国政調査権に対する勘違いと、反法治主義的な運動の行きつく果て
世の中には『法治主義』が嫌いな人間がいるらしい。彼らは『推定無罪の原則』を無視して良いと考えているらしい。コレがとんでもない事だという認識が全く無いのだから性質の悪い。彼が言うには『国会』は裁判所でないから良いらしい。これらは、まったくの間違いである。
国会運営は『国会法』に基づき行使されるのである。故に『司法』でないから良いなどという言説は成立しないのだ。『政治』であると主張するなら国会法に基づいて粛々と行動すべきである。野党は現状の行動を正当化するのに、憲法62条に基づく『国政調査権』だと主張しているが、これは全く今の行動を正当化する理屈にならない。
国会法
第百四条 ”各議院”又は各議院の”委員会”から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。
2007-09-12 朝日新聞 朝刊 1総合によると、『衆参のいずれかの”委員会で過半数の議決”を経れば、内閣や官公署に必要な報告や記録の提出を求めることができる』との事だ。つまり、つべこべ言わずに『国政調査の要請』を衆議院又は参議院で行えばよいのだ。彼らはそうしない。そうしないうえで、騒いでいるのだ。故に彼らがしているのは『裁判ゴッコ』なのである。
勿論、議院や委員会で物を言うのは各政党議員の多さだ。故に、国民を納得させて、議席を増やす努力が必要なのだ。一切の証拠が無いけど、国会を空転して良いなどという主張は余りに国民を愚弄した話である。議員ひとりひとりに馬鹿みたいに支払っている報酬はこのためにあるのだ。さっさと公開情報を全てひっくり返して、疑わしい部分を見つけ出し、状況証拠を作り出せばよいのだ。彼らはそれすらしない。
それでやる事が、証言者に対する偽証の強制である。議院証言法にはハッキリと証言拒否を行う事が認められているのである。しかもそれは憲法で認められた人権である。それすら倒閣活動の為には無視して良いと言う訳である。立憲が聞いて呆れる。
更に言えば、渦中の公文書問題も大きな問題をはらんでいる。この文章の存在を最初に明らかにしたのは朝日新聞であるが、その『情報源』は明らかでは無かった。ある議員が口を滑らせて言うには「大阪地検特捜部の女性特捜部長」との事である。そしてそれに該当する人物はひとりしかいないそうである⋯⋯⋯
これが真実なら、国家公務員の守秘義務違反である。これは公文書偽造と同じく法令違反の大不祥事だ。そんな事を堂々と口にするのは、口が軽いと言うレベルの問題ではない。森友追及は『正義』だから”多少”の法令違反は見逃せとでも言う気なのか?
そして、それが嘘なら、議員の資質を疑問視される行為であり、件の女性特捜部長から名誉棄損で訴えられても文句は言えないような。軽率さである。
衆議院規則を見ると面白い事が書いてあった。秩序の欄だ。一部抜粋しよう。
第二百十一条議員は、議院の品位を重んじなければならない。
第二百十二条議員は、互いに敬称を用いなければならない。
第二百十五条議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を閲読してはならない。
第二百十六条議事中は濫りに発言し又は騒いで他人の演説を妨げてはならない。
第二百十八条議長が号鈴を鳴らしたときは、何人も、沈黙しなければならない。
第二百十九条散会に際しては、議員は、議長が退席した後でなければ退席してはならない。
今の国会は学級崩壊の様相であるが、果たしてこれらが守られているか?
現状の野党がやっている事は、因縁を付けているだけだ。かつて、これとまったく同じような構図の事をやって権力を維持した男がいた。名をスターリンと言う。大量虐殺共産主義者のレジェンドNO.2だ。彼は、政敵を告発、拷問で自白を強要、反革命罪で死刑。この黄金パターンを繰り返す事で権力を握り続けた。これが有名な大粛清である。
『自白強要』で政敵落としを行う事は、まともな『政治』でない。勿論『司法』などと言うのはあり得ない、これは唯のリンチだ。こんなモノを有難がるのは、ヤクザ以下のチンピラぐらいであろう。リンチで人を貶める事ばかり考える人間は、自分が対象になって初めて己の愚かさを噛みしめるのだろうが、そんなのに巻き込まれる大多数の人間は迷惑でしかない。
横紙破りは楽しいだろうが、そんな行為が横行すれば政治はどうなるか? 間違いなく、クーデターが茶飯事の『失敗国家』になるだろう。はっきり言える事だが、このような行為を是とする事が、議会制民主主義への侮辱であり、法治国家の終焉をもたらす行いである。『法治国家』とは裁判をちゃんとする国家という意味ではない。似非正義漢が政治を握るとどれだけ悲惨な結果になるのかという反省から、権力が行う活動にルールで規定して実行するという仕組みそのもの事である。
国会議員というのは間違いなく権力者のひとりなのである。その自覚が無い議員はさっさとバッチを外して議事堂の外でゲバ棒を振り回すべきである。議会制民主主義と国民を舐めるのも大概にしろと言いたい。だいたい、『推定無罪の原則』は”存在しない事の証明は極めて困難である”という当たり前の認識から導かれた、当たり前の原則である。
納得する気の無い者を納得させる方法など存在しない。当たり前の事である。