4
皮膚を貫くような寒さでアタシは目を覚ます。
全裸の肌にシーツがじかに絡む。慣れない感覚。
『そうだ、アタシ、裸で寝たんだ』
終わった後、抱き合ってそのまま眠りについたはずだった。でも、今、三人分ぐらいありそうな大きなベッドに眠っているのはアタシ一人だった。
彼は何処へ行ったのだろう?
アタシは、ベッドから起き上がった。下着はどこかへ脱ぎ散らかしてしまったので、とりあえずシーツを身体に巻く。昨日は生まれたままの姿で求め合ったけれど、それとは話が別。やっぱり裸を見られるのは恥ずかしい。
室内を見渡す。彼の服が無い。
トイレをノックする。いない。
昨日、一緒に入ったバスルームを覗く。いない。
近くのコンビニに飲み物でも買いに行ったのだろうか?
もしくは、急な仕事が入ってしまったのだろうか?
今までにも、急な仕事による予定のキャンセルは稀にあった。そんな時、彼は本当にすまなそうな顔で「ゴメン」と謝る。でも、今日は、その「ゴメン」がない。
不意に、身体が身震いした。シーツ一枚だけでは寒い。
服を探す。
アタシの服は部屋の隅に畳んでおいてあった。彼がやってくれたのだろう。下着も一緒だ。
身体にまとったシーツをとりはらい、ショーツから順番に身に着けていく。服を一枚着るたび、一夜の夢から、現実へと戻っていく、そんな錯覚を覚えた。
最後の一枚を拾うと、下から茶封筒が現れた。
『ゴメン』
と、表面に紅いボールペンで書いてあった。やっぱり、仕事がらみのドタキャンだ。せめてアタシが起きるまで待っていて欲しかったけれど、仕事なら仕方ない。
茶封筒をあけると、中に一万円札が何枚か入っていた。ホテル代とタクシー代だと思う。
一万円札に紛れ、三つ折りにされた白い紙が入っていた。手紙のようだ。
あえて、メールを使わないで、古風な手紙なのが洒落ている。
なんだか嬉しい。
アタシは、手紙を広げた。
そこには、英語で、たった数語書かれていた。
その言葉は、アタシを現実から夢の世界へと送る魔力があった。
しかし、夢は夢でも、今度は悪夢だ。
よくわからない。かかれた言葉の意味が理解できない。
何が起こったのだろう? 何がいけなかったのだろう?
なんで? どうして? 何故?
アタシの頭の中に、疑問符がくるくると回り始める。
狂狂、狂狂と。
意味がわからない。何、コレ?
その紙面に書いてあった言葉。紅い文字で、紙面いっぱいに書かれているその言葉は
「Welcome to AIDS」
――エイズへようこそ――




