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ハルの春恋事情

 私は春になると恋をする。

 なぜそうなるのかは自分でも分からない。

 その度に告白している。

 周囲の友人から告白魔とまで言われて嫌だけど、これは治らないのだ。

 この恋の病は中学二年生の時から発症している。

 なんでこうなったのか自分でも分からない。



「純乃ハル! 告白は嬉しい。だけど……ごめん、お前の噂を聞いているせいか好きになれない」



 あーまたフラれた。最初の頃は、こんなんじゃなかったけど。

 春になると恋の病を高三になる今までに何回も発症しているから知っている人たちには嫌がられている。



 フラれた私は校門を出て家に帰ろうと駅に向かい歩いていた。



 ふと書店の前で立ちどまる。



 そういえば今日、文庫本の発売日だ。人気があるシリーズの最終巻だから売り切れていなければいいけど。



 そう思い書店の中に入ろうとしたその時、誰かが体当たりしてきた。私は、ヨロケて地面に倒れる。



 えっと……何が起きたの?



 起き上がりながら私は自分のみえる範囲をみた。



「……リュックがない!?」



 どうしようと思いながら私にブツかっていった人が向かっただろう先へ目線を向ける。



「……!?」



 物凄いスピードで私のリュックを持って逃げてる犯人を追いかけてる男性が視界に入ってきた。



 かっこいい……♡



 その男性は、ひったくり犯に飛びつき押さえ込んだ。

 ひったくり犯は逃げようと殴りかかる。

 それを軽々と避け男性は殴りかかってきた腕を掴み捻った。

 ひったくり犯は相当痛いのだろう苦痛の表情を浮かべている。

 男性はひったくり犯の腕を掴んだまま体に重心をかけた。

 そのままひったくり犯は地面に倒れ込んだ。

 それを確認したかのように男性は、ひったくり犯の上にのる。

 すると男性は自分のポケットからスマホを取り出し何処かにかけていた。

 恐らく警察だろう。



 あっ! 御礼を言わないと。



 そう思い私は男性のそばへと向かった。

 私は男性のそばまでくると頭を下げる。



「あ、ありがとうございます」

「ん? ああ……怪我はないか?」

「はい……少し擦りむいた程度なので大丈夫です」



 なんて優しい言葉をかけてくれる人なんだろうと思った。



「それなら良かった」



 そう言いながら自分の靴から紐を解き抜く、もう片方も同じく解いて抜いている。

 私は何をしているのか不思議に思いみていた。

 男性は二つの紐を結ぶと、ひったくり犯の手をグルグル縛り始める。



 なるほど……でも手だけで大丈夫なのかな?



 そう思っていたが男性は、ひったくり犯から離れた。

 心配を余所に、ひったくり犯は立とうとしてもジタバタするだけで無理みたいだ。

 更に男性を凄いと思い私の胸は、ドクンドクンと高鳴る。

 これは今までにない感情だった。



 これが本当の恋なの?



 何時の間にか私は男性の手をとり握っている。



「あ、あのー……」

「何かな?」

「あーえっと……一目惚れなんです! 私の恋人になってくれませんか?」



 今ここで、この気持ちを伝えなければ一生この人には逢えないと思った。だから思いきって告白をしたのだ。



「クスッ……君って面白いね」



 そう言われ私は恥ずかしくなった。



「ご、ごめんなさい! 私……何を言って」

「なんで謝るの? 俺は嬉しかったけど。それともツイ言っちゃった的なヤツかな。だったら……」

「いえ! 違います。本当に一目惚れなんです」



 本当に好きなんだ。逢ったばかりなのに今までに感じたことのないものが心の底から湧き上がってくる。

 それは抑え込もうとしても無理らしい。彼の腰にしがみついていた。



「こんなに積極的にアプローチされて嫌って言えないよな。こんな俺で良かったら付き合ってください」



 そう言い彼は私の頬にキスをする。それとほぼ同時に私の顔が熱くなった。

 嬉しくて涙が溢れ出る。彼が涙を拭いてくれた。


 優しい……。


 その後お互い名前を教え合ったあとSNSのアドレスを交換する。

 彼の名前は遠流拓海(とおりゅう たくみ)。素敵な名前だ。

 そして、その間に警察が来て事情を説明したあと解放された。

 そのあと私は彼と食事をして「またね」と言い家へと帰る。

 この日から私は彼氏ができたため毎春おきる告白病を克服できたのだ。

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― 新着の感想 ―
 面白かったです。  ハッピーエンドですが、「いつかこの娘、男に酷い目に遭わされるんじゃないか?」と心配になりました。
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