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121話 図書館で本探し

ということで翌日。さくら達を含むクエスト受注者は学園横の図書館にある広めの一室に集合していた。


「おぉ、沢山集まってくれた」

「ありがたい。猫の手も借りたいほどだったんだ」


そこにいたのは、多くの大人達。その服装からほとんどがゴスタリア所属の魔術士や騎士、兵隊達だと窺える。まその他にも学院に所属する研究者達や、調査隊らしき人々、グレミリオやメルティ―ソンを含む学園の職員も見受けられた。


普通の図書館ならば既に充分すぎるほどの人手。だがこの図書館の規模は1つの街ほどである。さらに追加の人員が必要だったということは彼らの安堵の息でよくわかった。



「全員集まった?名簿と照らし合わせるから返事をしていってね」


生徒達の指揮は竜崎が取るようで、クエスト受注時に作られた参加者名簿で出席が取られる。その人数100人を優に超えていた。



「バルスタイン団長は…いらっしゃらないか…」

きょろきょろと憧れの人を探すのはメスト。彼女もまた受注していたようである。


「メスト先輩も参加していたんですね」


さくらにそう聞かれ、メストは恥ずかしそうにゴホンと咳払いした。

「調査への同行許可を貰った以上、事前調査にも参加しないわけにはいかないからね」


「私としては2人共ゆっくり体を休めて欲しかったんだけどな。代表戦から数日しか経ってないんだから」

竜崎が若干渋めな表情を浮かべるが、ニアロンはそれを一笑に付した。


―まあ本探しで変な怪我はしないだろ。大目に見てやれ―




「さて、今回の目的は先日ゴスタリアに現れた、上位精霊を生み出したと目されている謎の火球を吐く竜について、関係がありそうな文献を探し出すことです。目撃者の証言をまとめた資料を作ってもらったから活用してください。あと新聞記事や館内地図も合わせて配ります」


そう全体に呼びかけた竜崎が渡してきた数枚の紙。その1番上に乗っているのはゴスタリア側が作った資料らしいが…。


「なにこれ…!」


一目見て驚くさくら。それには理由があった。綺麗な字で証言が纏められている紙のその端に、その内容から推測されたであろうドラゴンの絵がデフォルメされて描かれていたのだ。


「可愛い…!」


元の世界で流行ったら確実にスタンプやキーホルダーになりそうなほどに可愛らしい。しかも、「僕を探してね!」と火球を模した吹き出しまでつけられている。


「竜崎さん、これって…」


「ああ、この資料バルスタインが作ってくれたんだよ。絵を描いたのも彼女だって」


―あいつ写実的に描こうと苦心していたからな、清人がアドバイスしたらこんなのを描いてきた。愛らしいものだ―


「マスコットに出来そうですね」


「お、いいかもそれ。後でバルスタインに打診してみよう」



周囲でも可愛い可愛いと感想が飛び交う中、わなわなと身を震わす人物が1人。メストである。どうしたんだろうとさくらが心配しているところに、竜崎がとあることを聞く。


「そうだメスト。これの原本いる?」


「是非!!」


彼女はものすごい勢いで食いついた。





「それじゃ他の利用者に迷惑をかけないようにね」


―良い本を持ってきた奴には報酬が上乗せされるとよ―


それを聞いて一斉に館内に散っていく生徒達。さくらはネリー、モカ、アイナ、そしてホクホク顔のメストを含んだ5人グループで行動することに。


とはいえ近場は既に調べている子がおり、さくら達は少々遠くに向かう。しばし階段を上り下り、通路を進む。


「まさかあの凛々しい団長殿がこんな可愛らしい絵を描くとは…」


ギャップ萌えを感じているのだろうか、貰った原本を眺めては終始そんなことを言いながらにやついているメスト。その様子を若干の呆れ笑いながら見ていたアイナがさくらに教えてくれる。


「メスト先輩、バルスタイン団長さんのこととなると人が変わっちゃうんだよ」


確かに最初会った時も、代表戦で激励を貰った時も、バルスタインが現れるといつものカッコいい彼女は消え去っていた。やっぱりアイドルグループを前にしたファンの反応である。




「じゃあまずはここで探そう!」


ネリー指揮の元、とある一室に入るさくら達。どうやら様々な生物についての本が集まっているようだ。


「よし、手分けしようか。上の方の本は教えてくれたら僕がとるよ」


いつの間にか元の調子に戻っているメスト。とはいえ先程貰ったバルスタインお手製の絵は大切に仕舞われていた。




「中々無いねー」


メストが翼と浮遊魔術を活かして上の方、ネリー達は一人ずつに分かれて本棚を漁っていく。順調に本探しは進むが、件の竜についての手がかりはない。本を引き出しては捲り、関係ない内容に溜息をつきながら戻すを繰り返している一行。最も、さくらだけは元の世界には全く存在しない生物についてのページを見るたびに手が止まってしまうため、あまり進んでいないのだが。


「さくらさん、この辺は終わったかい?」


ふわりと降りてきたメストに後方から声をかけられ、驚いた彼女は思わず読んでいた本をパタンと閉じてしまう。


「え!あ、えっと…まだです…」


つい読み耽っていたことに気づき申し訳なさそうにするさくらを察し、メストは優しく宥めた。


「元居た世界にはない本ばかりだものね。僕がやっておくから読んでいていいよ」


「い、いえ!やります!」


そんな気遣いをしてもらうわけにはいかない、お金貰えるのだし。さくらはふるふると頭を振り、集中する。そうだ、正体である自分としては、尤もらしい嘘情報を見つけなければいけないのだ。





「とりあえずここはこんなものかな?」


それっぽい記述が書かれた本が数冊集まり、一息つくさくら達。しかし…。


「後片付けが面倒そうですね…」


ただでさえ入り組む館内。そんな中から各生徒達が本を抜き取ってくるのだ。それを片付ける司書の人々は大変だろう。そう思うさくらだったが、メストはそれを否定した。


「それは簡単に済むみたいだよ」


「え?」


さくらの頭に疑問符が浮かぶ中、ネリーは集めた本を抱え、部屋を出て行こうとする。


「次にいこう!」


「あ、ちょっと待ってネリーちゃん!」


アイナが呼び止める声間に合わず、外に足を一歩踏み出すネリー。その時だった。


ガタガタガタ…バッ!


なんと、彼女が抱えていた本が一斉に動き出したのだ。


「あっ!」


するりとネリーの手を離れた本達はすうっと空中を移動、本棚の元の位置にピタリと収まった。


「えぇ…」


唖然とするさくら。その様子をクスリと笑いながらメストは解説をしてくれた。


「この図書館には各部屋に結界が張られているんだ。本に付与された魔術を解除しないで部屋を出ようとすると今みたいになるし、貸出カウンターを通さなければ外に持ち出すことすらできないんだ。片付けの簡略化と盗難防止のために賢者様が作り出した魔術なんだって」



うっかりうっかりと照れ笑いをするネリーに対して、もーっと口を尖らすアイナ。一方モカはその間に戻っていった本を再度抜き取り、入口付近の壁に描かれた魔法陣に押し当てる。それはふわっと輝き、次いで本も少し輝いた。どうやらそれで解除が済んだらしい。


「閉館時間になると、特別な許可を得てない本は自動で元の本棚に戻るんだ。その様子は圧巻だよ」


さくらは何百何千もの本が一斉に動き出し、館内を飛び交う様を想像する。それは是非見てみたい。





その後も他の部屋を幾つか巡り、参考になりそうなものを選び出したさくら達。とりあえず竜崎達がいる場所に戻ろうとするが…。


「あれ?どっちだっけ?」


どうやら迷ってしまったらしい。





「今いる場所がここだから…」


「え?ここじゃないっけ?」


「いや、この部屋の番号からしてここだね」


「えっとじゃあこの道を…」


「右でしょ」


「まっすぐじゃない?」

全員で地図とにらめっこし、帰り道を探す。増改築を繰り返した図書館だけあって、魔境のように複雑。その分地図も大きく、緻密。全く読み解けない。仕方なしにメストはある提案をする。


「あれ使おうか」


「そうしましょう」


アイナの返答を聞き、メストは部屋の壁、魔法陣下に備え付けられた箱の扉を開ける。よいしょと引きずりだしてきたのは…


「ゴーレムですか?」


さくらが推察した通り、それは人の膝ほどもない4足歩行型のゴーレムである。メストはそれを部屋の入口を出たところにおくと、中心部分に描かれた魔法陣に触れた。


ヴーーン ガシャン ガシャン


少し駆動音が聞こえた後、そのゴーレムは一歩一歩動き出す。


「さ、ついていこう」

メストの号令に合わせ、ネリー達もぞろぞろとついていく。よく状況が飲み込めないさくらは混乱していた。


「え、え?これなんですか?」


「道案内用のゴーレムなんだ。起動すると大通りまで勝手に道案内をしてくれる代物でね。これを導入してから館内迷子の数が急激に減ったらしいよ」


「これは賢者様の魔術を元にした、イヴ先生と『発明家』ソフィアさんの合作なんだって。それまでは定期的に館内を見回る司書の人を見つけない限り、自力でなんとかするしかなかったみたい」


メストとモカにそう説明され、思わず竦むさくら。それは恐ろしい。ところで…。


「なんかこれ、見たことあるような…」

大きさや形は違えど、こんなロボット元の世界にもあった気がする。上手く思い出せないさくらであった。




何はともあれ、本を抱えてついていくことに。細かな道を右へ左へ進み、時には階段を器用に上り下りするゴーレムに見惚れながら後を追い続けると、それはとある地点でピタリと止まった。


「大通りに出られたみたいだ」


確かにその先は広めの通路。案内はここで終了ということらしい。


「ほんとだ…でもこの子はどうするんです?」


沈黙するゴーレムを指さすさくら。それにもまた、メストが答えた。


「心配いらないさ」


ヴーーン ガシャ ガシャ


と、ゴーレムはその場で半回転。ガシャンガシャンと元来た道を戻っていく。


「勝手に自分がいた部屋まで戻っていくんだ」


なんだそれ、勝手に充電しに戻るお掃除ロボットみたいだ。魔術すごい、妙なところでそんなことを再度実感するさくらであった。




「やっとついた~」

そこまでつけば後は楽。無事に帰ってくることができた。既に先程の部屋には他の生徒が持ってきた本が山と積まれており、魔術士達はそれを見ながらああでもないこうでもないと資料を作成していた。


「あら、ありがとさくらちゃん達。じゃあ該当ページ付近にこの付箋を貼ってもらっていいかしら」


グレミリオが手渡す付箋を受け取り、ぺたぺたと作業をする。と、さくらがあることに気づいた。


「あれ?竜崎さんは?」


どこを見渡しても竜崎の姿がない。てっきり彼自身も本を探しに出向いているのかと思いきや、


「そういえば…。さっきまでいたのに」


グレミリオの口ぶりを聞く限り、そうではなさそうである。はてな、と首を傾げていると。


「リュウザキ先生は少し前にふらりと出ていかれましたよ」


と魔術士の1人が報告をする。トイレか何かかなとさくらが思っていると、グレミリオはあちゃーと頭を掻いた。


「あの子の悪い癖が出たわね…」

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