俺・理麻「しまった、文句言って蹴っ飛ばしにいくの忘れてた」
はい、サブタイの通り、僕の方ではなく俺の方の理麻の視点になります。
そして、久々にあの人が出てきますね。
その日の夜。理事長室の前に、理麻がいた。ドアの隙間からまだ明かりがもれてきているから、どうやら奴はまだ中にいるようだ。理麻はやや乱暴にドアを一応ノックして中に入る。案の定奴は机に向かっていた。しかし、入ってきた理麻の姿を見るなり、理事長の暁圭吾は視線を理麻に向けた。
「こんばんは・・・篠宮君。いや・・・閃夜?」
「一瞬で見抜くか。さっすがってとこか。」
「おお、あってたんだね。いやぁ、転入して来た時はてっきり閃夜だと思ってさぁ。篠宮君に抱きついちゃったよ。」
「何故に抱きつく。」
「だめ?」
26のおっさんが小首を傾げるな。だめに決まってるだろうが。特にお前は問題外だ。
「いい年して生徒に手、出していいのかよ。」
「僕、教師じゃないからね。なんか飲むかい?」
「いらね。俺は飲み食いしないんだよ。」
「そうだったっけ。いやぁ、さすがに腕は衰えたりしないんだね。喧嘩教えたのは間違ってなかったかなぁ?」
「お前に教わったのは族の世界の事だけだし。大体ヘタレのお前に喧嘩教わるわけないし。」
「ヘタレじゃないの。これは仮の姿だって閃夜も知ってるくせにね。」
「元この町最強の族のリーダー。いまは幻の不良って言われてるってねぇ。」
「まだそんな噂たってんの?で・・・今日はなにしに来たの?」
「お前蹴っ飛ばしに。」
「っ・・・・・え-っと・・・理由は?」
「この俺に抱きついた。後昼の俺ビビらせたからなんかむかつくから蹴らせろ。」
「うわぁ・・・やっぱ来た。」
「あぁ?大体いつも抱きつくなっつってるよな?なのにお前はまだ抱きつきやがって。」
だいたい、昼の俺は誰かれ構わず抱き尽かさせすぎなんだよ。なんだ?好きなのか抱きつかれるの?違うだろ?ったく、覚えてる俺の身にもなってみろ。
「思い出すだけで鳥肌が立つ!」
「ほんと、同一人物とは思えないね・・・・。気を付けなよ?あの一件以降、『twilight』の奴ら閃夜を探してるしね。」
「あいつらに見つかっても、返り討ちするから問題ねーよ。」
「閃夜はともかく・・・篠宮君の時はどうするのさ。」
「それは・・・・。強制チェンジする。」
「ま、閃夜次第だけど。あんま敵を見くびり過ぎるのもよくないよ。喧嘩だけ強くても駄目なんだから。」
「?」
「そういうとこはおんなじなのかな。」
「わっけわかんね。じゃ、もう帰る。」
「あれ、蹴ってかないの?」
「気が失せた。でも今度やったら蹴る。」
理麻はそういって理事長室を後にした。確かに不安がないわけじゃない。もし俺ではなく僕の方の理麻だった時に『twilight』のやつらにあって閃夜だとばれてしまったら?間違いなくリンチされる。勝ち目なんかないも同然だ。その時俺がナイスタイミングで変われればいいが・・・上手くいくかは分からない。
「めんどくせ・・・二重人格とか・・・・。でも・・・あんなことがあったんだ・・仕方ないのか・・・・・。」
僕が忘れた過去。
俺が覚えてる過去。
僕が体験した過去。
俺は体験してない過去。
そしてそれこそ二人の理麻が生まれた原因・・・・・・・・・・・・・
ってことで理事長登場です。
何気に理事長いろいろ知ってるっていうのは、族にも通じてるからですね