115話 代表戦⑭
「クラウスくん!」
一騎打ちの邪魔にならないよう距離をとっていたのが仇となった。さくら達が駆け付けたときには時すでに遅し。力を使い果たしていた影響もあり、抵抗すらできなかったクラウスはその場にパタリと倒れた。
「いったい誰が…」
「彼らみたいだ」
メストが示した先に現れたのは試合開幕前に顔を合わせた、魔界代表の一チーム。そう、かつて竜崎と戦った精霊術士ノルヴァ・ノイモントを師と仰ぐ魔族達だった。既に戦っているチームは減り、メンバー3人とも残っている代表達は限りなく少ない中、彼らは全員生き残っていた。
「ごめんなさい、邪魔をしてしまって。ですが決着はつきましたし、彼は恐らくこの先戦うのは危険なほどに憔悴しています。勝手ながらゼッケンを貰いました」
代表して、1人がそう説明する。そして、宣戦布告を行った。
「今度は私達と戦ってください」
「さっきの礼は、ここで返す!」
「協力させて!」
ゴスタリアの2人が支援しようと申し出てくれるが―。
「邪魔だよ」
「下がっていてください」
控えていた魔族の2人が複数の精霊を召喚。それを一気に動かした。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
ボッ!ドッ!バス!ドン!
さくら達が庇う暇も無く、あっという間に倒されてしまった。
「うそ…!」
いくら先の戦いで弱っていたとはいえ、ゴスタリアの代表選手2人を一瞬で片付けた彼らの強さにさくらは息をのむ。
「どうやら本気で挑まないと勝てなさそうだね」
「ですね…!」
メストとさくらも精霊を呼べるだけ呼び出し向かい合う。彼女達の周りは精霊達によってカラフルに彩られた。
「いきます、さくらさんメストさん!」
相手の精霊が打ち出す魔術をこちらの精霊の魔術で打ち消す。回り込んできた精霊を対処するために近くの精霊に指示をだし迎撃してもらう。彼らが対処しきれない魔術は自分の武器で弾いていく…。目まぐるしく進む戦闘にさくらは必死に食らいついていく。だがこのままでは物量差で押し切られる。メストもそれを理解していた。
「なんとか1人を削りたいな…さくらさん、右の子を狙うから他二人への牽制を任せていいかい?」
「はい!」
タッと走る彼女に合わせ、さくらは精霊による攻撃を撃ちだす。メストもまた、自身の精霊に飛んでくる魔術を弾いてもらいながら接近する。竜崎に鍛え上げられたこともあり、彼女の精霊の扱い方は一級品。たちまち肉薄した。
「くっ…流石はリュウザキ様の…!」
「貰ったよ!」
本人の足掻きを上手く捌き、剣を突き立てようとするが―。
ガツッ!!
「なっ…!」
ゼッケンへと突き刺さるはずの剣先は何かに弾かれる。メストが目を凝らすと、ゼッケンの前には土精霊達によって壁が張られていた。
「へぇ。障壁魔術の代わりってことかい?」
「その通りです。これならば精霊術の延長線でできますしね」
他の魔族達から狙い撃ちにされないよう、すぐにその場から離れたメストはさくらにそのことを報告する。
「そんな方法が…!」
その発想はなかった。メストも脱帽している。
「凄いね。道理で全員生き残ってきたわけだ」
恐らく彼らはそうやって戦い抜いてきたのだろう。いくら追い詰めたとしても、ゼッケンがああも阻まれてしまったら攻撃が通らない。これでは誰も彼らを倒せなかったわけだ。
「しかしどうしようか。さっきの感触だと、かなり力を入れなければ貫通しなさそうだな…」
策を練るメストの横でさくらも考える。土壁を貫通させるには…
「ドリル…?あっ!エアスト村での…!メスト先輩!」
「いけるかい?」
メストは精霊の相手を1人でこなしながら、何かを作り出しているさくらに問う。丁度出来上がったさくらは大きく頷いた。
「はい、打てます!」
彼女の手の中には、一つの魔術テニスボール。しかしながらただの魔力球ではない。各精霊の力、それが入り混じり虹色に渦を巻いている。
以前エアスト村で、竜崎はトンネルを製作する際に精霊の力で形成したドリルで穴を掘った。さくらはそれを真似てみたのだ。残念ながら彼ほどうまく作ることは出来ず、ドリル状にすることは出来なかった。だがそれでも、出来る限りあの時聞いた通りに作り上げた。
「風の力が回転を司り、水の力と土の力で削る。更に火の力で掘った際の土を瞬時に固め壁替わりにする…。上手くいって!」
「『青き薔薇よ、捕えよ!』」
メストの詠唱により、1人が縛り上げられる。それを確認し、さくらは思いっきり打ち出した。
「えーいっ!」
パコンッ!
飛んでいく特製ボールは見事に相手の胸を捉える。
ゴスッ!
「うっ…だけどこの防御壁を打ち破れるわけが…!」
ジジジジジジ…!
「えっ…?」
ギャリギャリギャリギャリ…!
「ひっ…!」
土を掘りながらゼッケンへと突き進むボール。土精霊達が慌てて再形成しようとするが、穴の周囲は火の力によって固められ上手く直せない。そうこうしている間にボールは貫通し…
ドグッ!
ゼッケンに突き刺さった。
「嘘でしょ…あれを破るの…!?」
驚きを隠せない魔族チーム。その隙を狙ってメストが動いた。周囲の精霊を次々と打ち払ったのだ。
「あっ…!」
気づいた時にはもう遅い。彼らを守る精霊達は全ていなくなり、丸裸。そこにさくらとメストが武器を向けている状態に。
絶体絶命のピンチ。魔族の2人は焦っていた。
「あれを試すしかない…」
「だけど、あれはノルヴァ先輩から止めろって…」
「勝つにはもうこれしかないよ!」
相手の1人が急ぎ取り出したのは、厚手の魔導書と、謎の機構が先端についた杖。それは―。
「また限界突破機構!?」




