俺・理麻「これほど異様な光景もない」
私が通った学校は大体これがつきものだったんですけど・・・
全国共通なんでしょうか。
これをはたから見たら絶対異様としか思えません・・・
校庭に垂れ下がる国旗が、やや涼しい風になびく。朝から数発の花火が打ち上がる。色とりどりの鉢巻きが、ざっと校庭を埋め尽くしていた。いよいよ運動会の始まりである。
「なにが楽しくて一番前……」
ジャージ姿の理麻は、面白がる様子もなく、クラスの一番前に立っていた。少しサイズが大きいのか、袖やズボンの裾に余りがあるのが気にかかる。いや、気にしたくは無いのだが、隣に玲治が立つとさらにそのコンプレックスが際立つ。
「お前、横に立つなよ……」
「仕方ないだろ。俺も実行委員なんだし」
「ムカつく……」
「これは生れつきだから……」
「お前じゃなくて、あいつ」
そういって理麻が指を指し示す。そこにいたのはまばゆい金髪の黄金虫……もとい、生徒会長である。
「ジャージに余りが無い……」
「ムカつく対象、なんか違わない?」
「違わなくない……」
この間にも運動会は着々と進められていた。校長の話から、今まで顔も知らなかった……というか、興味のかけらも無い来賓の話。運動会のルール説明。それが終わると準備体操でそのあと第一種目の50m走である。そして準備体操。校庭に流れて来たのは、あの朝6時半からラジオから聞こえるピアノの伴奏である。よく小学生が夏休み頑張って早起きしていく、あの体操だ。
「ラジオ体操とか、何年ぶり……つか、この学校金持ち学校だよな……」
「いろんな企業の坊ちゃん達がラジオ体操やってるとかうけるよな」
「お前もだろ」
「理麻の家には敵わねーよ」
「そうか?」
体操が終わり、それぞれのクラスの応援席に戻る。
「そういえば、理麻はなんの種目に出るんだ?」
「それを聞くんじゃねーよ」
「は?」
なんだって俺が2種目も出ないといけねーんだよ。
「理麻、一緒にがんばろ―な!」
「あ……うん……」
そうだな、とりあえず俺をあの種目に勝手にエントリーさせた井上は殴っていいよな。それから、お前が今座ってるの俺の椅子だから。頑張って教室から運んできたんだぞ。お前の椅子はその隣だろう。俺の椅子の下に目印としてスポーツドリンク置いてあるんだよ。だからそこどけ。やめろ、抱きつくなあああああああああああ!!!
次回はいよいよ種目で奮闘する理麻ですね。