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2人は広場入口近くの建物の影にいた。
先程、警官隊がいた場所から離れた場所である。
エリスは小声で、大介に言った。
「何てことをしたの!
一時の感情に身を任せて、あんなこと言って。
この状況が、どれほど危険か、あなたには分かるでしょ?」
「分かるよ!
でも、エリスが物のように扱われていることに、腹が立ったんだ。
カオス・プリンセスだか、何だか、知らないけど、君は道具なんかじゃない。
俺にとって、君は一人の可愛い女の子だよ。
エリス・コルネッタって名前の女の子なんだよ」
「ダイスケ・・・」
「それに、1人より2人の方が、何かとはかどるってもんだろ?」
「でも、実戦なんて・・・」
矢先、大介は、弾数を確認し、銃のスライドを引いた。
「できるだけ、足を引っ張らないようにする」
エリスは一瞬、呆気にとられた。
が、すぐに、真剣な眼差しを彼に向け、頷いた。
「ところで、エリスはどうするんだ?
まだ日も沈んでいないし、獣人だと―――」
すると、先程まで麦わら帽子に挟んでいた3枚の葉を、ポケットから出し、その一枚を手にする。
「それは?」
「ナタール。
クロルークに伝わる、武装妖術に使う葉っぱよ」
そう言うと、葉の先端を口に含み、それを左手の平の上にのせ、右手をのせて重ね合わせ、それを一気に指先へスライドさせる。
一瞬で、ソードが現れた。
彼女に合った中型の大きさ。
「どうかしら?
まだ心配?」
「いいや。
さて、どうやって、近づくか」
「それなら任せて。
教会から向って、左斜めの方にあるビルの最上階に、ベランダがある。
そこから。
幸い、糸の上には、充分過ぎる足場があるしね。
広場と並行する路地を回って、裏口から建物に入るわ」
「よし、行こう」




