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104話 代表戦③

「今年の学園は中々腕が立ちますな」


「素晴らしいもので。自国の生徒がやられたのも気づかぬほどに見入ってしまいました」


「おぉ…薔薇の花が風に溶けていく…。美しい…」


思わぬ大技を見て、各国の観客はそう褒めたたえる。それはさくら達の師も例外ではなかった。



「あの剣技、幾度か見せたことがあるだけでしたのに。それだけで模倣するとは…。クラウスくん、恐るべき才ですな!」


―メストの奴、茨をあんな風に使うとは。しかも魔力消費もかなり抑えてるな。やるじゃないか―


「さくらさんもいいね。取り囲む全員に棘をぶつけるために風の向きをしっかり操っていた。魔術を習い始めてすぐとは思えないな」


ジョージ、ニアロンと竜崎、それぞれ出来の良い弟子達の動きに唸っていた。



残念ながらそれらの声は本人達には届いていない。だが作戦が上手くいき、彼女達は充分に勢いづいていた。次に目をつけたのは、マーマン族3人で構成されたチーム。『海浜国家スキュルビィ』の代表達である。相手もさくら達が迫ってくるのを見止め、魔術の詠唱を始めた。


「水壁!」


突如、間に水の膜が出来る。さくら達が思わず足を止めてしまうと―。



バシャァン!!


次の瞬間、その壁を突き破ってきたのは相手側の3人。魚の力を宿しているだけあって、水を操るのが得意と見える。水飛沫に怯みながらもなんとか応戦し、弾くことができた。そのまま各一人ずつを相手することに。



「『水の槍』!」


さくらを相手していた子がそう詠唱すると、持っていた棍の先に水が集まり、トライデントの様な形状を作り出す。


「とぉっ!」


ビュッビュッと風を斬る槍捌きに距離が詰められず、さくらは防戦一方。ラケットにつけてもらった障壁でゼッケンに攻撃が当たらないようにずらしていくが、刃から零れ出る水が顔や服を濡らしていき少しずつ体が重くなっていく。


このままではマズい…。なんとかしないと。横をちらりと見るとクラウスもメストもそれぞれの相手と剣を交えている。自分の力でなんとかするしかない。



「精霊達、お願い!」


さくらは精霊を召喚し、数的優位を作る。が、急いでいたため呼び出せたのは妖精のような中位精霊ではなく、水や火の固まりである下位精霊。意志持たぬ彼らを操りながら敵の攻撃を躱すのは至難の業、戦況はあまり変わらなかった。


「雷精霊!」


打開策としてバリバリと鳴る雷の下位精霊を召喚、仕向ける。水は電気を通すはず…!だが…。


「甘いよ!そんなの予測済み!」


スパンッ!


「えっ!」


無常にも打ち払われ、精霊は消滅してしまった。


「清き水の魔術だもの、雷は通らないよ!それに絶縁体も仕込んであるんだから!」


対策は万全のようだ。どうするか。せめてあの危ない槍先だけでも無効化できれば…。



「なら…。木を隠すなら森の中、水を隠すならもっと多い水の中!水精霊!」


さくらは全ての精霊を仕舞いこみ、中位精霊を一体召喚する。


「わっ、すごい…! でも一体だけじゃ!」


相手は少し驚いたものの、うざったかった精霊達が消えたことを好機と捉え、すぐに武器を構え直す。そのままさくらのゼッケンに向けて突きを放ってきた。


「食らえ!」


だがそれは、さくらの思惑通りだった。




「今!」


合図を受け、水精霊は迫るトライデントの先に移動する。そして…。


グサッ!


見事、貫かれた。ように思えた。


「…ん?あれ!?」


いや、違う。精霊は突き刺されてなんていなかった。貫かれたのは精霊が出した水の固まり。困惑するマーマン族の子に対して、さくらは精霊に指示をだす。


「そのまま大きくして!」


精霊は力を注ぐ。水の固まりはどんどんと大きくなり、槍先は綺麗に丸く包まれた。


「うそ…! うわぁ!」



大きめのボールがついたたんぽ槍のような形状へと変貌した元トライデントは、水の量が増えた分重くなっていた。そのせいで槍先は重力に従い地面へと真っ逆さま。当然持ち主もそれに引っ張られ、あわや転びかけた。


慌てて水刃を解除するが、さくらは再形成させる隙を与えず、精霊を再度召喚する。


「火精霊!」


ボウッ!


「熱いっ!」


肌の鱗を乾かされ、魔術を練る集中力すら削がれたマーマン族の子は追い詰められていく。形勢逆転。あと少しで仕留められる…!



ドゴッ!


「ぐっ…!」


見ると、メストが自身の相手に止めを刺していた。残りはさくらとクラウスが相手している2人。しかもさくらの方は決着がつきかけである。


「メスト先輩はクラウスくんのほうに!」


「わかった!」


2対1の状況となり、苦戦気味だったクラウスのほうも持ち直す。勝てる!さくらがそう思った時だった。



シャアアアアアア…


さくらとマーマン族の子の間の地面を何かが駆け抜けていく。


思わずそれを目で追ってしまう2人。正体は何かの魔術らしく、少し光りながらそのまま進み、クラウス達の足元にたどり着くと…。


ポコッ


地面がほんの少しだけ盛り上がった。それはまるでスイッチのような…。ん?スイッチ?


「―!メスト先輩、クラウスくん!足元!避けて!」


慌ててさくらは叫ぶ。


「―!」


メストはタンッとその場で身をひるがえし、すぐ横に着地する。だが、クラウスは…。


カチッ


思いっきり、踏み抜いた。


ズボォ!


「わあっ!!」


仕掛けられていたのは落とし穴。哀れクラウスは腰まですっぽり、上半身だけ外に出たままというなんとも阿保らしい格好に。それをチャンスとスキュルビィ代表は一旦退避しようとする。


「逃がさない!」


捕縛魔術を詠唱するメスト。だが、それと同時に―。


ヒュルルルル…ボムッ!


「わっ!なんだ!?煙幕!?」


モクモクと視界を覆う白い煙。魔法陣の位置設定を行えず、捕縛魔術は空振りに終わってしまった。


「ゲホゲホ…!」


咳き込む彼女達の元に、誰かが突っ込んでくる。急いで武器を胸前に置きゼッケンを守るさくら。


ガァアアン…!


「いっ…!」


ハンマーのような武器で叩きつけられ、ビリビリと手が痺れる。力強さは先程のマーマン族の比ではない。オーガ族の馬鹿力並みである。


思わず武器を弾き飛ばされそうになったのを堪え、風精霊を召喚。急いで指示をする。


「煙を吹き飛ばして!」


ブワッと風を起こし、視界を晴らす。さくら達と相対していたのは、ドワーフ族の面々だった。


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