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丘に広がる古代ローマの中枢地区、フォロ・ロマーノ。
観光客がいなくなった夜は、すぐそばでライトアップされているコロッセオと違い、ひっそりと夜の闇の中。
厳かな遺構のの中を走る、その少年の姿はまるで、迷い込んだ異世界人の様。
彼の名は、亜門大介。
長期休暇を利用し、イタリアへ旅行に来た日本人大学生だ。
今日の午後、最終地であるローマに到着し、観光を楽しんでいた最中、テルミニ駅―日本でいえば東京駅に相当する、首都の玄関口であるターミナル駅近くで得体の知れない“何か”に追われていたのだった。
大介は辺りを見回し“何か”が来ていないことを確認すると、遺跡の陰に隠れ、荒い息を整える。
「ここまで来れば、追ってこないはず・・・」
その場にしゃがみ込み、空を見上げる。
月の無い、暗黒の空。
そこに向かって吐いたため息は、重みを帯びながら吸い込まれてゆく。
物音が近づく。来た!
物陰から“何か”の姿を確認する。
傍でライトアップされたコロッセオがまぶしい。
それをバックにして現れた“何か”を彼は、はっきりと認識した。
「巨大な蜘蛛?あれは、一体・・・」
刹那、背後に気配を感じた大介は身をひるがえし、直後、自らがいた場所に斧が振り下ろされていた。
赤い帽子の小人、レッドキャップがそこにいた。
辺りを見ると、崩れた神殿の屋根にも2体。計3体いた。
「お、おい。何なんだよ」
さらなる登場人物の出演に大介の頭は混乱する。
その場から動けない。怖い。
レッドキャップは、そんな彼に笑いながら斧を振り上げる。
そして――――――――――