124話 バレる
そうやって回った各火山で集めた記録を元に、一室を借りて議論を重ねる調査隊の学者陣とゴスタリアの学者陣。その中には竜崎とバルスタインも含まれていた。
「あのサラマンドの状態からして―」
「過去の記録はこのようになっていて―」
「やはりイブリート様の介入が―」
さくらとメストも端で傍聴させて貰っているが、聞く限りではどうやら竜崎の思惑通りに進んでいるようである。まずは第一段階クリアといったとこか。
とはいえ、朝早くから竜に乗り火山を幾つも回っただけあって少々疲れた2人。ドワーフの国とは違う、寧ろ温暖な心地よい気温と先程昼食として美味しい食事を頂いたことも相まってほんの少しばかり瞼が下がってくるが、さくらは眠らないようにツボを押して堪える。椅子に座り話を聞く、気分は昼休み後一発目の授業である。一方のメストは食い入るようにバルスタインを眺めることで眠気を打ち消していた。
その様子に気づいたバルスタイン。以前学園にもついてきたあの従者を呼び寄せ何かを伝える。了解したその従者はさくら達のところに向かってきた。
「宜しければ今のうちに騎士団をご案内いたしましょうか?」
「え!?」
突然の提案に眠気が吹っ飛ぶさくら。メストが多少慌てたように応対する。
「いえ、メリッサ殿。折角のご提案ですが、待ちたいと思います」
「私の名前をご存知でしたか!」
従者は嬉しそうに一つ咳払い、その名を名乗った。
「改めまして。私はゴスタリア騎士団団長補佐を務めておりますメリッサ・テーゼと申します。以後お見知りおきを」
ガシャンと敬礼をする彼女にさくら達も自己紹介を返す。最もさくらは何度か会っており面識自体はあるのだが、驚くべきはメストが彼女の名を知っていたことだ。バルスタインが好きな彼女だ、調べでもしたのだろうか。
と、今度はメリッサが驚くべき発言をした。
「やはり貴方がメストさんでしたか、お話はかねがね」
「僕のことを…!?」
さくら以上に驚いているメスト。それを見て、メリッサはにこりと顔を綻ばせた。
「はい、リュウザキ様のお話を団長経由で色々とお聞きしております。ところで…」
そこで言葉を切り、彼女はメストに顔を寄せる。そして周囲を憚るような声で謎の問いを投げかけた。
「貴方からは私と同類の気配を感じるのですが…合ってます?」
チラチラとバルスタインへと視線を向けるメリッサ。メストはそれで何かを察したようで…
「これを…」
彼女がごそごそと取り出したのは、なんと先日竜崎から貰ったバルスタインの絵の原本だった。持ってきたらしい。
「―!」
それを見て思わず息を呑むメリッサ。次にはメストの手をガシッと握りしめた。
「やはり…!団長からお聞きしたお話で薄々そうじゃないかと思っていたんです…!」
「僕も、お会いできて光栄です!」
まるでネット上で仲良くなった人とリアルであった際のような反応、そして先程の行動。もしやこれって…
憶測を巡らすさくらに気づかず、メストはメリッサに対して謝罪する。
「すみませんメリッサ殿。折角気を遣って頂きましたのに」
「いえいえ。折角ならばバルスタイン様に案内してほしいですものね! というかそんなに固くならなくて良いですよ。なにせ私達はあの方を愛する者同士なのですから!」
完全にフランクとなったメリッサ。さくらは合点がいった。いや、いってしまった。同類とはすなわち、バルスタインのファンであるということ。かつてバルスタインが学園に居た時には彼女のファンが数多く存在したとは聞いていたが、その美貌とカリスマは今も健在らしい。
「あ、でもこんな騒いでしまったら…」
思わず昂ってしまっていたことに気づいたメストは慌てて口に手を置く。バルスタインにこのことがバレていないか不安になったようだ。だが、メリッサは彼女を優しく宥めた。
「大丈夫ですよ。バルスタイン様は少し天然なところがありまして、お気づきになっていませんから。またそこが実にお可愛らしいんですけど…。別室で少しお話をいたしませんか?」
「是非!」
同好の士を見つけ、テンションがあがりっぱの彼女達。さくらも当然誘われたが、謹んで辞退することにした。ファン同士の邪魔をしてはいけないと思ったし、話に入れる気もしなかったのだ。確かにさくらとしてもバルスタインは理想の女性騎士だと感じるが、あそこまでは…。
実に楽しそうに別室へ向かう2人を見送り、座り直すさくら。すると、端の方でひそひそと話している兵達の姿が目に入った。こちらを指さし、迷うような仕草を見せている。一体何なんだろうか。そう訝しんでいると、そのうち一人が代表してさくらに話しかけてきた。
「唐突に失礼します。リュウザキ様のお弟子さんですよね」
「は、はい…」
戸惑いつつも答えるさくらに、兵は単刀直入に問いかけを行った。
「以前、王宮にいらしておりませんでしたか?」




