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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
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暗闇の洞窟4

 カラカラと壁から破片が落ちる音が、カイトの心音を加速させる。カイトはすぐに走り出し二人の元へと走った。

 さすがに三発目を放つにはエネルギーが足りないらしく、充填している間は動くこともできないらしい。 

 カイトはゴーレムに目もくれてやらなかった。


 後悔の念は強くあるものの、更に上をいく感情が湧いていた。胸の奥にあるドス黒い感情。ゴーレムに対する怒り、自分の不甲斐なさに対する怒り。しかしこの感情は妙に親近感を覚え、忘れてはいけない感情のような気がした。


 「ヒカリ、シェイナ、ごめん⋯⋯」


 ヒカリもシェイナもうつ伏せのまま倒れている。どうやら生きてはいるが、二人とも損傷が酷く意識も失っていた。


 「僕がもっと強ければ⋯⋯僕が記憶なんか無くさなければ⋯⋯」


 カイトは拳を強く握りしめ、掌から血が流れ出した⋯⋯。自分の無力さを呪うかのようにその血は感情と共に黒く染まっていく。


 「ミ、ナ、ゴ⋯⋯ロ、シ⋯⋯」


 どうやら殺人マシーンと化したゴーレムは、カイト達を全滅させるまで止まらないだろう。

 今コイツを止めるには完全に再起不能になるようにしなければならない。しかしカイト一人では到底力が及ばず、時間を稼いで二人を逃すことしかできない。

 

 挙げ句の果てにはその唯一の作戦ですら成し遂げられない、男としても人間としても不完全であると痛感し、無限ループのようにも思える負の思考にカイトは飲み込まれた。


 「黙れ⋯⋯! 死ぬのはお前だ⋯⋯」


 カイトの左目が闇に染まり、禍々しいオーラを放ちゴーレムの方へとゆっくりと歩きだす。

 あからさまな変化にもゴーレムは目の前の敵を殲滅する事しか考えていない。


 ゴーレムは充填したエネルギーをカイトに向けて全て放出した。

 カイトは左手を前に出し閃光を全て受け止めた。否、全て掻き消したという方が正しい。


「こんなゴミみたいな攻撃で二人は⋯⋯」


 カイトは更に怒りを覚えた。これほどまでに弱い攻撃からも逃げ回り、最悪の結果を招いた己の無力さに⋯⋯


 そして今まで抜くことの出来なかった大剣に手をかけ、まるで使っていた事が当たり前かのように鞘から引き抜く。


 大剣は通常想像する剣の形とは少し違っていて、この世の全ての闇を喰らい尽くすかのような禍々しい形をしていた。剣先は割れ、溢れんばかりのオーラがあり大剣というよりは魔剣と呼ぶ方が相応しい。

 カイトは魔剣を振り上げるとそのオーラが人間の手に届くことのない遥か上の天井近くまで昇り、闇で覆われたオーラソードが完成していた。



「死ねえぇぇぇえええ!」



 その一振りでゴーレムは真っ二つに切れた。あれほどまでに硬く、特殊な鉱石で作られていたであろう物体がまるでスライムのようにあっさりと切断されていた。



――――ジジジジジ⋯⋯⋯⋯


 二つに裂けたゴーレムは今にも爆発しそうであったが、カイトはそれすらもさせなかった。

 そんな下らない終わりは誰も望んじゃいない。意思のない物体であろうが今のカイトはそれを許さない。


「この世の終わりで絶望しろ」


 カイトが放った一振りのオーラがゴーレムを包み込んでいく。今にも火花が散り、爆ぜる寸前であったが優しく心臓を撫で回すかのように⋯⋯そこからは闇の力による圧縮、絶望、虚無、死、恐怖それらの造作によって巨大なゴーレムが縮んでいく。


恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶――――


 そこには元から何も存在しなかったかのようにゴーレムは消滅した。爆発という惨めな選択肢さえも潰され、絶望という檻に押し込められた。


 カイトは魔剣を鞘に戻し、目が元の深紅の色へと戻っていく。奪われていく意識の中で最後に呪文を唱えた。


「ダーク⋯⋯ディストリビュート」

 

 倒れたままのヒカリ達に向けてカイトは手を翳し闇のオーラが掌から二人へと移っていく。

 そのまま力を使い果たしたカイトはその場へと倒れ込む。


「⋯⋯ん、あれ⋯⋯? 私は一体⋯⋯カイト! カイトは?」


「ヒカリも意識戻ったんだね。良かった。だけど今度はカイトが⋯⋯」


 そしてカイトの力によってヒカリとシェイナは意識を取り戻した。

 ヒカリは力尽きた様に倒れている様を見かけるとすぐにカイトの側へ駆け寄った。



「カイト!? しっかりして! ヒーリング!」


 ヒカリはカイトのお腹に手を当て必死で回復魔法を唱えた。しかし、カイトの意識は一向に戻らない。


「どうやら魔法では治らないような傷ってことだな‥このフロアを見れば分かるよ⋯⋯」


 二人が起きた時にはゴーレムの姿はなく、天井から壁、床へと大きく裂かれたような亀裂が入っているのを見た。恐らくカイトが生命を削る程の力を使い、この場を凌いだことが容易に読み取れる。


「カイトを連れて戻りましょう。幸いにも途中で手に入れた銀の羽もあるし」


「銀の羽!? またこれはレアなアイテムだな!それがあるなら宝箱を空けてから⋯⋯」


「ダメよ! もし罠があったら今度こそ全滅してしまうわ! また出直しましょう」


 優しそうなヒカリが声を荒げること驚き、渋々銀の羽を使って帰ることにした。銀の羽は使用者の肩に触れることで複数人脱出できるアイテムであり、シェイナはお宝をゲットできない事に悪戯をして叱られた子供のような顔をしてヒカリの肩に手を乗せた。


洞窟編終了して次は修行編へと入ります(*´꒳`*)

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