一節目
サノちゃんが転校しちゃうって初めて聞いた時は、本当にビックリした。
ビックリしすぎて、何も分からなくなってしまった。何もかも分からなくなって、上も下も分からなくなって、涙の味も分からなくなって、あまりにも泣きすぎて空気も吸いづらくなっちゃって、本当に大変だった。
次の日はいつものように起きる事が出来たけど、とたんに思いだしちゃって、学校へ行く途中も涙が抑えられなかった。
これから高校生になるっていうのに、これから一緒に高校生になって、大人な制服のブレザーを来て放課後とか一緒に喫茶店とか行こうと思ってたのに…………。
一緒にお昼ご飯食べて、互いに勉強教えあったりして、
休日はどちらかの家に行ってレコードを聞いたりして、一緒にお菓子食べたりして、
映画見に行ったりとかして、
長期休みは二人で旅行に出かけたりとか、お泊まりしたりとかいっぱい考えてて、
本当にサノちゃんがいなくなるなんて信じられなかった。
私は心にぽっかりと大きな穴が開いてしまったようだった。
とても不安定で、常に冷たい風が吹き抜けて、心の中心から私の体がからえぐられていく感じ。
とても生きていける気がしなかった。
サノちゃん無しでは残りの人生を生きていける気がしなかった。
もっと居たかった。一緒に居たかった。
せめて、出発するギリギリまでサノちゃんと一緒に居たかった。
……だからね?
私、今度サノちゃんの家にお泊まりしようと思うんだ。