母校への帰還
「うわぁ、凄い立派なお屋敷。あ、初めましてシオン君の同級生でレイチド=キャンドネストと申します。風の精霊を式しております。」
屋敷の入り口にいたのは停学前、実習を共にした同級生レイチドだった。
「停学したシオン君が心配でさぁ、てっきりあの事件以来召喚術師が嫌になったのかと思ってたんだけど、まさかあのテグレクトの一族と修行してるなんて流石だね!」
たしかに停学の理由は話していない。周りからすれば、僕の急な停学は不思議に思うことだろう。
「まあ外でお話しもなんですから、どうぞ中へお入りください。」
フィリノーゲンさんはあくまで客人としてレイチドをもてなし、客室へ案内した。
客室で遠慮なくお茶やお菓子をたべるレイチドに学校の様子を聞いた。
「それが実習ができなくなってから教師も天手古舞い、このままだとまた3期をやり直し!なんて話しもでてるわ!冗談じゃないわよ2回も留年なんて洒落にならないし、このままどこかに就職しようかなとも思ってたの。それにアムちゃんも急にいなくなったじゃない?マレインったら〝ヤツとはまだ決着がついてない〟だの大騒ぎ!正体を知ったら驚くでしょうねぇ。」
そう言ってアムちゃん、第48代テグレクト=ウィリアムを見る。そして一緒に話しを聴いていたアムちゃんも答える。
「へぇ、あの生意気な男まだ私に未練があるの。実力の差を見せつけてやろうかなぁニヒヒ」
「あれ?アムちゃ…ジュニア君は学校での記憶あるの?」
「記憶はないわ、ただ過去を映す鏡でみただけ。あんたらにアムちゃんって呼ばれてる姿も、だだっ子みたいになってる姿も、あんたらをお兄ちゃん呼ばわりしてたのも全部みたわ。今生の恥とはこのことね」
アムちゃんは顔を恥ずかしさからか赤く染めそう言った。レイチドは様子が変わっているアムちゃんに驚いているようだった。
「アムちゃんってあんなに大人びた性格だったの?それにテグレクト=ウィリアムの継承者だったなんて…通りで学生じゃ手足もでないわけね。」
「まぁ私自身学校での記憶がないからそう言われてもね…」
そしてアムちゃんは何かを考えている様子で、瞬時に結論がでたのかガルーダを召喚した。
「決めた!学校にいきましょう!シオンも母校がどうなってるか気になるでしょ?私もあの生意気なマレインとかいう男に力の差を見せてあげるわ」
マリーと同じくらい一度決めたら意見を曲げないアムちゃんに連れられ僕たちは母校へ戻ることとなった。
◇ ◇ ◇
ガルーダには僕・アムちゃん・レイチド・マリーの4人が乗り、フィリノーゲンさんは自分で召喚した風龍に乗って学校を目指す。
「マレインってやつ、〝滅びの龍〟なんて召喚したもんだから調子に乗っちゃったのね。確かに神話に登場するドラゴンだけど、普通のドラゴンよりブレスの範囲が広いだけの中級の魔物。〝滅びの〟だの〝神話に出て来る〟って名目で変に祭り上げられてるだけなのにね。だいたい模擬試合でマリーにも負けてるのにあの傲慢な態度はなんなの?あげく私を〝こんなガキとペアなんて邪魔だ〟なんて言って」
アムちゃんはマレインに対しそんな辛辣なことを言う。恐らく実習前のやりとりをみたのだろうその場では僕も冷や汗をかいた発言だったが、正気を取り戻したアムちゃんが聞けば腹が立つと言ったらないことだろう。
「 それになんでか知らないけどマレインって名前聞いたら直ぐに顔が浮かんだわ、生意気な顔したあの鴉天狗の鼻も翼ももぎ取ってやるんだから」
そしてガルーダに乗せられた僕たちは半刻とせず学校へ到着した。一応3期生4期生以外は授業中であり、いきなりの神鳥をひきつれた僕たちを何者かと窓越しに騒いでいた。期待を胸に入学した生徒たちだいきなりガルーダほどの神鳥が校庭に現れたらそれは驚くだろう。
「さて、それじゃあまずマレインがつけたがってる〝決着〟とやらをつけてあげましょう。」
そう言ってアムちゃんはニヒヒと子供らしく笑った。




