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第三話†

夏。


ホラーが見たくなる季節ですね。

息を切らしてここへ来た少女(…と言っても同じ歳の女の子だが)は、目をキラキラさせながらこちらを見ていた。


「えっと…誰だお前?」


彼女に全く見覚えのない俺は、即座に対応。それに対し彼女も即座に対応。現実に戻ってこれたみたいだ。


「私は蒲田奈々(かまた・なな)っていいます。皆さんと同じ高校一年生ですっ」


イメージ的に言うと、テニス部とかに入ってそうな、明るい子だなぁと俺は思った。同い年だけに高感度も高い。但し謎が。

……その制服はこの学校のではない。一体どっから来たんだこの子。


「転校生?」


「違います!オカルト部の噂を聞いて、他校からやってきたんです!(従兄のパシリとは言えない…)」


「そりゃ遠路はるばるどうも。しかし何用で?見学か?」


「是非この企画に参加させてもらえないかと思って…。元々、人を怖がらせたりするの好きなんです」



丁度幽霊役が少ないと思っていたので丁度良い。他校の子に頼むのは申し訳ないが、まぁ本人も楽しそうだし、快く承諾してくれるだろう。


「ところでよぉ……奈々、お前学校はどうした?」


「ギクッ」


平日の昼間から他校に来たのか?


「私達の学校も丁度文化祭があるので買い出しという名目で情報収集してたんですが、こっちの方が楽しそうだったので、つい…」


そう言うと奈々はペロッと舌を出し、笑って見せた。


「じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ。今深刻な人員不足でよぉ、一人でも多くの協力者が必要なんだ。奈々、協力してくれるな?」


「勿論です、任せてください!誰であろうが驚かせてみせますよ!」


頼もしい新人も入ったことで、士気があがる。


「さて、早速縫いぐるみを作るとするか!」


「ぬ…縫いぐるみですか?」


「これこれこういう理由でな。あ、奈々は縫いぐるみ作るの得意か?」


「得意という程じゃないですけど、つくれますよ」


「じゃあ任せた!俺、縫いぐるみ作れる気がしねぇからよ」


そういい正直面倒だった縫いぐるみ製作作業を奈々に押し付けるが、奈々は少しも嫌な顔をせず、作業に取り掛かっていた。その姿には尊敬さえ抱かせる。飛び込み参加だというのに適応能力がずば抜けて高いようだ。


「犬の縫いぐるみだよねー?」


「あぁ、鵺宵のセンスに任せるが材料は統一してくれよ?」


「まぁ、ここには今日集めてきた材料しかないンだし、大丈夫だろう?」


「それもそうだな。じゃあ縫いぐるみは三人に任せるとして、俺は英樹と音の調整とかをしてくるな。」


「いってらっしゃーい」



† † † † † †



「英樹、調子はどうだ?」


準備室で待機しつつ、音響のチェックをしていた英樹に話しかける。英樹は俺に気付くとそっと耳打ちをしてきた。


「あの奈々ってやつ、他校で心霊写真部に所属してる」


「そうなのか?」


「主に活動は、生徒が夜中学校に来ないようにするために噂を広めるってモンらしいけどな。あそこの機械担当とは顔見知りでさ、噂は聞いてた」


「噂か…」


「心霊写真は、加工とかをして作ってるって聞いた。あの奈々ってやつが新入りながら中々やり手らしい。所謂ダークホースってやつだな。」


「そうか、じゃあいい仲間をゲット出来たわけだ。」


「そうだな。幽霊役には最適だ。」


話題がかなり逸れたが、話題のネタも尽きたように見えたので早速本題に戻す。


「さっき入る時に聴いたあの声、もっと子供っぽい声に変更できないか?」


「あー、そうだな。ストーリー的にいうと女の子だもんな、霊は。」


話の呑み込みが早くて助かる。


英樹は俺に対してわかったとだけ告げ、またPCに向かい何やらマウスをカチカチしだした。音量の調整の時と似たような仕草である。すると機械が作動するとともに女の子の声に変更された音が流れ出した。


「よし、これでオッケーだな。後の調整も頼む」


「あと、あいつらの行動にも目を光らせておくよ」


「それもお願いする。まったく、お前は敵にまわしたくないな」


「…だろ?」


英樹が笑いながらこちらを見る。その顔がまた悪人のようで……いや、悪戯を楽しむ餓鬼の方が近いか。

今までの功績もきっととんでもないもんなんだろうな。


「ぬいぐるみ、こんな感じー?」


「うわ、やっぱ鵺宵は凄いセンスだねぇ」


「た、ただのぬいぐるみなはずなのに……!」


ぬいぐるみ班が驚きの反応を見せる最中、満面の笑みでぬいぐるみを持つ鵺宵。

そのぬいぐるみはーーーー、ホラーゲームに出てくるぬいぐるみよりも奇抜かつ、グロテスクかつ、怖かった。どうやったらあんなのができるっていうんだよ。すげぇよ鵺宵。


「えへへー、上手いでしょ?」


本人にとってはただ単に上手くできたぬいぐるみでしかないらしいな。


「こっ、これが山ノ上高校オカルト部の実力……!」


奈々もかなり驚いているみたいだ。それもそうか。いきなりこんなもん見せられてんだもんな。

そりゃ俺は鵺宵の力を知ってたし、慣れてるからいいものの……流石に始めて会った時には鵺宵のセンスに驚いたけどな……。そういや前に茂中達におどかされた時にも能力を発揮してたっけ。

人体模型が動くのをみて、まるでアイドルを見てるJK(女子高生)みたいに突っ込んでって、目をキラキラさせてたもんな。


「鵺宵、その調子で完成を目指してくれ」


「うん、頑張るね清ちゃん。」


「二人も引き続き頑張ってくれ」


「分かった」


「はっ、はい!」


ぬいぐるみの作業は着々進んでいるし、英樹が音響を担当してくれてる。打ち合わせもしたしあとはセッティングか……間に合うか??


いや、間に合わせるしかないよな。


俺は理科室をあちこちうろうろしながら、仕掛けと配置、道順をどうするかを考え始めた。

理科室には二つの扉があるため、一方通行の形をとるのが最善。

あとはどうしきりをつくるかだな。やっぱりこの机が邪魔だな。


むしろ、机の上にのってもらうか?

そうすれば机の下にある隙間も有効活用できるな。

なら、時々下ったり登ったりする形にして……。それで幽霊役に足首を掴ませるとか。

普通ならお触りはNGだが、ここで幽霊をやるのは女子だ。先生に前持って内容を伝えておけば問題ないな。



回想を巡らす度にワクワクしてくるのをなんとか抑え、平常心を保つ。


構想を練る為に、机についたドアを開閉しながら、隙間の大きさや仕掛けをどうやって発動させるかをシュミレーションしぬいぐるみの完成を待つ。


花梨は大きいからこの中に入れないな。

鵺宵は縮めば入りそうだな。奈々も問題ない。


花梨には途中で客を追いかける役をやってもらおう。

あいつがドシドシ走ってくれば恐怖心を仰げる。


さて、俺はどこにいようか……。ん?このロッカーは使えそうだな。定番だが。

でもあの閉所で客を待つのは辛いな。


さてどうしたものか。

適材適所という言葉もあるからな、慎重に配置を決めないといけない。


「もうちょっとでぬいぐるみできるよー。」


ぬいぐるみが完成間際になったのは、ぬいぐるみを作り始めてから三時間後のことだった。

その間にいろいろ想像を膨らませた俺は、皆にその案を伝えながら、明日の買い物についてと暗幕について話した。


暗幕は鵺宵が、今回の買い物には花梨、奈々、英樹でいってきてもらおうと思う。俺はその間に皆とは違う仕事をすることに決めた。何をするのか、それは内緒だ。後のお楽しみにしてもらおう。




今回はぬいぐるみと奈々にスポットを当てた回でした。

次回は二回目の買い物と、清の単独行動の回になります。


三人は無事買い物を時間内に済ませるのか。

清の狙いはなんなのか。


期待はせずにお待ちくだs((ry

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