香港デモと本邦のデモ()との根本的な違いとは何か?
香港で大規模なデモが起きた。デモの発端は、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする香港の「逃亡犯条例」改正案である。デモの様子も極めて穏便であり、逆に中国当局の強硬な鎮圧姿勢が問題視され、中国当局は事件の発端である条例改正を延期した。この事象に対する反応は、中国様の暗部を晒すまいと隠ぺいしたり、デモで政治が動いた~とほざいて日本でも~とか、そもそも日本と香港では前提条件が違い過ぎる事に気づきもせず、国内のデモ()の根拠を自分で潰している事にすら気が付かないアンポンタンが出てきたりと様々だ。この手のアンポンタンは香港の人々が何を恐れ、何を拒絶しているか全く判っていない。判っていれば、この文脈の流れで国内でもデモを~とか言わんだろう。
そもそも、香港の選挙がどのようなものかご存じだろうか? 高度な自治などと嘯いているが、英国統治時代からあの地に民主主義があったことなどただの一度もない。全く民主的ではないが、少しのギャップがあるといった程度のものだ。いわゆる親中派が8割以上を占める1200人の選挙委員の投票によって香港政府のトップである香港行政長官は決められる。選挙委員の選考に民意が介入する余地は無い。故に、香港の人びとは普通選挙を求めるデモをしてきたが、共産党が許可する候補者の中から選べという素晴らしい選挙制度が提示されただけで、全く成功していない。
では、今回のデモが何が違うのか? 今回のデモ隊の要求は、容疑者の身柄を中国本土などへ移送できるようにする「逃亡犯条例」の改正を食い止めることにある。
香港では、2015年に中国政府を批判する書籍を多数そろえていた香港の書店の関係者が突然、失踪したという事件がおきた。失踪者たちはやがて戻ったが、そのうちの1人が中国当局による拘束と捜査だったことを告発した。この事件は一国二制度の根幹から揺るがす事件である。「逃亡犯条例」は政治犯を対象としていないと香港政府は言うが、このような前例があるのに信じられるものか? そもそも、この条例は「中国の法」に基づいて容疑者を決めるのだ。かの国がチベットやウイグルで何をしているか? 絶滅収容所をこの現代で運営しているのだ。そんなクソやべ~国が隣にあるのだ。
さて、とても驚きな事なのだが、本邦でデモとは名ばかりの暴力行為に勤しんでいる連中は、「選挙で勝てないから独裁国家だ~」などとガチの独裁国家に住んでいる人が聞けばブチ切れるような事を平気で言いながら、この香港デモをみて、日本でもデモ~などと吹き上がっている。彼らに人権が制限された国の人間の気持ちなど一生理解できないだろう。香港の人たちが中国に飲み込まれる事への恐怖を1mmでも共感できるというなら、訳の分からん反基地闘争してる場合か? という事など直に理解できる。結局、彼らはデモという大義名分を掲げて暴力行為をしたいだけなのである。