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プロローグ
その想いは、世界を結び。
その愛は、生命を繋ぐ。
「ねぇねぇ!光のお姫様のお話聞かせて!」
大陸の大国ベルナドッテに、今年も春がやって来る。
春迎の祭りで賑わう街の雰囲気に、子どもたちもいつもより少し興奮気味だ。
“光のお姫様”の話は、この国の子どもたち―特に女の子が大好きなお伽話。
庭先の椅子でうとうとしていた老婦人は、元気良く駆けこんで来た子どもたちに、くすりと微笑んだ。
「おばあちゃんっ。光のお姫様のお話聞きたいの!」
5、6人いる女の子たちの中で一際大きな声を上げたのは老婦人の孫娘だ。
婦人ははいはい、と宥めるように言っていつもの本棚に置いてある1冊の絵本を手にする。
もう何度も読み聞かせている筈なのに、まるで初めて読んでもらうお話みたいにキラキラと目を輝かせて自分を見上げる子どもたちに、老婦人はますます笑みを深くする。
ああ、あの御方は今もなお、こんなにも民に愛されているのだと。
満ち足りた気持ちになって、婦人は絵本を開いて物語を読み始める。
それは、愛がもたらした奇跡の物語。
ベルナドッテの民が今なお愛し、敬うある1人の姫君の物語。