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再会

この物語は、女性から見た、感じたBL物語です。


理解して頂けない方はご遠慮願います。


それでは、最後まで読んで頂ければ、幸いです<m(__)m>

    第1章



少し高いヒールを履き、慣れない都会の喧騒の中を歩く。

人形のように整った顔に、腰まであるのではないか、と思うほど長い艶やかな黒髪が人目を引いている。

短い前髪は、学生の時のそれそのままだった。

今年26になるけれど、幼い顔はそのままで、薄化粧が妙に色気を発している。

普段であれば、その瞳も光を湛えた眩しいまでにキラキラしているはずだけれど今はその光を失い、ただ進行方向を向いていた。

出来れば参加等したくはなかった。

けれど、仲が良かった1人から、どうしても…と言われてしまえば、もう断れない。

一月前の電話で友人だった彼女は思わせ振りに『来たら驚くよ』と言う。

正直どうでも良かったが、愛想笑いをして桜小路(さくらこうじ) 加良(から)は、喧騒の中を歩いた。



「こ、こ?」

送られてきた葉書を睨みながら、店の名前を確認する。どうやら間違いないようだ。腕時計で時間を確認し小さく溜め息を吐く。そうして店の扉を開いた。



店の中は、小さな音でボサノバが流れている。

海を思わせる装飾に、自然と笑顔が零れた。

店の名前は確かビーチサウンドとかいったか。加良は1人で納得し店の中を見渡した。

「加良!」

自分を呼ぶ声がする。視線の先に、前の友人が立っていた。彼女の名前は確か、雛奈(ひな)と言ったか。

加良は花が匂い立つような笑顔を浮かべ、周りの視線を独り占めした。

「お久しぶりです、雛奈さん」

笑顔のまま彼女に近づくと突然抱き締められた。

「相変わらずだね、加良!」

どう相変わらずなのか理解できないけれど、大人しくそのままでいる。雛奈は気が済むまで加良を抱擁し、漸く解放してくれた。

加良は気付かれないように小さく息を吐き、そうしてそのテーブルに視線を馳せた。

ざっと見て、10人位だろうか。同窓会と聞いていたからもっと居るであろうと思っていた加良は、肩透かしをくう。横でにこにこしていた雛奈に視線を向けた。その視線を汲んで、彼女は苦笑を浮かべる。

「今日はちょっとサプライズゲストが来るから、本当に仲が良かった奴しか呼ばなかったのよ」

本当に仲が良かった、と思われていた事を知り申し訳なく思ってしまう。

リーダー的存在だった雛奈は加良を2つ空いている席の1つに座らせ、反対側の自分の席に戻っていった。


雛奈の合図で宴がスタートする。基本お酒を呑まない加良は直ぐにソフトドリンクに切り替えた。

参加者は各々近い席の人間と昔話に花を咲かせている。けれど加良は自分の横の席がいまだに空いている事が気になった。逆隣の人に聞いてみても

「来てのお楽しみだよ」

とはぐらかされてしまう。そうなると余計に気になってしまうのが人間の性分というもの。加良は目の前にある美味しそうな食事もそこそこに、さっき自分が入ってきた入口に視線を馳せた。

その時だった。

さっき入ってきた入口が開き誰かが入って来る。加良は目を凝らし、その人物を認めようとして、持っていたグラスを倒してしまった。

「あぁ〜!加良、何してんのよ!?」

雛奈の大きな声も耳には入ってこない。

長い手足を優雅に揺らし歩いて来るその人物に、加良の瞳からは大きな雫が零れた。

ほっそりとしたその人は、全体的に色素が薄く、歩くだびに揺れる長めの髪も、まるで脱色したように薄い茶色だ。決して低くはないはずの身長は、しかし女性モデル位だろう。

ユニセックスのその人は、小柄な加良を認めると、こちらが赤面してしまうのでは、と思うほど綺麗な笑顔を湛えた。

「加良ちゃん、大丈夫?」

優しい懐かしい声。

「ま、つり…くん?」

涙で滲んだ視界に映った(まつり)は、少し困ったように笑い、加良の小さな身体をその腕に包みこんだ。暖かい抱擁に、幻ではない事を知る。

言ってやりたい事は沢山有って、しかし加良の喉は言葉を発する事はなかった。

「加良ちゃん?泣かないで…困ったなぁ…」

ポンポンと背中を擦られて余計に涙を誘われる。

そこにいた全員が2人を優しく見守り、そうしてうっすらと涙を浮かべていた。



雛奈の言葉に、漸く加良は顔を上げそうして2人は席についた。

まだ瞳を潤ませていた加良だったが、初めての失態である事に気付いて苦笑を浮かべる。横に座った祀がふわりと笑った。

「ごめんね、加良ちゃん」

その笑顔が少し歪む。

何を謝っているのかは、多分解っているつもりで涙で崩れてしまった人形のような綺麗な顔を苦笑に歪めた。

「…いままで、祀くんは何してたの?…私は祀くんと(みやこ)くんに約束したように、ちゃんとあの…学園を卒業したよ…」

苦い物言いに、祀は加良の頭を優しく撫でる。

「噂は聞いてたよ。首席だったんだってね…。俺はね西多摩の方の高校に編入したんだよ?ちゃんと卒業もしたしね」

綺麗な顔をお茶目に崩し、祀はふわりと笑った。その笑顔が昔のままで加良は目を細める。

「加良ちゃんには…辛い思いをさせたよね?」

色素の薄い瞳を伏せながらの言葉に胸が痛んだ。

「違うよ!」

思わず大きな声が出てしまう。伏せられた瞳が揺れているように見えて、加良まで瞳を揺らせてしまう。

「2人とも大好きだったのに…私はその人達を守れなかった。謝るのは私の方よ」

しっかりと視線を上げ、祀を見詰めた。

「…転校した後、色々あったんだよ?加良ちゃんに又逢えたら、色々話そうと思っていたんだ。…聞いてくれる?」

何かを決心したような顔をし、祀は言う。断るなんて考えは毛頭なくて、加良は笑顔で話を促したのだった――――。





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