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異世界の三つ編みはほどけない  作者: カイ
第一章 ヒカリと『闇』
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三つ編みの女の子

 いきなり目の前が真っ暗になり、暗闇の中を彷徨っていた⋯⋯どこか早くなる鼓動を聞きながら手探りで進んでいく。

 不安という仄暗い感情なのか、意識が定まっていない。自分が歩いているのか前に進んでいるのかも分からない。

どこまで続くか分からない中ふっと一つの光が現れ、無意識にそこへと向かっていく。光を掴もうと手を伸ばすとふわっと身体が浮き上がり、意識が上昇していく。 

 爽やかな潮の香りが、意識を失った青年の鼻を掠める。目覚めの良い朝の感覚。ベットの代わりにふわふわの草が心地の良さを演出している。


「ん⋯⋯」


「こ⋯⋯ここは?」


 青年がふわぁと身体を起こすと、そこにはエメラルドグリーンの海が一面に広がっていた。

 全く身に覚えのない景色に少し戸惑うが、あまりに綺麗な景色と潮と緑の豊かな香りがその危機感を狂わせる。


 そして青年は意識がはっきりするにつれて大切なことに気がついた。


「あ、あれ? 一体なんだ、何も思い出せない」


 あたふたしている青年があたふたしているとカチャっと金属が擦れるような音がした。


「剣!? え、これって剣⋯⋯だよね」


 腰には短剣と、重くてとても扱えそうにもない大剣を持っている。何故持っているのかはわからない。

最初から持っているのが当たり前かの様に腰に据えてあった。

 

「と、とにかく一度落ち着こう。こういう時は深呼吸⋯⋯すぅーー、はぁーー」

 


 困ったことに青年には記憶がなかった。呼吸を整えて一度脳に酸素を送り込んだ。覚えていることというか、元から頭の中にある情報を少しずつ整理すると、歳は22歳。名前はカイト。身長170前後に癖っ毛が目立つ青年、ということぐらいで、これといって役に立つ情報はない。

 いきなり置かれた理解の追いつかない状況に、あたふたして怯えているあたりは決して気の強い性格ではないと思われる。

 単語や会話などは問題ないレベルで、自分が何者なのか、何処で産まれたのか、子供の頃の記憶、そういった人間の記憶を形成するのに必要な記憶がゴッソリと抜けている感じだ。


 自分の記憶が無いという点を除いてはとても気持ちの良い風景である。

 カイトは少しでも手がかりを得ようと辺りを見回した。


 そして小高い丘の上の草原から見渡す限りの広大な海が広がり、よく見るとその中心にはこの世の不安を全て抱え込むような闇が、巨大な柱となって海と空を繋いでいた。


「あの黒い柱はなんだろう⋯⋯近づいたら危なそうな気はするけど。あぁーもう何も分からないよ!」


 記憶喪失と相まって何も分からないことが不安に拍車をかける。そして行きどころのないイライラも募り地団駄を踏んでいる。


「はぁ⋯⋯何でこんなところにいるんだろう」


 その巨大な柱を見つめながら、カイトは何故ここにいるのか考える。考えてももちろん答えなど出るわけない。今の状況の打開策などがすぐに思い付くような頭脳は持ち合わせていないようだ。

 とはいえ、今記憶も無くし軽いパニック状態だから仕方がないものだという結論に至る。


 そしてふと視界の端に丸いコマンドが出ているので手を触れてみるとピピッという音と共に目の前にウィンドウが表示された。


カイト 

レベル1 ダークダガー

ちから3

素早さ5

体力10

HP 25

mp 10


スキル 闇討ち、気配を消す、


 と書かれている。


「なんかのゲームみたいだな」


 ダークダガー⋯⋯なんとも聞き慣れない響きである。記憶がある無しに関わらず聞いたことは無さそうな単語である。普通は勇者とか戦士とかカッコいいものではないだろうかと考える。

 そういうくだらない情報は記憶を無くしていても問題なく入ってくるようだ。


 そしてオーソドックスなスキルとはかけ離れた闇討ち、気弱な自分にはとても使いこなせそうにないスキルである。


 そんな記憶も何もなく、頭の中がまとまらないまま立ち尽くしていると


「あのー⋯⋯」


「うわぁ、いや、あの、その、えっと⋯⋯」


 カイトはつい言葉にはならない言葉を発した。


「君⋯⋯いきなり現れたけど、いったいどこから来たの?」


 腰までの長い三つ編みをした女の子が声を掛けてきた。

  そしてここから運命の歯車が回り始める。


挿絵(By みてみん)

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