1:ごはんはにぼしでおねがいします
んー……ね、む、い……。
シャッっと勢いよく開けられたカーテンから眩しい日差しが降り注ぐ。
目を閉じていても入ってくる光から逃げるように体を丸め、少しでも眩しくないように悪あがき。
そう。悪あがき。
そんな事はわかっている。
何故ならもうすぐ……。
「おはよークロちゃん!あさだよー!」
こうして起こしてくる人間がいるからだ。
「今日もきもちいいお天気だよっ!」
うん、それは入ってくる光でよくわかる。目を閉じていてもはっきりわかる位の光の強さなんだ。
眩しくてかなわない。
「ん~、相変わらず朝はお寝坊さんだね~。
まったく、しょうがないんだから」
そういいながら彼女は部屋から出ていった。
ふっふっふ。
俺はわかっているのだ。
この時間なら、必ず時間を置かずに下におりて、ご飯を食べた後、学校に行く事を。
そして、一旦下に行けば、帰ってくるまではこの部屋に戻って来ない事も。
今の俺には、カーテンを閉め直す事ができないから、布団の中に潜って寝直す事にしよう。
あぁ……あったかい……。
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「あら、クロちゃんお出かけ?」
昼頃に布団から抜け出して階下に行くと、お母さんが声をかけてきた。
いつもこの時間に家を出て行くのはいつもの事なので、一声かけただけで窓を開けてくれる。
「今日もご飯前には帰っておいでね」
優しく語りかけてくれる彼女に目で挨拶し、トッと縁側から飛び降り、いつもの柵の隙間から家を出た。
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「おおおおおおううじいいいいいい!!
あまりに遅いので、何かあったんではないかと心配しましたぞ!?」
「あー、悪い悪い。いつもの野澤のおっちゃんが今日はご馳走くれてさー」
「まったく……その人脈の広さは素晴らしい事なのですが……もっと自覚を持ってもらわないと……」
「あー、はいはい。
んで?今日は俺は、なにすりゃいいの?」
「まったく……。
今日は会議への出席と、会食……」
「いやいやまてまて。会食は出ないっていつも言ってるだろう!?」
会食になんて出たら、夕食までに戻れないし、お母さんが食欲無いからって気にしてしまうじゃないか!
「そろそろ王子にも、他の者ときちんと話をして、顔を広めてもらう必要があるのですよ。
生まれてすぐなどは、その聡明さに皆驚き、将来を期待していましたが、今はあの家に入り浸って……」
「おい」
「……は」
「この事はキチンと親父に許可をもらってやっている事だ。文句があるなら親父に言え」
「……失礼しました」
「とりあえず顔だけは出すから、後はそっちでなんとかしてくれ」
ついつい苛立った声を上げてしまった。
最初にここから出る時に話し合った事を混ぜ返されればしょうがない……か?
「会議はいつからだ?」
「夕刻、4:00頃の予定です」
「んじゃ、それまでは適当に見回ってくるわ」
そう言って、俺は背を向け歩き出した。
背後に、色あせた灰色の毛並みを持つ、体格のいい猫を残して。