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小さな光を大切に

作者: P4rn0s
掲載日:2025/11/18

夜の部屋の明かりは、まるで世界の端でひとりぼっちになったみたいに小さい。

机の上に置いたマグカップの底には、冷めた紅茶が少しだけ残っている。

スマホを眺めても、特に誰からの通知もない。

ふと、思う。

もっと、いろんな人とちゃんと関われていたら、今は少し違ったのかなって。


高校の頃、誰とでも話せるやつがいた。

いつの間にか輪の中心にいて、誰からも好かれてた。

それを見て羨ましいと思ったこともあったけど、同時にああはなれないとも思った。

自分は気の合う少数とだけ静かに付き合うほうが性に合ってる。

そう信じてきた。

でも、あの頃の「少数」はいつの間にか「ほとんどいない」に変わってた。

それに気づいたのは、ひとりで過ごす夜が増えた頃だった。


誰かの誕生日を覚えていたのに、気づけばその日を祝う相手がいない。

グループLINEはしばらく前から止まったまま。

「久しぶりに飲もう」って送るのも勇気がいる。

なぜだろう。

仲良くなれるはずだった人たちが、

いつの間にか自分の世界の外に置き去りになっていった。

思い出すと胸が痛くなる。

あのとき、もう少し話を聞けばよかった。

あのとき、ちゃんと謝っていれば。

そんな「もしも」ばかりが頭の中に積もっていく。


関わってきた人たち全員を大切にできてたら、

後悔もなかったのかもしれない。

でも、実際はそうじゃない。

目の前の誰かを大事にすれば、

別の誰かに目を向ける余裕がなくなる。

気づいたら誰かを疎かにして、

そしてその「誰か」は二度と戻ってこない。

関係って、壊れるときは音もなく崩れていく。

喧嘩なんてなくても、

会話が減って、返信が遅くなって、

気づけばただの「知ってた人」になっている。


たまにSNSで懐かしい名前を見かける。

写真の中の笑顔は、もう自分の知らない生活の中にある。

いいねを押す指が止まる。

押しても押さなくても、

あの頃の距離には戻れないと分かっているから。

それでも、彼らが笑っているのを見ると、

なんとなく安心する。

もう自分とは無関係でも、

その幸福がちゃんと続いているなら、それでいいと思う。


とはいえ、今から新しい友達を作るのは難しい。

そう思ってしまう。

表面だけの会話や、

どうでもいい連絡のやり取りに心を使う余裕がない。

それに、一度関係ができると、

また壊れるときの痛みを想像してしまう。

「どうせまた誰かと離れるくらいなら、最初から一人でいいや」

そうやって守りに入るたびに、

世界は静かになっていく。


でも、本当は知ってる。

このままでは、

誰かと笑い合う時間さえも思い出せなくなるってことを。

夜が長いのは、孤独のせいじゃなくて、

誰かの声を思い出せないからだ。

心が静かになりすぎると、

自分の中の後悔の声ばかりが響くようになる。


もう一度、誰かとちゃんと話せるようになれたら。

そう思うことがある。

けど、それは勇気がいることだ。

過去の痛みをもう一度味わう覚悟が必要になる。

だから多くの人は踏み出さない。

自分もその一人だ。


ただ、それでも思う。

もし誰かが、ほんの少し手を差し伸べてくれたら、

俺はたぶん、またちゃんと笑える気がする。

関係が壊れることを恐れて生きるより、

それでも誰かを大切にできたほうが、

きっと少しだけ、人間らしい。


紅茶を飲み干す。

カップの底に残った影が揺れている。

もう夜も遅い。

スマホの画面には、誰からの通知もない。

それでも、

明日こそは誰かに「元気?」って送ってみようか。

そんなことを思いながら、

小さく笑って明かりを消す。

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