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PM 11:47
レティーナ・ホテル・フクスケ
ローマ市中心部北側に位置する日系ホテル。
2人はタクシーを降り、ロビーへ。
エリスの姿を見て、フロントの受付係が
「大丈夫ですか?彼女は?ケガでも?」
と聞いてきたが、大介は、彼女は旧友で、観光中に体調を崩したから、ここで休ませたいと、苦し紛れに説明した。
薬や救急車を手配しようかとも聞いてきたが、断った。
「何かありましたら、内線で、すぐに一報を」
受付係は心配そうに、部屋の鍵を渡した。
部屋は3階、シングル、314号室。
大介は、彼女をベッドに寝かせた。
苦しみは治まったみたいだが、依然、体は傷だらけ。
「水、飲むか?」
首を、横に振る。
「じゃあ、ケガの手当てを」
「しなくていい。直に治る」
「おいおい。そんな――――」
「あなたの思っている通り、私は人間じゃない」
大介は驚く。
どこからどう見ても、自分と同年代の女の子だ。
「どういうこと?」
「話すのが・・・疲れた。
また・・・・後・・・・で、な・・・・・・・・・」
寝てしまった。
<やれやれ、とんだ1日だったぜ。
変な蜘蛛に追われるわ、訳の分からん跳ね返り娘に会うわ。
つか、これ夢じゃないのか?さっき、気絶したし・・・>
そう思いながらも、スーツケースから救急セットを出し、手当てしようと彼女に近づく。
すると、いくつもあった傷の大半が消えている。
しかも、眼前で、手についていた傷が、ゆっくりと消えた。
<やっぱし、夢か?>
大介は、自分の顔を思い切りつねった。
「いでででででで・・・夢じゃない!
つまり、彼女」
ベッドを離れ、備え付けの冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出し、飲む。
彼の頭の中で、さっきの台詞が蘇る。
「私は人間じゃない」
だとしたら、今ここで寝ている女の子の正体は、何なのか。
あの歯と、血を欲するからして、吸血鬼かと考えた。
<まさか、アニメじゃあるまいし・・・。
でも、そうじゃないと説明がつかない>
だが、いかなる思考も、睡魔にはかなわない。
「明日、ゆっくりと考えるとするか」
彼は椅子に座り、机に突っ伏して寝てしまった。




