烈な輝きがその場を包んだ。
「うわっ!! なんだ?」
「キャア!」
少しするとその輝きも消えていったが、まだ目が眩んでいる。あまりの眩しさにとっさに覆った腕を下ろして辺りを見ると先程まですぐ近くに迫っていた謎の人物がいなくなっていた。
「助かった⋯⋯のか?」
タリスマンの光は消えて無くなったかわりにフワフワと浮かぶ光の玉が現れた。おかげで辺りは先程より明るく視界が良くなっていた。
『闇』のせいで遮られていた風や、自然の香りなどが感じられた。そして光の玉は二人を導く様に動き出した。
「ついてこいってことか⋯⋯」
「大丈夫かなぁ。村からは違う方向みたいだけど⋯⋯」
二人は不安に思いながらも今この光の無くして無事に帰ることは不可能に近い。無視して村まで突っ切っていこうにも『闇』に一瞬にして飲み込まれてしまうだろう。
村まではあと少し南に進めば着くであろう場所から西へと遠かっていく。幸いこの光の玉が『闇』から守ってくれる為魔物が襲ってくることはない。
先程まで見えてきた花や平原からはまた離れてしまい、森の中へと入っていく。そこからしばらく歩くと森の中にポツンと古びた小屋が建っていた。
「こんなところに小屋なんてあったんだ⋯⋯」
マイトの村で育ったヒカリには多少疑問に思ったが、森には強い魔物が潜んでいることも多い為、殆ど近くこともなかった。
光の玉はそのまま小屋の入り口にすぅーっと吸い込まれ様に入っていった。
小屋には灯りがついていて、一体誰が住んでいるのだろうかと気になる二人。また命を助けて貰った恩人でもあろうことから緊張気味にドアの前に立つ。
――コンコン――
「入りな」
ノックの返事は短い一言だった。ギイィと古めかしい音を立てながら木製のドアを開く。
「おや、随分と可愛らしいお客さんね! 予想外だわ。可愛らしい女の子が二人と坊やが一人」
そこには一人の女性が座っていた。美しい女性でありお淑やかで妖艶な雰囲気を出している。長く綺麗な黒髪に紫色のドレスで如何なる男性も魅了するかの様に白くて美しい太ももが見えている。
見た目は30歳後半といったところだろうか‥
「あの、貴女が私たちを助けてくれたのですか⋯⋯?」
「まあ結果的に助けたことになるわね。『闇』から大きな反応があったから私の魔法で対応しただけのことかしら」
「この距離からピンポイントで遠隔魔法!? 一体どれだけの魔力が⋯⋯」
シェイナは驚きを隠せなかった。この森からあそこまでの遠隔魔法をこなし、更にはあの謎の人物を退ける程の力を持っているのはこのバダイモーゼにも数える程しかいない。
「あら? 私には造作も無いことよ? よっぽどこの『闇』の中歩き回るほうが大変かしら。そんな所に立っていないで、こちらに座ったら如何? 坊やはこちらのベッドに寝かせましょう」
二人はお礼を告げ、お言葉に甘えて意識を失っているカイトをベッドに寝かせてあげた。
シェイナは落ち着かないのか古びた家の中をキョロキョロと見回していた。
「それで、貴女は一体⋯⋯?」
「私の名前はエリーナよ。ヨロシクね」
「エリーナさん宜しくお願いします。私はヒカリ、こちらは⋯⋯」
「私はシェイナ! 宜しく! 危ないところだったからホントに助かったよ」
ヒカリが紹介する前に食い気味に紹介する。シェイナはお礼をいうとまた家の中をキョロキョロしている。
「こんなボロ小屋が珍しいのかしら?」
「あ、いや⋯⋯結構古臭い家だしエリーナさんみたいな綺麗な方が住むところじゃないよなぁって⋯⋯」
「シェ、シェイナちゃん! いきなり初対面でそんな⋯⋯エリーナさんごめんなさい!」
ヒカリは突拍子もないシェイナの発言に慌てて、椅子から立ち上がり、ごめんなさいごめんなさいと何度も謝罪している。
その姿をみたエリーナはまるで小さい子供を見ている様な気がして微笑んだ。
「いいのよ。私はもうこの世界に疲れたの。各国の戦争やその為に求められる力、失われる命、身勝手な人々に」
「そんな⋯⋯」
二人は重たい空気にさせてしまったと何か気の利いた事を言いたかったが、初対面の人に過去を聞かれること程野暮なことはないと思い黙って下を向いてしまった。
「お師匠様ただいまー」
そんな空気の中一人の少年が家の中へと入ってくる。小柄で身長は140cmくらいだろうか、小人の様な緑色の帽子を被り、セミショートの可愛らしい顔をしていた。その小柄な身体には籠を背負っていてその中には大量のキノコが積まれていた。
「おかえりなさいネクロ」
「このお姉さん達はだぁれ? お師匠様より強いの?」
「この人達はお客人よ。疲れているみたいだから今日はここで泊まっていってもらうわ」
「え!? そんな、助けて貰ったのに⋯⋯」
「たまに迎えたお客人なんだからゆっくりしていきなさい。それにこの『闇』の中だとどちらにしても帰れないでしょう」
二人は確かにその『闇』の中マイトの村へ戻る手段は待ち合わせていないし、カイトのことも気になる。ヒカリ達はこの小屋に一晩泊めてもらうことにした。
「ところでエリーナさん。先程お師匠様って呼ばれていたのは⋯⋯?」
「あぁ⋯⋯私に無理矢理弟子入りしたいってついてくるから仕方なく側に置いてるのよ。ネクロっていうの。きっと貴女達より強いわよ?」
「そうだよ! 僕はお師匠様の一番弟子ネクロ! お師匠様はこの世界で最強の『ぐらんどますたぁ』ってやつなんだよ」
「グランドマスター!!?」
目の色を変えてシェイナが反応する。ヒカリは何のことやらという感じでネクロに尋ねる。
「ねぇネクロちゃん。グランドマスターってなぁに?」
「僕は女の子じゃない! ネクロ様って呼べー!」
何やらぷりぷりと怒っている。そんな姿も子供らしくてかわいい。うふふ、とヒカリがネクロをからかっているとシェイナが説明してくれた。
「私も王国の文献でしか読んだことがないんだけど、グランドマスターは世界に数人しかいない超達人の事をいうんだよ。あらゆる武器、魔法を使いこなし一つの国を滅ぼす力を持っているとも言われているんだ」
「そんなにお強い方なんですね⋯⋯失礼を承知でお伺いしますが、意識を失ってしまったカイトは治せるのでしょうか?」
ヒカリは急に真剣な顔つきでエリーナに尋ねる。そこまでの力を持っているならあらゆる治療魔法などを使えると思ったからだ。自分のせいで失ってしまったカイトの意識を少しでも早く戻したいヒカリは必死だった。
「貴女は彼が好きなのね。愛の力で治せる世の中ならきっとすぐに目覚めるわね」
「す、好きとかそういうのじゃないんですけど‥。なんていうか、私のせいでカイトは意識を失ってしまって⋯⋯」
急に顔を真っ赤にしてヒカリは吃っている。そんなヒカリをエリーナは微笑ましく見ていた。
「でも残念ながら私の魔法じゃ治せないわ。身体から失われた魔力が元の魔力を遥かに越えているの」
「そんな! じゃあどうすれば⋯⋯」
「そんな悲しい顔をしていたら可愛い顔が台無しよ? 私の魔法じゃ治せないけど方法はあるわ」
エリーナは落ち込むヒカリを励ますように告げ、椅子から立ち上がると大きな地図を持ってきた。
「命をかける覚悟はある? 貴方達では力不足だからもしかしたら戻って来れずにそのまま⋯⋯なんてこともあるわよ」
そう言って地図に幾つかバツ印の付いた一つ『モルテプローヴァの山』を指した。
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