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30

 建物に入り、階段を上る。

 3F、4F、5F。

 部屋を横切り、ベランダへ。

 木製のそこからは、しっかりと広場を見渡せる。

 「さて、ボス面に参りました、と。

  どうすればいい?」

 「援護してって、言いたいけど、そこで待機」

 「何でさ」

 「その銃、ノーマルよ。

  妖を倒すには、“聖弾”っていう特殊な銃弾を装填した銃が必要になるの。

  それを持てるのは、対ラッシュ特別セクションに所属している者だけ。

  ギルバートも、最初からそれを知ってて、あなたにその銃を渡したの」

 「何て野郎だ!」

 「そういう人なのよ。

  彼のおかげで、瀕死の重傷を負ったことだってあるんだから」

 「それでも、できる限りで、エリスをサポートするぜ」

 エリスが大介の方を向いた時だった

 「っ!」

 動悸が襲う。

 「ときが来たようね」

 「吸血鬼か」

 「ええ。

  状態からして、変化はまだ先ね。

  でも、戦闘中に、その刻が来たら、厄介ね。

  かといって、このままにしていたら、被害が拡大する」

 「やるしかない・・・か」

 「できる限りでいい。

  援護、頼んだわよ!」

 彼女は外を見る。

 土蜘蛛は教会の屋根にとどまっている。

 一気に。一気に。

 剣を握る手に力を入れ、ベランダを飛び越え、屋根伝いに、一直線に向かって走る。

 <行ける!>

 剣先をクモに向けた。――――――が、もう、その姿はない。

 「危ない!後ろ!」

 大介の声に反応し、身をひるがえす。

 鋭い脚が、彼女のいた場所に刺さる。

 糸が絡まり、宙に浮く、白い鉄製のテーブルへと着地するエリス。

 眼前に笑みを浮かべる土蜘蛛。

 ルドンのほうが、まだ愛嬌がある。

 そう思いながら、立ち上がる。

 「殺し損ねたわね。

  あなたの目的は?」

 エリスに問いかけにも、笑ったまま。

 「そう・・・答えないの?

  なら―――!?」

 不意にクモが、脚の一本を動かす。

 エリスの足元が突然ぐらつき、飛び上がる。

 後方、四大河の噴水にそびえたつオベリスクの頂点に降り立つ。

 挿絵(By みてみん)

 糸が切られ、テーブルが、解体作業に使われる鉄球の如く、建物に叩きつけられた。

 轟音と共に、土煙が上がる。

 「忘れてたわ。

  ここが、あなたのテリトリーってことをね」

 エリスは剣を今一度しっかりと握り、急転直下、飛び上がり、土蜘蛛へと振り下ろす。

 が、一足早く、相手は移動。

 屋根を、その巨体からは考えらえない速さで、軽やかに走る。

 一周して、彼女を襲うつもりだ。

 大介は、走る土蜘蛛への気味悪さを忘れ、銃を撃つ。

 一発、二発、三発、四発。

 あまりの速さに、当たらない。 

 それどころか、進路を変え、糸の上を走り始めた。

 「しまった。

  動き回るんだ!エリス!」

 「言われなくても!」

 巣と化したナヴォナ広場を我が物にした相手にできることは、これしかなかった。

 上へ、左へ、右へ。

 エリスは駆けた。

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