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英雄の一族 から 各自への褒美

 場所はテグレクト邸。その会議室で赤髪の少女にも見える少年と、背の高い細身の青髪を持つ青年が話し合っていた。


「さて…、この借用書はどうしようか。額面は金貨で1000枚だが、あくまで治安の維持のために払ったお金だ。だが自分で返させるという行為も、あの青年には必要だとDAR会長は言っていたな。」


「ふむぅ。あのアホウは未だに治療施設で寝ておる。ここはDARの会長を信頼して気長に待とうではないか、宝物庫にでも置いておこう。」


「うむ。飾るわけにもいかないからな。しかし今回もレイチド君やウィーサさん、シオン君やマリーさんはてはユウキ殿にも迷惑をかけてしまったな。マフィアの交渉はレイチド君の功績が特に大きいし、その借用書の奪還からマフィアの暗躍を阻止できたのには、ユウキ殿の功績が大きかった。」


「あの2人は対した肝だ、マフィアを相手の交渉など私でも難しい。1人残らず殲滅させるならば容易なのだがな…。」


「それにウィーサさんとマリーさん、シオン君もマフィアの殲滅作戦を実行。あの5人がいなければ、カリフの町は治安が悪化して王都には応龍会の大規模な事務所が構えられただろう。」


「まったく、兄上もついて行き活躍すればいけばいいものを。我々が今回したのは、ただ金を出しただけではないか。」


「まったくだ、僕もみんなにばかり危険な行為をさせるのには、心が痛んださ。ただ下手にテグレクト一族の名前を出せば、事態がややこしくなると止められてしまったからね。そこで勇敢な5人に相応の褒美を…といいたいところだが、ユウキ殿以外は全員断るだろうな。」


「ふむぅ…ウィーサは魔導の実験室があれば満足のようだし、レイチドも渡した宝を持ってはいるが宝箱に入れっぱなしだ。シオンとマリーに至っては何をあげればいいか毎回わからん。」


「うむ。ただカリフの高位の魔導師や召喚術師を含むマフィアが、王都へ進出することを察知して事前に止めらたのだ。この功績は大きい、無視はできないだろう。本来は金貨で何百枚と渡したいのだがなぁ…」


「そうなのだよ。ただ褒美に毎回頭を悩ませるというのも本当に不可思議な4人だ。」


「「うーん…」」


 ウィリアムとフィリノーゲンは5人の勇敢な仲間たちへの褒美を考えていて、まったく思いつかず2人は揃って頭を悩ませていた。




◇  ◇  ◇




 テグレクト邸の広間。安息日である今日はシオンとマリー、レイチドとウィーサがお茶と茶菓子を手に雑談をしていた


「へーー!!テグレクト一族って貴族じゃないんだ!あれだけ金貨をポンポン出すから、てっきりかなり高位の貴族だと思ってたよ!!」


「そ、あくまで〝英雄の末裔〟ってことで貴族階級は断ったみたい。それに王国の建国以前から繁栄している一族だからね、貴族として王より下に見られるってのが気にくわなかったんじゃない?」


「あ!それ僕も聞いた!貴族の称号を蹴って〝我々は一介の召喚術師ですので〟ってキッパリ言ったみたいだね。」


「まぁ貴族の称号がなくても英雄として貴族以上の待遇を得られるし、1000年以上繁栄している一族ですものお金にも困らないわ。アムちゃんとフィリノーゲンさんの杜撰な金銭感覚もそのためね。」


「ふーん。もうすぐテグレクト邸にお世話になって一年だけどその辺の事情はさっぱりだねぇ。それに屋敷には兄弟2人かー。両親は死んだのかな?」


「館から姿を消したらしいわ、修業の邪魔ってことで追い出されるようにね。2人は一応気にして、手紙のやりとりくらいは月に1回くらいしてるみたいだけど。今はエンサーだったかしら?召喚術師としての才能はなかったんだってさ」


「ふーん。そういえばフィリノーゲンさんやアムちゃんが生まれるまで、先代のテグレクト=ウィリアムさんは150才までいきたんだよね…。すごい執念。」


「へーー!!流石イリー=コロン様の仲間だね!150年も生きるなんて、さぞ苦労しただろうねー!!」


『 テグレクト一族の伝承は 他と違って独特 1000年にわたる先代の力をすべて受け継がれる 』


「その伝承者がアム君かー!!12才なのにやるねー!!」


「実際継承したのは11才、過去最年少だわ。このまま成長したら英雄のテグレクト=ウィリアム以上の力をつけるかもね。」


「ほー!やるねー!私も負けないようにイリー=コロン様の元までいかないとね!」


「それにしても…、また多分褒美をくれるって話しになるでしょうね。私は今で満足なんだけどなぁ…」


「わたしもお金はいいかなぁ。魔導の実験と実践ができれば問題なし!」


「僕はもう憧れのテグレクト邸で修業できてるのが一番の褒美だなぁ!あぁ早く僕直々に依頼が来るほどの召喚術師になりたいな。」


「既にカリフの高位の召喚術師に近いと思うけどね。ある程度の活躍がないと仕事なんてこないわよ。」


「ううぅ。」


『 わたしも特にいらない 楽しかったからそれでよし 』


 マリーの一言で褒美の話題は変わり、4人は楽しげな雑談に戻っていった。



◇  ◇  ◇





6日後の安息日、レイチドの部屋にフィリノーゲンがやってきた。


「やぁ、レイチド君。前回の仕事の褒美だ、お金は断られると思ってね散々ジュニアと迷ったよ。お気に召してくれるといいんだが。」


 フィリノーゲンの手にあるのは一見普通の蜂に見える、空を飛ぶ魔導具とその受信装置だった。


「これは飛行して映写の魔導がかけられた魔導具だ、その受信機につながって映像が見える。勿論記録もできる。操作は魔導でも、その受信機についていうるボタンでも行える。飛行範囲はカリフの町全体を飛ばせるほどだ。」


「これ!?かなり高いんじゃ?というか販売している所をみたことがありません。機械だから式でもない…これはいったい?」


「ああ、この魔導具の原型は機械と工業の町マカトで作らせた。それにカリフで魔導を付加させて作った所謂いわゆる特注品さ。」


「そんな、ありがとうございます!大切に使わせていただきます。」


「ああ、喜んでもらって嬉しいよ。操作は最初難しいから練習を重ねるといい。」


 その後レイチドは蜂型小型映写機の操作練習を重ね、マフィアの1人が恐喝をしている場面を記録。映像を近衛に見せて御用とした。


「中々役立つわね。これは面白いわ。」


レイチドはもらった褒美の性能に驚き、更なる練習を重ねた。



◇  ◇  ◇



6日後の安息日、ウィーサの魔導実験室にフィリノーゲンがやってきた。


「やっほー♪フィリノーゲンさんどうしたの!?」


「ああ、この前のマフィア騒動の褒美だ。ジュニアと頭を悩ませて考えたんだがこれなんてどうかな」


フィリノーゲンの手には魔石が握られ、ウィーサに手渡した。


「ほーーー!!これは…召喚の魔石!?何が入ってるの?」


「この魔石には第29代テグレクト=ウィリアムが戦った邪神〝ダーク・ロード〟が封印されている。魔石を削るほどの腕前をもつウィーサさんなら魔導に昇華できると思ってね。ちなみにダーク・ロードは主に強力な氷と冷気を操る神だ。ウィーサさんは氷の魔導を使ったことがなかったからと考えたがどうだろう?」


「いる!!!氷の魔導はわたし戦闘に使えるほど強力じゃないんだよー!ありがとうフィリノーゲンさん!よっしゃ!早速研究だ!」


ウィーサは早速大小様々なノミやドリルを取り出して魔石を削り魔導の研究・実験をはじめた。



◇  ◇  ◇



6日後の安息日、シオンとマリーの部屋にフィリノーゲンがやってきた。


「やぁ失礼、この前のマフィア騒動の褒美だ。ジュニアと頭を悩ませて考えたんだが、これなんてどうかな」


 フィリノーゲンが手に持つものは、金色龍王の鎧・ジュエルドラゴンの鎧・恐竜の魔物の皮から作られた兜、そして堅い甲羅を持つハンマーシェルターから加工されたナックル。


「いままでは僕たちから貸していたが今回は新しくきみたちにあげよう。自身で仕事をするときにつかってくれ、マリーさんにはいままで以上のナックルだ。一般人が装着しても岩を砕く。」


「いいんですか!?そんな高価な…」


『 ほお 』


マリーはナックルをしげしげと見つめる。そして装着して履き心地を確かめていた。


『 もらう ありがとう 』


「おお!やっとよろこんでもらえた。シオン君も大分成長した、これくらいの防具は必要だろう。遠慮なく使ってくれ。」


「はい!ありがとうございます。」


 シオンとマリーは早速ペガサスで飛んで、野党の住処へ行く。防具のおかげで弓を食らおうと剣を食らおうとケガ一つなく、シオンの召喚術とマリーのナックルブローで野党は全滅した。



◇  ◇  ◇ 



フィリノーゲンはカリフの一角、モリイ=ユウキの家を訪ねていた。


「褒美!?てっきりタダ働きと思ってたんだが、気前がいいなぁ!」


「ええ、今回の騒動を収めてくれたのもユウキ殿のお陰ですから。こちらが宝石と宝玉です。是非受け取って下さい」


「おう!ありがとよ!また仕事があったら頼むぜ。」


「こちらこそお願いします。」


 ユウキは懇意こんいの商人に査定を依頼して、金貨200枚を手にすることができた。上機嫌で依頼された仕事…その商会の護衛に付き添った。



◇  ◇  ◇



「ふぅ、なんとかみんな満足してもらったようだ。」


「しかし頭を悩ませただけの事はあるな。よかったよかった。」


「しかし、皆の特徴と喜ぶツボを掴んだ褒美など初だな。まぁ、それはそれで面白かったが」


「うむぅ。中々難しいものだな、次何かあれば何を褒美とすればいいのやら」


「まぁ何も起きないことを祈ろう。ぼくらにできるのはそれだけさ」


ふたりはとりあえず満足して、兄弟揃って安堵のためいきをついた。

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