アメ車がなぜ売れないか?
トランプ大統領はアメリカで日本車が何百万台も走っているのに日本ではアメリカ車は走っていない事は不公平だと発言している。どうやらアメリカではこんな主張している者が結構いるらしい。基本的に政治家の発言で気を付けないといけない事は、政治家は要望があって利に沿うと考えればワザと勘違いできるという事だ。ビジネスキャリアとして実態を知らなくても人気取りのために間違った真実を信じているフリをよくする。政治家と言うのは基本的に嘘つきでなければ務まらない職業である。
さてアメ車に話を戻そう、アメ車が日本でなぜ売れないか? 答えは簡単だ、売ってないからだ。
もはや性能や土地柄との相性とか趣味趣向以前の問題である。この文を見ている人の中でアメリカ車のCMや代理店を見たことがある人はどれだけいるのだろう、筆者はJeep以外見たことがない。それもブランドが中国資本に売却されてからの話である。実態としてアメ車は日本で販売されていないのだ。日本でアメ車を買おうとすると日本全国で18店舗あるらしい代理店に赴いて購入するか、個人経営のディーラーで購入するかだ。何となくで買える車ではない、日本でアメ車に乗る人と言うのは始めからアメ車を買おうと決めている人間だけである。
他の国ではどうだか知らないが、わが国では基本的に自動車はメーカーと契約した代理店が販売している。そうした方がメーカーからの支援を得られて他より有利な条件で販売できる。メーカーとしても安定して売却できるのは非常にありがたいので必然的にこの売却形態が市場を独占した。かつてアメリカはこの売却形態を閉鎖的だと批判した。そのせいでアメリカ車が売れないと主張したのだ。
念の為に言っておくが、別にわが国では海外企業が代理店が立てることもCMを流すことも、個人ディーラーが自由に海外の車を卸す事も禁じていない。企業とタイアップした方が販売の面で圧倒的に有利で生き残りやすいと言うだけの話である。純然たる企業努力に対して”アンフェア”だと主張したのだ自由貿易が聞いてあきれる。
かつて我が国は制裁として、各メーカーが規定量のアメ車を”買わされた”時代があったのだ。想像できるだろうか? トヨタの販売店で見知らぬアメ車が売られていて、トヨタの社用車がアメ車だった時代があるのだ。そもそも日本車がアメリカに入る時には関税25%も課せられるのに、日本はアメ車に1%も課していない。日本よりも道路事情良いはずのアメリカでさえアメリカ車が売れていない実態について米自動車業界の人間はどう考えているのだろうか? 自信をもって日本やドイツより優れた車を販売していると言えるのだろうか?
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この辺りで少しおかしいと思わないだろうか? 先ほど、Jeepブランドが中国資本になったとたんに販売店が増えCMを流しだしたと言った。そう、大衆車を売る気があるなら素直に販売店を増やしてCMを打てば良いのだ。これらの主張を米自動車業界がしているなら、彼らは並べてすらいない商品が売れない事を憤っていることになる。政治力とタイアップしての販売戦略にしては連携が全く見えてこない。業界の意志でしているなら嫌がらせのために政治家に対して貴重な”お願い”の権利を行使している事になる。
もちろんアメリカのラストベルトの旧製造業地帯の雇用問題は重要な問題である。しかし雇用の問題と考えても実はかなりおかしいのである。なぜなら今アメリカで走っている日本車の大半はアメリカで製造されたものだから。アメリカ人はアメリカ人が造った日本ブランドのアメリカ製の車に乗っているのだ。いまやアメリカ自動車業界の雇用を守っているのはトヨタなどの会社なのだ。
非情に奇妙な現象が起きているのがおわかりいただけだろうか。トランプ大統領が主張する”日本パッシング”その全ては現状の米自動車業界の実態と全く噛み合っていないのだ。
じゃあ誰がこんな”荒唐無稽な事”を主張しているのだろう?
そう、これらの主張は貿易摩擦など言い訳にした”日本パッシング”に過ぎないのだ。日本叩きは何もトランプ政権になったから発生したわけでない。ズ~~ット存在する問題なのだ、日本では戦後レジームと言われて問題になっているがアメリカにも同様の問題が存在するのだ。戦後75年以上経つというのにいまだに戦時下のプロパガンダを本気で信じているような知性が絶望的な人間がどちらにも大量に存在するのだ。
さらにこの問題は根が深い。ハリウッドのストーリーで『王様がいました、やっつけました、みんな幸せになりました、めでたしめでたし』こんな御話しを数多く見かけないだろうか。化粧しても主軸のストーリーラインがこんなのがほとんどだ。コレをリアルに当てはめて考えたがるのが結構いるのだ。
だが現実的に、こんな中学生の妄想ノートじみた戦争観が許されるのは第二次世界大戦で終了している。それすら多くのことを無視して始めて成り立つ物の見方なのだ。正義を愛するアメリカ人の中では朝鮮戦争もベトナム戦争も存在しない。両方とも被害者であるはずの中国がアメリカに対して牙を剥いている戦争だ。これらの正義を主張すると必然的に太平洋戦争はしなくても良い戦争だったのでは? という疑問が発生してしまう。
それを認めたくない、自称リベラルの彼らは頑なに太平洋戦争が歴史になることを拒む。オバマ政権下でどれだけの意味不明な決議がなされたことか。現在進行形で中東ではテロの恐怖に震えている人たちがいるのに、アフリカでは未だに混沌とした状態が続いているというのに、東アジアでは中華人民共和国だの朝鮮民主主義人民共和国だのといった独裁政権がはばを利かせているというのに彼らは75年前の存在すら定かでない自称性奴隷の問題を掘り下げる方が重要だと言うのだ。
その尻馬に乗って行われたのが、トヨタの制裁金課税やオバマ”元”大統領による安倍首相の歴史修正主義者発言である。彼らの正体はハッキリ言って単なる人種差別主義者である。今日日、肌の色がどうのというと角が立つから、歴史問題だの貿易摩擦の問題に話をすり替えて日本叩きに勤しんでいるだけの話なのだ。