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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
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謎の人物

 銀の羽を使い瞬時に外まで出たのだが、辺りは『闇』に覆われつつあった。


 一難去ってまた一難とは良く言ったものだ。


 残された体力でマイトの村まで戻らなければならない。行きはカイトとお喋りデートな気分でそこまで苦にならなかった道のりも、命がかかっている今それどころではない。


「カイトは任せたよ! ヒーラーの君より私のがまだ戦える!」


 確かにゴーレム戦を見ていても明らかにシェイナが戦った方が村まで辿り着く可能性は上がる。ヒカリは自分よりも重いカイトの腕を自分の首に回し、グッタリとしたカイトをしっかり守るように補助魔法を唱え、自分自身にも強化魔法をかけた。

 これならばカイトを連れていても走ることくらいはできる。


「シェイナちゃんに頼ってばかりでごめんね」


「私もあのままだったら、きっとゴーレムにやられてたからお互い様だよ」


 シェイナはニコッと笑顔で返すと、ずっと暗いままの表情だったヒカリも少し元気になった。


 洞窟へ向かう時は結界に守られた中歩いてきたことと、結界を少し外れ洞窟へと向かう際にも幸い強い魔物には出会わなかった。

 しかし今は『闇』の力の影響もあり強い魔物が出現している。昼はスライムやゴブリン達の楽園となっていたが、今ではミイラのような敵や、二足歩行のキメラなど見るからに強そうな敵ばかりだ。


「『闇』対策アイテムも持ってきてるからとりあえずコイツを使って乗り切ろう」


 シェイナは道具袋から小さなクリスタルを取り出し、それを宙に向かって放り投げた。するとシェイナを中心とした半径5mが光に覆われる。

 『闇』の力が脅威となっている為、冒険者や商人の為に使われるアイテム「光のタリスマン」これには強力な光魔法が詰められていて、今では高額で取引されている。


「シェイナちゃん凄い! そんなアイテム持ってるなんて⋯⋯」


「寧ろ良く対策せずに洞窟に来たね! どうやって帰るつもりだったんだい?」


 シェイナはやれやれと言った仕草でヒカリをからかっていた。ヒカリはデート気分で浮かれていたから何も用意していなかったなんて‥言えなかった。

 挙げ句の果てにカイトを危険な目に合わせているのだから救えない。ヒカリはシェイナを見て私も強くて頼りになれるような人になれたらなぁ‥と思っていたその時




――――ガアァァアア――――


 

 いきなり獰猛なキメラが二人の方へ唸り声を上げながら飛びかかってきたが、タリスマンの光に触れると激しい稲妻の様なものがキメラに襲いかかり、とても近づけないと察したのかまた『闇』の中へと逃げるように消えていった。


 光のタリスマンの効果は絶大だった。いくら強力な魔物とはいえ簡単には近づけず、弱い魔物ならば触れた瞬間にそのまま蒸発してしまうくらいの威力がある。

 とはいえ『闇』が深いとタリスマンの効果を受けてもなお攻撃してくる敵はいる。その為シェイナが先陣を切る形を取った。

 

 洞窟からマイトの村までは歩くと約3時間程。敵と戦わなければ1時間程でつくであろう。

タリスマンの効果は数時間は持つから余裕で帰ることができる。


 30分程歩いたが、魔物がタリスマンによって弾かれていく。まるで光に寄っていく虫のように次々と飛び込んでくる。が、そのまま返り討ちにあっていく。

 しかし、時間が経つにつれタリスマンの効果が弱まってきたのか少しずつ魔物がタリスマンの結界を超えた入ってくる。


「タリスマンの効果が弱くなってない!? 普通は数時間待つのに⋯⋯敵が強くなってきたのか?」


「そういえば昨日の『闇』もいつもより強くてクライヴに助けて貰ったの!」


「クライヴってあの『冷徹騎士クライヴ』に!?」

 

「クライヴはああ見えて優しいのよ。国の事を考えていて、いざとなったら助けてくれるし」


 ヒカリは幼馴染でもあるクライヴを冷徹騎士とは思っていない。王国で騎士団長に任命されてから国民からはいつからか冷徹騎士と呼ばれる様になった。

 

「っと! 油断してると敵さんが入ってくるね! まだタリスマンの力が効いてるみたいだけど」


 シェイナは光の中に入ってくる魔物を殴り飛ばした。いくら強敵とはいえ今のシェイナが一発殴れば倒せるくらいには弱っていた。

 気づくと半径3mくらいまで光が狭まっていて二人ともその違和感に気付いた。


「やっぱり効き目が薄くなっているみたい。早く村に戻らなきゃ」


「そうだね! 話は戻ってからゆっくりしよう!カイトの事も心配だし⋯⋯」


 二人は急いでマイトの村へと向かった。シェイナは次々とタリスマンを破って向かってくる敵の撃破を、ヒカリはカイトを連れたままなんとか走っていった。


 『闇』のせいで辺りは全く見えないのだが、方向的にも村にも近づいていることが分かる。村に近づけば近づくほど草や花木が増えてくるので、僅かな光でも確認はできる。

 きっとあと少し歩けば村に戻れる。そう思った瞬間、人影の様なものが『闇』の中から現れる。二人は驚き足を止めた。

 黒い兜を付け、全身は黒いマントにより覆われていて全貌が分からない。タリスマンの効果を受けないということは魔物ではないのか、二人の思考が追いつかない。


「誰だ!? 『闇』の中から人が出てくるなんて」


「⋯⋯」


 謎の人物からは返答がない。というより生気も感じられない。しかし、シェイナの額からは尋常ではない冷や汗が流れていた。

 その人物からのただならぬオーラから今戦えば一瞬にして殺されるであろう力の差を感じ取ってしまった。

 

「あの⋯⋯私達は村に帰りたいの。お願いだから通してくれる?」


「⋯⋯⋯⋯」



 どこか抜けているヒカリの質問にも全くの無反応であり、謎の人物は二人へとゆっくり近づいていく。そして徐々に禍々しいオーラを発して二人を包み込もうとしたその時――



 タリスマンの光は失われた。

 

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