溺れた青年 その後
「よし、これで大丈夫だ。これが寄生花。人の体に寄生して直接栄養をおくる。その口の大きな花に麦粥やすり潰した食事を入れると栄養をこの花から取ることが出来る。…君にもおこなった方法だ。寄生を取るときは口を数分押さえて花が赤くなるまで待つ。すると寄生していた体から少しづつ離れていく。」
「ありがとうございます。これで当施設も発展します!」
僕たちはヒーローリキッドという麻薬に溺れていた青年、現薬物依存者による薬物依存者のための会 会長の依頼で青年の建てた施設に来ていた。
青年の活躍は素晴らしいもので、いままで麻薬ほしさから犯罪に手を染め牢獄にいくか禁断症状からショック死するか食べ物を受け付けないための衰弱死しか道のなかった薬物依存者を見事に更正させていた。
もちろん挫折や失敗もたくさんあったが。青年の両親は感謝を通り越してどのような魔法を使ったのですか?と聞いてくるほどだった。
その活躍が王都の目にも止まりついに王立法人として資金を獲得し、このたびは専属の医師と魔導師を雇って治療の施設を立ち上げることにしたというのだ。
ベッドは6つほど、禁断症状がひどくそれこそショック死か衰弱死する運命にある人をこのベッドに拘束してテグレクト邸で青年自ら体験した治療をしようと考えたという。そして禁断症状による地獄のような期間をあえて味わってもらい〝麻薬なんてもうたくさんだ!〟と思ったところを治療のプログラムに持ち込むという。
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
「あ、マリーさん…で合ってましたよね?治療法について少しご相談がございまして。我々はもちろん医師も魔導師も何分初めての試みですから。どのようにしてショック死を防げるかをご教授いただけますか?実は当施設に連れてこられる親族さんや自ら止めたいと来る方も禁断症状のショック死までは対応できなくて…悔しい思いをしたことは1度や2度ではないのです…」
マリーは青年に魔導師などでもできる自分のおこなった術についてを説明していた。青年は熱心にそれをメモする。体をリラックスさせる魔導や薬、一般的な治癒魔法を併用することなどを伝えている。
「うむぅ、はじめにきたときはどうしょうもないアホウと思っていたがああも変わるとは…。」
アムちゃんが驚き半分にそんなことを口にした。僕も考えは同じだった。
青年はどこまでも熱心にマリーの説明をメモし、フィリノーゲンさんに依頼金を渡し僕たち全員に感謝の気持ちを述べて握手をした。
◇ ◇ ◇
依頼が終わりテグレクト邸に戻った夜、僕はマリーと自室で本を読んでいた。
「ねぇマリー、はじめにあのお兄さんが来た時術に耐えられる体でもないし完全に良くなる可能性もなくて、本来の性格に近づく可能性がせいぜい20%って言ってたけど…すごい変わりようだね」
『 彼の力 地獄を見て 薬の孤独を仲間と分かち合い 彼は変わった 』
「でも、それを他の人にもってのも凄いね。なんだか尊敬までしちゃうよ」
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
『 薬の力は強烈 一生常につきまとう 甘くはない 』
『 でも 』
『 彼の今後が 少し 楽しみ 』
マリーはそう言って最近青年の出版した本『溺れた自分~薬物からの更正~』を読んでいた。




