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召喚した式が強すぎて僕のやることがない  作者: セパさん
狂気の式と伝説の系譜
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継承の儀

 王宮にも匹敵する召喚術師の宮殿、テグレクト邸。その中でも一層豪勢な一室で、ミイラのような老人が青白い光を発しながら眠っていた。既に息絶えている様にも見えるが、時折思い出したかのように深い呼吸を行う。老人の眠るベットの側には魔導陣が設置されている。


 魔導陣は突如強い青光を放ち、同時に老人を包む光も強さを増した、そして…。 


 魔導陣から半透明の少女のような幼い少年が姿を現した。


「はぁ はぁ はぁ はー………、やっとできたか…。しかし今度は童の姿か、限界が近いな。これで最期になるやもしれぬ。」


 伝説の召喚術師テグレクト=ウィリアム、彼は平均寿命60年という王国の中で150年という時を生きていた。いな、どのような手を使ってでも延命をせねばならなかった。自身が父より受け継いだテグレクト=ウィリアムの称号を後生へ伝承していないためだ。


 本来ならば才能のある子孫を弟子にとり、修行を行わせてから継承の儀式に移るのだが、全盛期に東西戦争へ英雄として駆り出され、15年に渡る東王国討伐の旅に出ていたテグレクトはそれができなかった。そして戦争に勝利し、王国へ戻った頃には息子は成人し、まもなく孫も生まれようとしてていた。


 しかしどちらも、とても厳しい召喚術の修行に耐えられる才能を持っていなかった。そして時は流れ待望の才能を持つ曾孫が生まれた、はじめは長兄であるフィリノーゲンに目を付けていたが、その7年後に生まれた次男はテグレクト一族でも類を見ないほどの才能に恵まれていた。


 言葉を覚えると同時に詠唱を覚え、5歳で召喚・還付を習得。テグレクト自身成人…17歳になってようやく習得出来た魔物の同時召喚・憑依を7歳にしてやってのけ、10才で魔物の最高峰とも言われる金色龍王を7体も調伏までしてみせた。あとは継承の儀を行い自身は冥府に旅立つのみと思っていたが、継承の為には姿を現さねばならない。


 死神の調伏や、癒しの女神の息吹さえ操れるテグレクト=ウィリアムの力を持ってしても老いには勝てず、20年前より魔導陣へ自身の精神を召喚を行うことも難儀なんぎになっていた。


「もはや誰かを呼ぶ力も残されていないか…。」


 テグレクトは一室で誰かが訪れるのをひたすら待ち続けていた、そして3時間後。


「おじいさま!お姿を…、お待ちしておりました!」


 現れたのは長兄フィリノーゲン、テグレクトにとっては曾孫にあたる高度な修業に耐えた召喚術師だ。


「ああ、来てくれてよかった。童の姿ですまない。この姿になるのに時間がかかってしまってな。それよりも次期候補…ジュニアを呼んで来てくれたまえ、これより継承の儀に移ろう。」


「次期候補…ジュニアですか、実は弟なのですが。」


 フィリノーゲンはこれまでの流れを大まかに説明した。曾祖父が姿を現さない以上、おそらく最後の試練が終わっていないからに違いないと新魔の調伏に赴いたこと、そして旅だって13日帰ってこないことを……。


「なんと!いや、私の責任だ…。10歳にして金色龍王を調伏までした時点で継承は既に決まっていたのだが…。姿を現すまで時間がかかってしまったのでな。だが困った、私は童の姿を作り上げるまでにこれほど時間がかかるほどに力を失っている。やもすればこれが最期なるかもしれぬ。そうなればテグレクト一族は衰退するのみだ。」


 どうやら自分が現れないことをなにか深読みされてしまい、事態がややこしくなっている事を察したテグレクトは少考して一つの結論を出した。


「フィリノーゲンよ、お主もテグレクト=ウィリアムの称号を継承するにふさわしい才能と能力をもっている。厳しい修行にも耐え既に同時召喚・憑依・還付・調伏や一族の秘伝を身につけているのであろう。今回は特例であるが、お主に47代テグレクト=ウィリアムの継承を行う。」


「そんな!おじいさま、私などまだまだ未熟であります!次期継承者には修行がまだ…。」


「これはテグレクト一族の衰退を防ぐためだ、特例ではあるが精進せよ。継承によって得られるものはなにも名前だけではない。これまで1000年にわたり先人が調伏した式達、能力も継承されることは知っておろう。その力に溺れることなく、より一層の一族の繁栄を。お主ならばできる。」


 曾祖父に押される形でフィリノーゲンの継承の儀は始まった。少年の姿をした伝説の召喚術師は曾孫に手をかざし力の全てを注ぎ込んだ。目映いほどの青い光がフィリノーゲンへと移っていく。


「これで私の役目も終わった。一族の繁栄と貴殿に神の加護を。」


 笑顔でそういい残し少年は姿を消した。


 残されたのは王国の英雄であった老人の屍と、唐突感じたことのない力に戸惑うフィリノーゲンのみであった…。


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