因縁の相手
「おーい、誰か葛西と皇を見なかったか?」
「鞄はあるしトイレじゃないかしら。いつの間に居なくなってたのかしらねぇ」
「そうか。瀬戸は委員会っと………今日は1から4は通常授業。昼飯を挟んで一年生との顔合わせだ。部活に所属している奴は顧問から指示が出ている筈だからその指示に従うように。特にやることがない奴は第一体育館に行け。いいな。以上だ」
それだけを伝えて早々に教室から出ていく先生を見送ると、入れ替わるように着衣の乱れた葛西と皇が入ってきた。
なんだこいつら。
朝から盛ってるのか。
「つっかれたー………朝から相手にするのキツイんだよねー………」
「俺寝るわ。起こすなよ」
「お疲れ様、二人とも。よくまぁヒトヨの為にできるわねぇ。朝からお盛んなコト」
「祭、それ、どういう事?」
「まさかアンタまだ気づいてな「あー…………………気にしなくていい。祭も余計なコト言うな。俺達の問題だ」…そう言われてもねェ……」
「そーそ。ヒトヨきゅんも気にしない気にしなーい。朝から誰に突っ込んだとか聞きたいー?」
「ふざけんな。朝から吐かせる気か」
俺はソッチ側じゃないと断言する。
「その手のネタで盛り上がれるのはお前と祭だけだろ………」
「やぁねぇ。会長の夜のお相手を誰にするか決める時に篤に相談するくらいしか言わないわよ。アタシだけほぼ毎日なんて不公平じゃない?皆だってヤられたいのよ。会長が飽きない様に、そして公平に審査していくの」
「うげ…………そこまでやってるの……親衛隊って…………」
「皆公平にやってるのはアタシ達だけよ。副会長は隊長以外とヤってないし、書記は男嫌いだし、会計の伊万里は論外だしね。風紀委員長とかはとっかえひっかえっていうし、他の委員長達も拾っては捨てての繰り返し。一番の平和を保てて誇りに思うわ」
「ふつー、会長の親衛隊が一番エゲツナイと思うけどね~」
「あら、そんなことある訳ないじゃない。前はそうでも、アタシはそうじゃないもの。現に、会長からヒトヨを傷つけろって言われても、何もしてないじゃない。感謝しなさい?ヒトヨ。アタシの人脈によって貴方は無事なのよ」
「知ってるってば。助かってるよ」
あのもじゃ毛眼鏡こと明石君が転校生としてやってきてからというもの、大体の親衛隊に目の敵にされている。
なんで?俺関係なくね?
確かに似てるかもしれない。
髪の毛はぐしゃぐしゃだし、同じような眼鏡かけてるし、背格好も似てる。
そこは認めよう。
ただ、俺はあんな強引な性格じゃないし、勘弁してくれ。
それともあれか。
会計が幼馴染みって事が気に食わないのか。
止めろ。アイツは祭以上に気持ち悪いんだ。
「ほーれ席つけー新学期早々一時間目がこんな授業で申し訳ないが席つけー」
「せんせー!相変わらず地味にネガティブですね!」
「おう。さっき彼女から別れてって連絡……来てな…………」
なんで教師が授業始める前から泣いてるんだ。
「あらやーだー!なにか理由があるんでしょ?言いなさいよほら」
「なんか…………付き合ったら予想以上に楽しくも面白くもなかったって………」
「前のカノジョもそうだったじゃん。何やってんのせんせー」
「俺だって!俺だって!今度は楽しませようと思って文豪の墓参りじゃなくて、文豪の人生を辿る旅行とかしたのに………」
「それだよ!!!!」
「馬鹿ねぇ~普通はショッピングとか遊園地じゃないの~どっからそんな選択肢出てくるのよ。他人の人生なぞるデートなんて女は満足しないのよ」
なんでクラスの奴らは授業じゃなくて、先生へ恋愛のアドバイスなんてしてるんだ。
ため息を吐いて、寝る体勢をとる。
朝から色々あったせいか、それとも新学期で昨日まで堕落した生活を送りきっていたせいなのか。
すんなりと寝る事が出来た。
「ごきげんよう。皆さん。こうして全学年が集まるのは本日が初めてですが、どうでしょうか。これから生徒会や委員会紹介、部活動紹介もありますから、一年生のみなさんはそんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。特に部活動紹介は毎年凝った方法で紹介していますから、楽しみましょう。私からは以上です」
昼食後の学園長の話ほど眠気を催すものはなく、うとうとしていると、目が覚める程の歓声が体育館に響きわたった。
去年も思ったけど、生徒会役員や委員長達が出てくるだけで煩くないか?
「えーでは、ここからは放送委員長がお送り致します。まずは生徒会役員の皆様からどうぞ!」
相変わらず放送委員の完璧なライト演出には脱帽する。
去年もそうだったが、この生徒会紹介に全力掛け過ぎじゃないか?
ざわざわと騒がしい一年生に圧力を掛ける様に、生徒会長が口を開いた。
「静粛に。俺がここの生徒会長、真壁和葉だ。生徒会役員は、お前らから見て左から、副会長の斉藤悠、書記の神崎星、会計の才場伊万里だ。ここに立っている全員が、生徒にとってより良い生活を送れるように各委員会と協力して活動している。学園生活等でなにかあれば、生徒会室前の目安箱に匿名で何かを書いていけばいい。ただし、色恋沙汰以外だ。以上で生徒会役員の紹介を終わる」
短すぎる役員紹介に文句を言う人間は一人としていない。
ほとんどの生徒が生徒会長に見惚れており、一言一句を聞き逃さない様に耳を傾けている。
壇上から生徒会が降りたのを確認した放送委員長は少し興奮した声で、各委員会の紹介に入った。
「生徒会の皆様!ありがとうございました!それでは!委員会紹介へと移らせていただきます!これから名前を呼んだ委員の委員長様は壇上に上がってください!」
次々と名前を上げられる委員会。
盛り上がりを見せる生徒を見下すように美人揃いの委員長達が並んでいく。
「続きまして!運営委員会の喜蘂伽藍委員長と、風紀委員会の白石翔梧委員長のご登場です!」
盛大な拍手と歓声の中、2人の生徒が壇上へ上がる。
「来た…………」
思わず口から洩れたその言葉。
二人の内、片方が生徒に向かって笑顔を浮かべ、手を振った。
沸き立つ生徒に混じって、鳥肌を摩る俺。
学園長が言ったように、本当に俺を探す為に委員長になったとしたら………
絶対に逃げ切ってやる。
むちゃくそ長くなってしまいましたが、まだまだ続きます。
漸く出せました。あと一人出したらメインメンバー勢ぞろいです。わーい。
多分次話かその次には出せるかな?
今年の更新はこれで最後です!来年も続いていきますので、よろしくお願いします!