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魔物図鑑

 【魔物とは何であるか?】


 辞典を開けば〝人を狂わせ害をするような性質をもつ化け物の類。〟といった言葉が出てくる。だが王国で、一般に魔物とされている生物?達は少し違う側面を持つこともある。訓練を積んだ召喚術師の元で、しっかりとしつけがなされていれば、恐ろしいドラゴンだって空を飛ぶのに必要な、希有な存在となる。


 また【人を狂わせ害をする】と言うならば、冬眠に失敗した熊や、宵闇よやみの中集団で襲いかかって来る狼、疫病をまき散らすネズミなど、動物・猛獣としてカテゴライズされているものたちも【魔物】としなければならない。


 だがそうはならないのは、彼らの持つ魔力や怨嗟えんさ瘴気しょうき・未だ解析できない不可解な能力があってのことだろう。この書には、現在判明している魔物の、大まかな特性を記すものとする。


 筆者:エイブラハム=ノートン


 監修:テグレクト=フィリノーゲン



 ◇  ◇  ◇



※ 跳鳥はねどり


 その名の通り空を飛ぶことは無く、大きな顔と一本足が特徴。人の身の半分程度の体躯たいくを持ち、非常に臆病おくびょうで、人を見ると逃げることが多い。しかし跳鳥でも、集団であれば襲いかかってくるケースもあるため、油断は禁物。足の肉は筋肉が多く付いており、とても硬く煮ても焼いても、とても食べられたものではないが、胴体の部分はスープにすると とても旨いらしい。



※ 虚骨スケルトン


 正しく葬られなかった白骨死体が、怨嗟えんさ瘴気しょうきを根源として自律移動した魔物。戦いの跡地に行けば人型の、疫病で全滅した牧場ぼくじょうにいけば牛や馬型の、春になった冬山にいけば冬眠しそこねた熊や狐の虚骨スケルトンに出会うケースが多い。攻撃力・防御力はかなり低く、その気になれば少し鍛えた一般人でも一撃で倒せる。


※ 屍人アンデッド


 正しくほうむられなかった肉体や骨が、瘴気しょうき媒体ばいたいとして知性もなく、人を喰らうようになった哀れな化け物。一個体は動きも鈍く、力も弱いが、再生能力を有しており、完全消滅させるには倒した後に浄化のため聖水を掛けるか、浄化魔導を唱える必要がある


※ 落ち武者


 アンデッドに分類される魔物で、戦争跡地に捨てられた武器や防具が、主を求めて人の形を取り、彷徨ほうこうする魔物。何故無機物たる武具が、意思を持ち合わせるのかという機序きじょは、未だに解明されていない。解明されていることは、丁寧に扱われ愛されていた武器ほど、強力な力を発揮はっきする落ち武者になることだけだ。


※ 煙魔えんま


 その名の通り、濃密な煙をまとった魔物。煙の部分を攻撃しても一切通じないが、身体の中に小さなコアがあり、コアを破壊すれば煙魔も消滅する。駆け出しの騎士や拳闘士など、物理攻撃を得意とする者にとっては難敵となることが多い。その代わり魔導が良く効き、中級の魔導師級ならば50体近い煙魔を1回の詠唱で全滅させられる。


※ゴブリン


 人よりもやや太い体躯たいくを持ち、棍棒や剣を手にする魔物。住処を持って暮らす種族も居れば、〝ダンジョン〟と称される廃墟・秘境・廃城等々に居場所を求める種族もある。魔力は無いが、力が強く、見た目に反して頭が回る。その力を持って振るわれる剣や棍棒は、駆け出しの初級トレジャーハンターや冒険者にとって一番の難敵となる事が多い。


※ 殺人蜂キラービー


 人の拳ほどの大きさを持った巨大な蜂で、針には麻痺効果のある毒を有する。一体でいることは少なく、大抵は3~4体の群を成している。3~4体程度ならばおくする程の魔物ではないが、20を超えると、防御も難しくなり、麻痺の毒が蓄積ちくせきされ死に至るケースも多い。


 また殺人蜂キラービーの巣は木の上に立てられている事が多く、その場合では近寄るだけで200~300近い殺人蜂キラービーに襲われる。それでも〝殺人蜂キラービーの巣〟は王国三大珍味とされ、高値で取引されるため、命懸けで挑む冒険者が後を絶たない。


※ まどいピエロ 


 色とりどりな道化の格好をしており、常に球体でジャグリングをしている小人型の魔物。体力そのものは跳鳥以下であり、一般男性のパンチやキック一発で倒れる程。しかし強力な魔力を有しており、名前にもあるように強力な〝道惑い〟の魔導を掛けてくる。


 術を掛けられた者はそれまで辿たどってきた道を忘れ、迷子となり、前後不覚におちいる。道惑いによって出口が分からなくなり、彷徨ほうこうした挙げ句、水や食料が尽きてそのまま力尽きるなど、凄惨せいさんな事件も起きている。洞窟などで遭遇した際は、細心の注意が必要である。



※ リザードマン


 二足歩行で走ることが可能な爬虫類はちゅうるい。手の形をした前足に棍棒や剣・盾を持って武装し、集団で行動する。その生存圏せいぞんけんはとても広く、湖から熱帯雨林、砂漠や荒野にまで至る。穏健な種族もいれば、好んで人間に襲いかかって来る過激な集落もあるため、事前調査が必要。

   


※ サキュバス   


 背中にコウモリのような翼が生えている、見目麗しい女形めがたの魔物。簡単な会話ならば人語を解するが、頭が良いとは言い難い。肉体的な強さは人間の女性並で、一応夢の中へ侵入するという能力はあるが、何故か自身は眠りの魔導は扱えない。


 代わりに魅了の魔導に長け、攻撃するでも逃げるでもなく、男性を誘惑し逢瀬おうせを重ねることが多い。一説には、エルフと人間の合いの子であるハーフエルフ以上に、混血児の多い魔物であるとされている。男型の亜種をインキュバスといい、希少種である。純朴な少年のような容姿をしており、サキュバス同様夢には入れるが、何故か魅了の魔導すら使えない。



※ 通信 蝙蝠こうもり


 夜目が利き、特殊な通信を飛ばし、仲間と連携して襲いかかって来る。大した戦闘能力は無いが、牙から病や疫病が発生する恐れがあり。王宮保健衛生局より、第二級の捕獲ほかく時隔離対象となっている。又、通信 蝙蝠こうもりの特殊通信は人類に有益な能力であり、病や疫病えきびょうにならぬよう、徹底した消毒の元、仮死状態にし、専用の魔導工学品を埋め込むことで、他者と遠くにいても通話できる【通信の式】が出来上がる。


 一般的に灰色をしているが、大変希少ながら赤い種もいる。赤い通信の式は、王国をはるかに超えた古帝国跡地へも通信が可能である。。



※ ひなドラゴン   


 空を飛び、ブレスを吐くが、ひな故に弱く。単独行動をしていたり、召喚術師が単体で召喚した分には、それほど恐ろしくない敵である。しかし、近くに親竜がいた場合は、百戦錬磨の術師でさえ避けて通る。もし命知らずが、親竜の前でひなドラゴンに攻撃しようものならば、親竜が子を護るため自身の命も省みず、捨て身で地の果てまで襲ってくる。 



※ 魔司祭


 魔物にして神に仕えているという、希有けうで変わった魔物。どこまで信心深いのかは不明であるが、神具のひとつである洋燈ランタンで殴りかかってくるあたり、それほど信心深く無いのかもしれない。しかし回復魔導を扱える魔物であるため、敵に囲まれた中に魔司祭がいると、とても厄介な戦いを強いられる。



土泳鮫どえいざめ


 その名の通り、地を泳ぐ鮫である。地面に完全な形で潜り込むことが可能で、地雷のごとく床から足に噛みつかれると、鋭い牙が深く食い込み重症となる。鼻が弱点であり、また一度完全に陸に上げてしまえば、すり抜けの魔導は解けてしまい。まな板の上の魚同然となる。様々研究が進められているが、何故この魔物がすり抜け能力を持ったのか、何故一度地面から挙がると再作動しないのかは未だ謎である。



※ 人食花 


 花や木々に擬態ぎたいして餌である動物を喰らう〝擬態種〟と、花や木々が独自の進化をげて肉の味を知り人や動物を喰らう様になった〝進化種〟の2種類が確認されている。


 進化種は戦争の中、魔導で植物の交配を繰り返し、意図的に造り上げられた歴史があり、その植物たちは終戦後に焼かれる事無く、未だ罪な無き者を喰らい続けている。またどちらも、進化の過程で根を用い移動をする術すべを身につけており、冒険者が運悪く人食植物を目印にしてしまったら、森林の奥深くで道惑いを起こさせる大変に厄介な性質を持つ。



※ 寄生花


 人・動物・魔物に寄生する植物種。名前は恐ろしいが、脳に寄生されない限り、共存共栄が可能であり、花が送る栄養で、寄生された人物は水さえあれば天寿を全うできるほど。脳に寄生された場合は、大変温厚な性格になることから、古代より精神病の治療に使われてきた歴史がある。また胃に意図的に寄生させることで、花の口から直接栄養や水分を注入することが可能であり、今日では医療に使われていることが多い。


※ からす天狗


 魔物の中では希有けうなことに、【修行・鍛錬たんれん】を行う魔物である。子が生まれれば、親元で剣技を習い、その錬成れんせいされた〝空飛ぶ剣術〟は冒険者を苦しめるだろう。また欠かせないのが、からす天狗の速度であり、術師や人が乗ることこそ出来ないが、神鳥ガルーダに匹敵する速度を誇る。また動体視力や反射神経にも長けているほか、偵察ていさつ隠密おんみつ行動も得意とする、その様子はさながら一つの軍隊である。



※ モンスタータンク【跳鳥】 


 魔物を射出する魔物という、なんとも奇妙な魔物。このケースでは、跳鳥をマスケット弾のように撃ち出して攻撃する。本体を攻撃しない限り無数に射出され、周りを跳鳥だらけにするため、中々邪魔で鬱陶うっとうしい魔物である。タンク自体に足は無いが、身体の一部を履帯りたいのように変化させ、成人男性の徒歩と同程度の速さで動くことが可能。跳鳥はクチバシが堅いため、直に受ければ相応のダメージを覚悟しなければならない。



※ 三尾の狐 


 文字通り3つの尾を持つ狐の魔物。一般の狐よりも二回りほど大きく、幻覚の術を使う厄介な敵。人形ひとがたに化けて疎通を取ることも可能であるが、知能は10歳前後の児童並で、イタズラ心が強い。神にも等しいとされる魔物……白面金毛九尾の狐の眷属けんぞくであるとされている。


※ 武者天狗   


 からす天狗の中でも、重武装をし、剣刀術に重きを置く天狗。戦乱期から二律戦争の末期より存在が確認されており、斃たおれた騎士の剣や盾・よろいを持ち、戦いを観る中で剣術や兵法を学んだのではないかとされている。


 その重装備故、からす天狗の取り柄ともいえる〝速度〟は失ったが、【からす天狗】の章に記した、彼らの集団行動能力・動体視力・反射神経は健在である。二流の冒険者が縄張りに入ろうモノならば、たちまち血祭りになってしまうだろう。


※ タイフーン


 古帝国跡地や死屍累々(ししるいるい)のダンジョンなど、強い瘴気しょうきき出る場所で、長い期間一定量の瘴気しょうきを浴びた風が、何かの拍子ひょうしに意識を持った魔物とされている。


 何故風だけが、瘴気しょうき媒体ばいたいとして魔物化するのかは、未だ明らかになっていない。巨大なエネルギーの塊であり、煙魔と違いコアも持たない。砂利や石を巻き込んだその破壊力は絶大で、接近戦は避け、遠くから魔導や投擲とうてき武具を使用する戦法が一般的。



※ 殺人跳鳥 


 跳鳥同様、翼はあるが空を飛べない一本足の魔物。跳鳥が白い胴体に茶色の翼を持っている事に対し、殺人跳鳥は濃青の胴体に紫の翼を持つ。名前から見て取れるように、非常に好戦的であり、離れた場所からでも弾丸のごとく跳ね飛んでくる。


 クチバシは鉄並の堅さを誇っており、フィールドが森林や狭い屋内ならば、木々や壁を用い乱反射するよう狙い撃ちにうので、隘路あいろか逆に広い場所へ誘導して戦う冒険者が多い。また跳鳥とは見た目が似ていることから同種と思われがちだが、臓器・神経の構造が大きく異なっており、ドラゴンの近種ではないかととなえる学者もいる。


 夏になると発情期に入り、危険度が増す。主に樹の上や古城の最上階などの高所に、糸のような粘着性のあるヒモを蜘蛛の巣の様に張り巡らせハンモックを作り、ハンモックに卵を入れ吊して保管する。殺人跳鳥の卵は王国三大珍味の一つとされており、毎年挑む冒険者が多いものの、100を越える殺人跳鳥相手にむくろさらす結末となることも、また多い。



※ リザードナイト 


 第五指……親指が他の四指と向き合う形に進化を遂げ、〝掴つかんで、にぎる〟動作が出来るようになったリザードマン。それまでは武器を五指で握っていただけなので、激戦となるとスッポ抜けたり、力負けしやすくなっていたが、魔物の力をふんだんに使い握り締めた剣の一閃は、一切のブレも許さない強烈なものとなる。



※ ドラゴン   


 ある意味で〝魔物〟といえば一番に想起そうきされる存在である。緑の硬い鱗うろこ、鋭い牙や爪、見る者を圧巻する巨躯きょく、口から放たれる炎のブレス。また翼を持ち飛行能力があることは、子どもでも知っている事であるが、何故あれほどの巨躯きょくが、あんな水かきのような翼で飛べるのかは、未だに解明されていない。また魔物の中で近種が最も多く確認されている魔物でもある。



※ ワイバーン


 コウモリのような翼を広げたドラゴン。現在確認されている二足歩行する竜は、ワイバーンと後述する恐竜のみである。古くから疫病や凶兆の象徴とされており、召喚術がこれ程発達した今日こんにちでも、召喚術師が式とすることを忌避きひする傾向がある。最も、毒などは持っておらず、身軽さ故の速さと、鋭い牙や爪、口から放たれる炎のブレスが冒険者を苦しめる。



※ 妖精フェアリー


 森羅万象しんらばんしょう様々なモノに宿やどるとされており、ここで全てを書ききることは、とても出来ない。森の妖精エルフ・水の大妖精ウンディーネ・火の妖精サラマンダー・風の妖精シルフ・土の妖精ノームなどが有名であろう。


 また妖精を操る妖精〝妖精王〟オーベロンや、変化の妖精プーカといった厄災の火種となる妖精も多く存在する。最近では物体のみならず、掃除の妖精・建築の妖精・料理の妖精と行った〝行動〟に宿る妖精までもが確認されている。



・ハーピー


 腕が鳥の羽になっており、下半身も鳥の様になっている女形半人半鳥の魔物。鋭い爪で人を襲うとされている。希に男型のハーピーも発見されており、大抵は少年のような容貌ようぼうをしていて体格も子どものようだという。子孫を残す過程かていで、メスが優位になるよう進化してきたためではないかと推測すいそくされている。


※ 雪女 


 主に冬山に出没する、厚い布を帯でめた格好をし、藁わらでんだ靴をいている。雪風を操る能力を持ち、微力ながら幻覚の魔導も扱える。しかし冬山はただでさえ精神を消耗しょうもうさせる場所であり、微力な幻覚でも、十分な効果を発揮する。冬の神の眷属けんぞくであるという話もある。


※ 火竜 


 赤い鱗を持ち、文字通り火山などで生活しているドラゴンの一種。通常ドラゴンがブレスを吐く時は、胃に内臓してある〝胃石〟と呼ばれる魔力の塊を咽頭部まで蠕動ぜんどうさせ運び、着火させて撃つとされている。


 火竜の胃石は、他の竜族よりも大きく、広域で苛烈かれつなブレスとなり襲いかかる。しかし、ブレスを吐く前に、胃石を弓矢などの投擲とうてき武具で打ち抜かれると、貯まっていた魔力が暴発して、自らの炎に燃え尽きる最期を遂げることがある。



※ 死神  注)この項では冥府から現れた〝本物の死神〟ではなく、〝魔物としての死神〟を記す。


 文字通り死のいざない人。骸骨にローブをかぶせ、大鎌おおがまを持った死の象徴。個体で強さの幅が大きい魔物であり、酷いモノではスケルトンにローブを着せて鎌を持たせ、鎌にスタンの魔導を付加させただけの代物を〝死神だ!〟とうそぶく術師までいる。


 一方本物の死神の眷属けんぞくとして彷徨ほうこうする魔物も確認されている。カマには痺れ・即死・毒が塗布されていることが多い。大振りの一撃であるため避けやすいが、食らえば本当に死んでしまうか、後遺症を残してしまうことも少なくない。即死の魔導は、心肺蘇生術を行えば容易に回復出来るため、冒険者たちにとっては、チームワークの発揮はっきどころとも言える。



※ 一角獣


 文字通り、額ひたいに大きな角が立っており、鉄以上の堅さを誇っている。猪突猛進しょとつもうしんという言葉がピッタリであり、一度敵と出会い走り出すとその角を突き立て高速で走り迫る。その威力は巨岩を砕き、鉄の扉を貫いても止具をぶち壊して、なお止まらぬ程。恐ろしい一方で、壁に突き刺さりそのまま抜けなくなった等、間抜けな話も多い魔物である。


 また一角獣の角は、その形状から様々な病を治すとされる、【ユニコーンの角】の偽物として売られる事が多い。削った際に雪ぐような聖素が感じ取れれば本物だが、一角獣の角を削っても瘴気しょうきあふれるだけで、逆に病を悪化させる。……それでも偽物に騙だまされてしまう被害者は後を絶たず、早急な対応が課題である。



※ ワーム 


 沼地や湖・湿気の多い洞窟などを拠点としていることの多い、成人男性が縦に3人は入る大口を開け襲いかかって来る魔物。皮膚も金属の様に硬く、生半可な剣での剣術は通らない。その硬い身体をローラーのように回転させて攻撃し弱った所を、件の大口で呑み込まれる姿は冒険者仲間に大きな心の傷を残す。しかし丸呑みのため、運が良ければ討伐後に、生還を果たすことも可能である。



※ ガーゴイル


 普段は魔物を象かたどった石像として置かれている。門や宝の番人として配置されていることが多く、侵入者を察知すれば、生身となり鋭い牙で攻撃してくる。石化している状態でも油断はできず、投擲とうてき攻撃のほとんどが効かない。……その一方で諦めやすい性分でもあり、明らかに自分よりも強者が来たと感知すれば、襲いかかって来ることはなく、置物と化してしまう習性がある。  



※ 霊魂レイス


 この世に強い怨嗟えんさを残し、基本肉体を持たず彷徨さまよい、誰彼構わず呪い殺す哀れな魔物。肉体を持たないため、物理攻撃は一切効かない。騎士や拳闘士がレイスを倒そうとするならば、専門の魔導師に剣やナックルサックに対レイスの術式を掛けてもらわなければならない。


 さて、前述に〝基本肉体を持たない〟と記した理由は、レイスは無機物に宿る性質があるためだ。剣や刃物・籠手こてや魔道具といった武装品から、襟巻マフラーきや人形、果ては家屋かおく全体に至るまでを、己の新たな肉体〝呪いの品〟にすることが可能である。



※ モンスタータンク【殺人跳鳥】


 前述したモンスタータンクが、殺人跳鳥を装填そうてんして発射してくる厄介極まる魔物である。普通のマスケットならば弾丸が当たらなければそれで終わりだが、例え外れても、今度は殺人跳鳥が襲いかかって来るのだ。もし発見したならば、殺人跳鳥に構わずモンスタータンクそのものを早急かつ速やかに撃破させる必要がある。また大破したモンスタータンクからは、殺人跳鳥が現れないことから、召喚の術を使っていると考えられる。



※マッドブル


 物理的な力・肉体的なタフネスだけで言えば、神獣にも引けを取らない程の力を秘めている。しかし気が触れており、常に興奮している。敵も味方も……なんなら壁や木々でさえ関係なく攻撃し、建物や木々が倒壊することさえある。召喚術師が式とした場合、マッドブルを使いこなせて、やっと一人前とも言われている。余談であるが、尻尾には神経が通っているが攻撃に使う事はなく、尻尾の肉は王国三大珍味の1つとされている。



※ ヒュドラー


 7つの首をもつ毒蛇。主に沼地に住んでいる魔物。ヒュドラーの済む沼は当然、毒沼と化しており、気化した毒も空気中に多く含まれる。そのため討伐に向かうならば、相応の防毒魔導かガスマスクが必要になる。また異常なまでの再生能力を有しており、滅多切りにしようが、炎で炭にしようが当たり前の様に復活する。勿論弱点はあり、7つうちの1つの首に心臓があり、それを撃ち抜けばヒュドラーは消滅する。


 余談であるが、ヒュドラーには心臓にだけ毒が無く。滋養強壮じようきょうそうの霊薬として高価で取引されている。



※ アンデッドドラゴン


 文字通り、アンデッドとなってしまったドラゴン。瘴気しょうきはらんだブレスは、疫病を招くため、浄化魔導に長けた術師か、防護服やガスマスクが無ければ、とても戦える相手ではない。また前述したアンデッドと同様に、倒した後に汚穢おわい瘴気しょうきそそぐ聖水を掛けるか浄化魔導を使わなければ、また復活してしまう。


※ ゴーレム 


 土・鉄・鋼など様々な素材で出来た人の形に似た様相の巨大な魔物。この魔物は術師がその気になれば、2流の者でも簡単に作れる。土のゴーレムならば、土をこねて、呪札を張り、魔力を注げば終了だ。そのため原動力となるのは呪札のほうであり、体に幾ら攻撃をしても復活するばかりである。


 人間が簡単に作り出すことの出来る魔物ということを考えると、ある意味希有な魔物である。現在王国ではゴーレムの作成は違法ではないが、〝美しい彫刻が動けば、もっと美しいと思った〟などの理由で、彫刻をゴーレム化させる事件も起こっており、法整備が検討されている。


※ スライム


 巨大なゲル状の塊であるが、コアは疎おろか神経と呼べる部分すら無く、どの部分で自意識を保持しているのかは不明である。人間や動物を丸ごと呑み込み、ゆっくりと体内で消化して捕食する。あえて体内に呑み込まれ、内部から攻撃を行うという討伐方法もある。環境地域によって擬態ぎたいをする能力を持ちあせており、草原なら緑、水源地帯ならば青、火山ならば褐色か赤色といった具合に変化が可能。


 また水銀スライムと呼ばれる、鉄鋼と魔導工学の町カマトの汚水廃棄地区など、公害地域に生息する亜種がいる。水銀スライムは魔導に対する防御力が非常に強く、また素早く逃げやすいため、召喚術師が式とするには一流の腕が必要とされる。 



※ 単眼巨人サイクロプス


 文字通り1つ目の巨人であり、大きさは人の身の三倍から六倍あるとされている二足歩行種。巨木から作成した棍棒の一撃や、その大足での踏みつぶし攻撃は、熟練の冒険者にとっても恐怖の対象であり、例年死傷者の報告が絶えない。その大きな単眼は夜目も効き、暗闇の洞窟や宵闇の森でも活動可能である。


     

※ 風竜


 風の魔導を多く有した竜ドラゴン。速度は竜種のみならず、空を駆ける魔物の中でも1,2を争う最速の魔物。速度だけで言えば、竜族の頂点とされる金色竜王をも凌しのぐ。その分攻撃力は弱く、風を宿したブレスは、事前に専用の防御を揃えていれば恐れる程でもない。しかしそれでも竜族であることに変わりは無く、油断して鋭い牙や爪にやられることのない様に注意。



※ 魔髙司祭


 前述した魔物にして神の従僕じゅうぼくである魔司祭が、日々の神への祈りによって強化した上位交換。魔司祭にも有った回復能力が大きく強化されており、敵に囲まれた状態でこの魔物が居ると、泥沼の戦いを強いられる。髙司祭の杖を持っているが、それを用い殴って攻撃してくる辺り、本当に神に陶酔とうすいしているのかは謎である。



※ ワーウルフ


 ドラゴンほどの巨躯を持つ白狼。単独行動をしていることが多く、獲物を見つければ恐ろしいまでの速度で接近してくる。夜行性であり、夜に冒険家たちが眠っているところを襲いかかって来ることが多く、不意打ちでの激戦を強いられる。皮膚が硬く、牙や爪も竜ドラゴン異常に鋭利であり、その素早さもあり強力で恐ろしい敵である。純白の毛皮や皮膚は、高値で取引されているため、討伐した冒険者にとっては、宝以上の収入となることが多い。



※ 眠り羊  


 普通の羊より少し大きな程度の見た目であるが、強い眠りの魔導を扱い、囲まれれば睡眠体制の魔道具を持っていても眠りについてしまう。この魔物自体は大した体力も攻撃力も防御力もないが、高位の魔物が跋扈ばっこする場所をテリトリーとしていることが多く、一度眠らされれば、命の保障はない。



※ 夢魔アルプ


 古帝国の時代から、夜中になると屋根の上で歌を歌い、その家の住人の生命エネルギーを消耗させ死に至らしめる、という言い伝えがある、歴史有る魔物。ダンジョンで出会った場合には、強力かつ広域な眠りの魔導を使ってくる他、毒・痺れ・混乱・道惑い・スタンといった状態異常を多用する。〝夢に侵入する美女〟という印象から、前述したサキュバスの上位交換と誤解されがちであるが、全くの別種であり、悪魔の眷属けんぞくとも言われている。



※ エルフ・ダークエルフ


 元々は古帝国語で森の妖精を意味する、〝エルファ〟が語源であるとされる。エルフは頭が良く、手先も器用であることから、古帝国の時代には、人間社会に自然に溶け込んでいたことを記す文献ぶんけんが多々存在する。


 しかし、古帝国崩壊後の戦乱期になると、自軍にエルフを使い戦力の増強を謀はかろうとする人間の身勝手さに愛想を尽かし、森へ逃げ込み独自の共同体社会コミュニティを作り、人間からは〝魔物〟の烙印らくいんを押された経緯けいいがある。


 エルフとダークエルフについてであるが、前述の通りほとんどのエルフが人間に良い感情を持っていないため、明確な境界線や区分は無く、悪魔に忠誠ちゅうせいちかった・ダンジョンで敵として出てきたなどのエルフをダークエルフと呼ぶことが多い。


※ 恐竜


 二足歩行し、翼を持たないという、現在確認されている唯一の竜族。しかしその突進力、牙・爪は飛行能力の無さを埋めるに十分であり、その皮膚は槍が折れるほどに硬い。噛みつき能力だけで言えば、後述する竜族の頂点〝金色竜王〟以上とも言われている。またブレスを吐かないことから、胃石を撃ち抜いて自滅を狙う戦法も通用せず、真っ向勝負が求められる。もし真っ向勝負で打ち倒せたならば、一流の冒険者・騎士・拳闘士・術師と言ってもいいだろう。



※ 呪いの絵画


 絵画の値段が如ごとく、強さと弱さの振り幅が最も大きい魔物。呪いの絵画には、呪いに至るまでの過程が3種類存在する。1つ、始めから呪う目的で描えがかれた絵画。2つ、瘴気しょうきを浴びすぎてしまったり、レイスが憑依ひょういしてしまった絵画。3つ、残酷かつ複雑怪奇な経緯けいいから強い呪いを持ち合わせることになった絵画。


 3つ目で最も著明なものでは、他国を次々侵略し、敵を串刺しにして敵の血をすすり、心臓を食べたというドラキュリア伯爵が死ぬ間際に描いた絵画。まるで児童が黒い絵の具で塗り尽くしたかのような絵画であるが、高位の術師が見ると、その恐ろしさから発狂する者も出るという。


※ ジェノサイダ-


 人刈り機とも呼ばれる、自律稼働じりつかどうする殺人マシン。古代兵器の一種とされており、現在は瘴気しょうきを糧として動いているが、元々はどのような原動力を持っていたのかは不明。鋭利な回転する刃を前方に備え、4つの車輪を器用に動かして襲いかかって来る。元が機械であるからか、電撃魔導にとても弱い。


※ スティンガー


 ジェノサイダー同様、古代兵器の一種とされている殺戮さつりく機械。ダンジョンの様々な場所に設置されており、センサーに反応すると火炎を挙げ射出される。着弾と同時に大爆発を起こし、生半可な防御では身を守れない。現在では発射前のスティンガーの解剖に成功しており、既存の激発げきはつ魔導とも火薬とも違う、独自の進化を遂げた流体の重い金属が大爆発の元であるとされている。



※ 赤鬼


 角を持つ人の身の五倍から七倍ある、巨大な人型の二足歩行種。その名の通り赤い皮膚でおおわれており、武器として赤鬼の肩まであるほど長い鉄の棍棒を、まるで樹の枝を振るように振り回し攻撃する。二足歩行種の魔物の中では、1,2を争うほど力が強い。戦いの中で棍棒を失わせても、今度は岩を無造作に掴んで粉々にするほどの握力を持つ手が襲いかかって来る。


※ ドラキュラ


 ヴァンパイアと呼ばれることもある、同一の存在を指しているので理由は省略する。〝宵闇の皇帝〟の異名を持つ、夜中に生き血を啜すする人型の魔物。基本は男性であるが、女性の場合ドラキュリーナと言う。恐ろしい存在であると同時に、非常に弱点が多い魔物である。


 弱点を挙げるだけでも、夜にしか活動できない・流れる水を渡れない・大蒜にんにく又は大蒜の花に近寄れない・聖なる物の象徴(十字架など)でダメージを喰らう……。など、準備をおこたらなければ戦いを避けることは容易である。


 同時に強力で独創的な魔導を多々扱える。コウモリに変化することが出来る・ダメージを受けた身体を再構築さいこうちく出来る・影と同化出来る・影が無く、鏡にも写らない・ねずみふくろう蝙蝠こうもり、狐、狼などを操り、嵐や雷を呼ぶ……と、宵闇で戦闘する場合には〝闇の皇帝〟に恥じない実力を持つ。


 恐らくは死後、悪魔となったドラキュリア伯爵の眷属けんぞくだろう、という説が有力であるが、肝心のドラキュリア伯爵は未だ目撃の情報すらない。

 


※ モンスタータンク【スティンガー】


 前述した古代兵器スティンガーを搭載とうさいしたモンスタータンク。最早もはや魔物というよりも兵器であり、スティンガーを10秒前後で次々射出させ、大爆発を起こさせる。もしスティンガーの爆発を防護出来る力と余裕があるならば、射出口付近で大爆発を起こさせれば、勝手に自滅する。


※ ネクロマンサー


 霊使いであり、レイスやリビングデッドを召喚して攻撃してくる厄介な魔物。気を許せば、対象者を地の果てまで追いかけ呪い殺す、リビングデッド・無差別に呪いを振りまくレイスに囲まれ、取り返しの付かない事になる。なので発見次第、本体を撃破する必要がある。ネクロマンサー自体は、そこまで体力も召喚以外の特殊能力も無いため、運が良ければ簡単に倒す事が出来る。



※ ジュエルドラゴン 


 竜族の中でも一際ひときわ異質な存在で、〝魔導〟が一切通じない魔物。皮膚が宝石の如く輝いており、魔導をはじく反魔導の力を有している。そのため、魔導師にとっては悪夢のような敵となる。しかしはじくのはあくまで〝魔導〟のみであり、〝魔導の影響を受けたもの〟までは弾けない。


 そのため、魔導師がジュエルドラゴンに遭遇そうぐうしてしまった場合は、浮遊と移動の魔導で巨岩をぶつける・風魔導で竜巻を起こし、木々を折り生け花のように刺す・土魔導で壁を作り孤立させる……etcetc。といった対応が必要になる。



※ グレムリン


 一般に〝悪戯イタズラの妖精〟とされている、二足歩行する人型の魔物。妖精の眷属けんぞくを精霊と呼ぶので、〝悪戯の精霊〟と呼ぶ方が正しい。人間に悪さをするが、人間嫌いではなく、事実全滅したパーティに聖水を浴びせてとむらったという逸話があるほど。


 人間に危害を加えるのは、羨望せんぼうの裏返しではないかと言われている。ダンジョンで遭うと、大抵状態異常の魔導陣に誘導したり、剣や魔導杖・宝を盗んで逃げたり、水の中身を油に変えたりなど、直接死には至らないが、鬱陶うっとうしいことこの上ない事ばかりする。


※ グリフォン


 鷲わしの翼と獅子の胴体をもち、鋭い曲がったクチバシを持つ。古帝国よりも遙か以前の文献や石碑にも描かれている歴史有る魔物。飛行戦闘能力が高く、鋭い鉤爪かぎづめは竜ドラゴンの鱗を簡単に切り裂く。集団で移動していることが多い。好戦的な魔物でないため力不足ならば、空で見かけた際は、一度地上に降りることを勧める。



※ りゅう


 ドラゴン族の近種であるが、胴体に翼を持つドラゴンと大きく異なり、体格は長い胴体に背ビレが付いた姿である。翼ではなく、浮遊魔導を用いて空を駆ける。竜ドラゴン同様、胃に隠した胃石を用いてブレスを放つ。ドラゴンと違い、射出時、その長い胴体内で、魔力を付加させ放たれるブレスは、ドラゴン以上に広く強烈で恐ろしい。



※ バグネーター


 古代兵器の1つであり、鋼鉄で出来た自律移動する機械の魔物。前編に記しるしたマッドブル同様、気が触れており(壊れており?)敵味方構わず攻撃を行う。ジェノサイダ-同様雷攻撃に弱い。また討伐の最後には大爆発するという、迷惑極まりない魔物であるため、最後の一撃は遠方から行うことをオススメする。



※ ラミア 


 上半身は麗しい女性で、下半身は蛇の魔物。魅了の魔導に長けており、パーティならば味方と戦うことになりかねない。また子どもを攫さらって喰らうという伝説が、古くからあり、「良い子にしていないとラミアがやってくる。」という言葉は有名である。実際人を喰らう魔物であり、魅了によって全滅したパーティはラミアの餌と成りはてる。



※ デビルコア 


 人の身ほど大きな1つ目の球体。熱光線を撃ち出す能力を有しており、文字通り光の速さで撃ち出されるため、ブレスと異なり狙われれば回避はほぼ不可能。そのため、防御に徹するか隠れることをオススメする。大きく開いた目玉は光線を撃ち出す恐ろしい場所にして、弱点。目玉に射出した矢でも撃ち込めれば、戦況は大きく変わる。



※ 人狼   


 悪魔の眷属けんぞくとも言われる。人語を解する高位の魔物。人虎じんこやミノタウロスのように半人半獣の姿ではなく、完全な人の形へ変化することが出来る。高位の人狼ともなれば、人語を解すばかりでなく、人をだまし信頼させる能力にも長け、村へ溶け込み、夜になると人を襲い餌とする。開拓村の創立や、部族の独立など、新たなコミュニティが出来上がるときに〝本来居ないはずの一人〟として、自然に村へと入り込み溶け込む。


 人狼が滞在した村はその凄惨せいさんたる状況から村人達が疑心暗鬼に陥り、村人同士の鏖殺ジェノサイドに発展するケースが多々存在する。とある開拓村では村人同士の疑心暗鬼で、疑わしい者の処刑が次々行われ、村長と一人の娘を残し全員が処刑又は人狼の餌となり死亡、生き残った娘こそが本物の人狼であったという悲惨なケースまで見られた。



※ 屠竜ドラゴンスレイヤー     


 ややこしい名前なので間違われやすいが、人型の魔物。その名の通り、ドラゴンに対して並々ならない憎悪を持ち合わせている。ドラゴンスライスとも言われる剣は、防護の鎧・籠手として多々使用される竜の皮膚を、紙切れの様に切り裂く。竜ドラゴンを式にする召喚術師にとっては勿論難敵になるが、地の剣術も馬鹿に出来るものではなく、高位の騎士でさえ敗れることがある。



※ キマイラ


 神々が竜の器に様々な魔物の魂を入れて作られた魔物。しかし、神ですら暴走をおさえきれなくなり、地上へ捨てられた哀れな化け物。上記のように、様々な魔物を融合しているため、一概いちがいに、どのような能力を持つかを記す事は出来ない。ただ1つ言えることは、捨てられたという憎悪から、大変凶暴かつ捨て身の戦いをしてくるということだ。



※ バジリスク


 頭に王冠のような模様がある尾の長い鳥形の魔物。にらまれると石化し、猛毒に掛かるとされる。また能力だけでなく、振られた剣を足の爪で押さえ込めるほど力があり、呆気に取られ目を合わせてしまうと、取り返しの付かないことになる。そんな能力から、古代では「バジリスクを見た者は生きて帰れない」とまで言われていたが、解毒・解呪が発達した現代では、手遅れでなければ生還が可能である。



※ローレライ


 主に水辺に生息する魔物であり、その歌声は天使を思わせる力を持つ。歌に夢中となり、船ならば難破し、泉ならば溺れて死ぬ。ある国の王子が乗る船にローレライが出没し、船員は全員耳栓をしたが、王子だけは自分の身体をマストに縛り付け、ローレライの歌声を聞き続けたという。王子は「自分が正気に戻れば、ローレライの領域を突破したということだ。」と勇敢さを示したが、船乗りたちからは、「そこまでして聞きたいのか。」と呆れられたという。



※ ホムンクルス


 賢者の夢の品とされる人造人間〝ホムンクルス〟ではなく、銀色の肌を持つ人型の魔物。跳び蹴りや打突など、攻撃に独創性はない。しかし全身が鋼鉄の様に硬く、動きも高位の騎士や拳闘士並に素早いため、十分驚異的な魔物である。


    

※ ブラックレイ     


 回復から広域攻撃まで、多彩な魔導を扱う古風な魔導杖を持つ、魔物の魔導師。毒魔導・雷撃や広域火焔メギドなど、敵味方構わない攻撃も多々行う。恐ろしい魔物ではあるが、魔力を封じる呪縛樹で魔力を封じることが出来れば、木の棒で殴りかかる雑魚になる。




※ 死神【眷属けんぞく


 本家死の神様、死神の眷属である魔物。前述した、まがい物の死神と大きく異なり、鎌の一撃は外傷を負わせることこそ無いが、神経を断裂だんれつさせる効果がある。腕に喰らえば腕が、足に喰らえば足が動かなくなる。心臓の神経に袈裟けさ斬りを喰らったら即死する。また、心臓を避けられたとしても、脳に近い部位を斬られると、その場で一切動けなくなる。そのため戦闘の際は、鎌の届かない遠方からの投擲とうてき攻撃が定石である。


  

※ シャドウビースト  


 主に洞窟の最深部や地下深くなど、光の届かない場所に生息する魔物。闇と同化し、見えない場所から攻撃をしてくる。闇に紛れる影故、形はあってない様なものであり、討伐と同時に消滅する。そのためシャドウビーストを調伏出来た召喚術師は、彼のテグレクト一族以外に居ないとされている。



※ ドッペルゲンガー


 存在そのものが希少種で神出鬼没。強力な変異の魔導を得意としており、姿形だけでなく、記憶・性格・能力・魔力の強さまでも模倣もほうする。人間に化けられた場合、どちらが本物か区別を付けるのが大変困難であり、大変面倒なことになる。しかし模倣もほう出来るのはあくまで〝変異をした時点での生物〟であり、例えば子どもに変異しても、成長することはない。



※ ホムンクルス製造器 


 前述したホムンクルスのモンスタータンク。他のモンスタータンクの五倍近い速さで召喚を続けるため、〝製造器〟という名前を付けられた。他のモンスタータンク同様、履帯りたいを使い動くことが可能である。気を許せば、あっと言う間にフィールドがホムンクルスで一杯になってしまい、製造器へ攻撃することが困難になるため、発見次第早めの対処が必要な魔物。




※ 八岐大蛇やまたのおろち


 名前の通り、8つの首を持つ大蛇。生半可な剣では逆に刃こぼれをおこす程強い皮膚を持ち、魔導に対しても大きな耐性を持つ。また毒を主食とし、酒好きであることから、牙には猛毒を持ち合わせ、さらには酩酊めいていの能力がある。弱点としては、同じ多頭脳を持つヒュドラ-と違い、8つの頭脳がそれぞれ別々に稼働しているためか、混乱魔導が通りやすい。混乱を起こさせて、自滅を狙いながら体力を削るのが定石である。




※ スフィンクス


 人語を解する、獅子の体に人間の顔を持つ魔物。ドッペルゲンガー同様存在そのものが希少種。高い知性を持ち、独特の魔導を扱い〝問題に正解すれば何もせず、外れれば食い殺す〟という変わった行いをする。問題はその時代によって変化し、最も有名であり、最古の問題は〝朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。この生き物は何か?〟という問題であろう。こちらは命が懸かっているのに、正解しても賞品も無いのは何処か不公平だ。



※ 神兵


 帝国時代 繁栄はんえいの神が使わせた使者であり、聖書の中の軍隊〝天軍〟の兵士。金色の甲冑を着込み、錆さび一つ無い槍を構えた聖なる神の使いであり、天からの神通力で稼働している。聳そびえる壁の様に巨大で、まともに戦っても一体倒すことすら難しい。しかし、空間断裂などで神通力が途絶えると一気に弱体化する。古帝国跡地の最奥でしかお会いすることも出来ない、希有な魔物。


※ 白龍     


 文字通り純白のりゅうである。地吹雪とブリザードを操る能力を有し、雪山や雪原では金色竜王以上の難敵となる。炎が弱点と誤解されがちだが、氷結させ威力を増すだけでオススメしない。むしろ白龍も、雪女など雪や氷の化身と違い、生きている龍である以上、人よりもはるかに冷気への耐性があるとは言え限度があり、適温から極端に外れると動きが鈍る。そのため、むしろ氷魔導を重複させて倒すことが可能である。



※ 阿修羅あしゅら


 人の3~5倍ほどの巨躯きょくを持つ人型の魔物であり、三面六本むてを持ち合わせる。各腕に大剣を構えている。非常に発達した筋肉から繰り出される斬撃は、上位の騎士さえも鍔迫つばぜり負けしてしまうほどである。古帝国時代から目撃例があり、一説には争いと怒りの神〝アスラ〟の眷属けんぞくであるともされている。これといった特徴的弱点は無く、真っ向勝負が求められる。修羅と名を冠かんするように争いを好み、逃げる者でも容赦ようしゃなく斬りつけるため、もし自分のパーティでは倒せないと判断した場合は、逃げるより隠れることをオススメする。  


※ 神鳥ガルーダ


 神鳥と呼ばれるだけあり、神気をはらんだ巨大な鳥形の魔物。曲がったクチバシと、赤とオレンジ色の羽が特徴。空を駆ける速度は群を抜いており、その速さで猛突進されればひとたまりもない。足の力も強く、爪も鋭い。自分以上に大きな鉄の塊を、綿でも持つかのように運ぶことが出来る。また、高位の召喚術師にかかれば、5,6人まで乗ることの出来る、最速に等しい空中移動の式になる。



※ ケロベロス【眷属けんぞく


 冥界の番犬ケロベロスの眷属であり、本物のケロベロスより二回りほど小さいが、それでも魔物としては最上位に位置する。3つの首から炎・風・雷のブレスを撃ちだし、混合した威力は真正面から受ければ防御をしていても倒れるほど。また嗅覚がするどく、隠れていても直ぐに発見されてしまうため、逃げることが困難な難敵。



  

※ 金色龍王


 龍族の頂点であり、通称キングドラゴン。通常の竜ドラゴンの3倍近い巨躯を持ち合わせ、黄金色の鱗に剣よりも鋭い牙や爪、大きな翼と、竜王に恥じない貫禄を持っている。そのブレスは鉄を溶かし、爪や牙は鋼を切り裂く。また、移動スピードも速く、逃げようとしても他の魔物では中々振り切れない。傍目はためには空飛ぶ黄金のようにも見える。難敵であるが、討伐した際の報酬は大きく、黄金色の鱗皮は本物の黄金並の値段で売れる他、爪や牙は鉄鋼以上に硬い加工部品用などに使われる。



※ ゴースト     


 アンデッド系魔物の最強種。元は高度な魔導師や召喚術師・騎士や拳闘士など、生前に高度な素質を持つか、想像を絶する強い怨嗟を持ち現世へ留まった者の成りはてる最期の姿……。肉体をそのままに、生前の能力を失うことなく持ち合わせ、挙げ句 瘴気しょうきかてとして能力が相乗し、生前以上の力を出す怪物。肉体はそのままであるが、既に記憶は怨嗟によって抹消され、友人だろうが親だろうが構わず襲いかかる。生前の強さ・怨嗟・絶望性・瘴気しょうきの濃さによって、強さが変わる。

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