おカネを知ればデフレ大好き財政破綻論のウソがわかる
現在、我が国は金融緩和政策をしておりますが、思ったほど効果を上げておりません。
当初のアベノミクスの予定通りに国債発行により財政出動が必要なのではという意見がある中、
よく聞くのが、国の借金が~、国債を発行すると金利が上がって売り出される~また金利が上がる~そして返済できなくなる~という主張。首相が日銀に国債を引き受けさせたらええやんと言えば、そんな事すればハイパーインフレになる~と来る。
政府が発行した国債を日銀が直接買い取ることは、基本的に行われていない。これは考えれば当たり前で、日銀は日本政府の子会社であり、自分の借金を自分の中でたらい回しにしているようなものだからだ。システム的には政府が自分でおカネを発行しているのと何も変わらない動きが起こる。つまり政府がおカネを発行すればハイパーインフレになるという主張だ。これらは正しいのか?
国の借金1000兆円が~などの財政破綻論に対する最終回答
『個人の債務は返済すべきだが、国の債務は返済の必要がない』
おい、何言ってんだアンタ!? と思う人が多いと思う。それは普通の反応だ。
ここに至るロジックは簡単な物で無く、また常識的なものでないからだ。
そこに至る根源的な問いとは『そもそもおカネとは何か?』である。
おカネを発行しているのは誰か、日本には2種類の通貨制度がある
①「信用通貨制度」・・・一万円札など、日本銀行が発行する日本銀行券
②「政府通貨制度」・・・500円玉など、日本国が発行する貨幣
なぜ2種類あるのか、貨幣と銀行券は歴史的に別の起源から生まれたからである。
これこそがおカネの本質にかかわる重要な違いである。
政府通貨制度の歴史はとても古い。歴史的な意味において、貨幣とは銀貨の事である。有力者はおカネを鋳造する事が出来る。ここで発行されたおカネはまず有力者のサイフに入り、何かを買う事によって市場に放出される。つまり有力者の丸儲けである。コレを貨幣発行益
シニョレッジ
と呼ぶ。勿論、貨幣を作るためには銀などを用意しなければならないが、銀の量=通貨の値段でないので差額が生じるのだ。
では銀の価値が担保している以外の価値は何なのか? その貨幣が流通している空間の総生産能力と、その空間を支配者が維持できるかである。よく貨幣発行すれば過剰なインフレが起きると主張に中世の貨幣事情が出されるが、支配者が脆弱で生産力も低い時代の話で、戦争でそれらが容易く吹っ飛ぶ時代、そして功労者の報酬に『通貨発行権』を出し回っていた時代だという事を無視した主張である。現に江戸時代になると含有貴金属の少ない貨幣と多い貴金属が同じように流通している。支配者が強く生産能力が安定した社会では悪貨は良貨を駆逐しないのである。
さて「政府通貨制度」を説明したので「信用通貨制度」がどのように発生していったか説明していく。
「信用通貨制度」の前提である銀行券はふたつの起源で発生している。為替業と金庫業である。
時代が進んでくると、貨幣が世の中に普及して「カネ持ち」が生まれてくる。そうなるとそれを狙って家に押し入る輩が出てくる。心配なので、頑丈な金庫を持つ人間に預かってもらおう。大量の貨幣を持ち歩くのは大変だし物騒だ。現地で貨幣と交換できる信用証を発行しよう。これが銀行券の起源である。やがて為替業と金庫業は統合されて銀行業になってゆく。重たい貨幣は金庫に入れられ、預かり証である銀行券が通貨のように使われてゆく。金庫の貴金属と交換できる事を前提に発行される銀行券。金本位制と呼ばれる制度の誕生である。だが、銀行の人間はやがてある事実に気づく。
貴金属より銀行券で持ちたがる人間が多いのだから、金庫の中身以上に銀行券を発行しても誰も困らないんじゃないか? そうしてなんの裏付けもない銀行券が世に溢れた時代があった。うまくいっている間は良いがちょっとしたことで不渡りをだして銀行が潰れた。世の中は銀行に担保を確保する事を求めたが、世に流通するおカネは金の量よりも多い。おカネに金が付属していないとなると、ちょっとした大口取引で国内からおカネが無くなるという事態になってしまう。金のインゴットに変わる担保が必要になった。
お待たせしました、本日の主役「信用通貨制度」の誕生です。
はじめに『経済規模に合わせておカネの量を調節しなければならない事』を抑えなければなりません。現代の通貨量を中世に持ち込めば100%ハイパーインフレーションになります。また中世の貨幣量で現代社会を回さなければならないとなればハイパーデフレになり、コーラの蓋で買い物する羽目になるでしょう。
そして『おカネの価値とは集団幻想であり、はじめからズルい存在である事』を知る必要があります。
では日本銀行券が何処からやって来るのか説明します。
①発行された国債を銀行が購入する。政府は”銀行”の日銀当座預金残高を「借りる」事で代金を払う
②政府は財政出動の際に、請負企業に政府小切手で代金を支払う
③企業は政府小切手を銀行に持ち込み、おカネに換える
④銀行は、相当する金額を”企業の預金口座に記帳”すると同時に、代金を日銀に依頼
⑤日銀は「政府保有の日銀当座預金」の該当額を「銀行保有の日銀当座預金」に振り替える
※この時点で新たな民間預金が増え、マネーストックが拡大する。
⑥銀行は、戻ってきた日銀当座預金で、再び国債を購入することができる
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注目すべきは、④⑤です。銀行は政府小切手を貰うと、『企業の預金口座に記帳する』とあります。この時、銀行は企業の口座に数字をかき込むだけです。現金は必要ありません。無から銀行預金というおカネが生まれたのです。そう銀行は銀行預金を元手に投資事業をしているのではありません。銀行は日銀当座預金を右左に動かすだけで銀行預金を創り出せるのです。誰かが銀行から借りればそれすら必要なく。これを『信用創造』といいます。日銀によると2016年1月時点で流通していた日本銀行券は102.5兆円、同じ時のマネーストック、つまり社会に出回っているおカネの総量はなんと920.8兆円(M2)もあります。実際のおカネの9倍もの銀行預金が造られているのです。
これを関係する機関のバランスシートを提示して少しわかりやすくしましょう。
⓪国債発行前のバランスシート
銀行のバランスシート
借方 貸方
日銀当座預金1兆円
政府のバランスシート
借方 貸方
①国債発行時のバランスシート
銀行のバランスシート
借方 貸方
国債1兆円(貸付金)
政府のバランスシート
借方 貸方
日銀当座預金1兆円 国債1兆円(借入金)
※国債を銀行が購入する。政府は銀行の日銀当座預金残高を「借りる」事で代金を払う
②政府の支払い
企業のバランスシート
借方 貸方
政府小切手1兆円
政府のバランスシート
借方 貸方
日銀当座預金1兆円 国債1兆円(借入金)
政府小切手1兆円
※公共事業などの政府出費を政府は企業に政府小切手を発行する事で支払う
③政府小切手の銀行預金化
企業のバランスシート
借方 貸方
銀行預金1兆円
銀行のバランスシート
借方 貸方
国債1兆円(貸付金) 銀行預金1兆円
政府小切手1兆円
※政府小切手を銀行に持ち込むと、銀行の借方に政府小切手が、貸方には銀行預金が記入される
④⑤政府小切手の清算
政府のバランスシート
借方 貸方
日銀当座預金0円 政府小切手0円
国債1兆円(借入金)
銀行のバランスシート
借方 貸方
国債1兆円(貸付金) 銀行預金1兆円
日銀当座預金1兆円
※政府小切手は日銀経由で処理される。政府は日銀当座預金を銀行に移す事で処理する
最後には銀行の当座預金は元の場所に戻り、1兆円の国債と銀行預金が残る
銀行のバランスシートの動き
国債発行前
借方 貸方
日銀当座預金1兆円
清算終了後
借方 貸方
国債1兆円(貸付金) 銀行預金1兆円
日銀当座預金1兆円
日本銀行券がいつで生まれるのかについて説明していませんでしたね。先程、実際の9倍近い預金が造られていると言いました。成る程、これが金本位制度なら金庫の中に金のインゴットは無いしそんな大量の金を瞬時に用意する事など出来ません。ですがご安心ください。日銀には『金融機関が日本銀行当座預金から引き出して、日本銀行の窓口から受け取ることによって世の中に送り出されます』とあります。つまり、銀行が現金決済が必要になった時に、銀行の要請に応じて発行されるのです。
「この預金は偽物だ、使い物にならないよ」と難癖をつける輩が来ても、「一週間待ってください。本物のお金をお見せしますよ」と返す事が出来ます。日本銀行券や銀行預金とはとどのつまり国債。
そう「信用通貨制度」とは借金を担保におカネを創り出す制度なのです。
では国が借金を返すとどうなるか? とっても簡単な話で、日本銀行券や銀行預金は消滅します。
つまりおカネが減るのです。デフレで、おカネが無くてみんな困っているのにです。
政府がおカネを刷るのはけしからん事だと騒ぐ人はデフレ脱却に反対してるのでしょうか?
それとも、現代の金融システムの祖であるロスチャイルドが金融錬金術の一端を知られるのを嫌がって政治工作でもしているのでしょうか?(爆笑) まあ日本会議ガ~、フリーメーソンが~みたいな下らない陰謀論はどっかにやって、単に利権と権力闘争の為にウソをばら撒いているだけなんでしょう。
単純な話です。カネを創り出すという権力が誰にあるのか? 政府? 財閥? それともグローバル投資家たち?