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太陽と星  作者: そーゆ
9/10

勝利の代償と病の影

前話から半年後の2025年11月、アメリカ連邦共和国の地下都市に暮らす悠斗たちの耳に、戦争終結のニュースが届いた。日本帝国連邦が本格参戦し、圧倒的な海軍力と航空戦力でアメリカ騎士団国を壊滅させたのだ。騎士団国の首都ニューアーリアは陥落し、指導者クロイツは自決。しかし、敗北を悟った騎士団国は最後の抵抗として、アメリカ帝国、テキサス人民国、救国政府へ核兵器を発射。ロッキー山脈以東の多くの都市は重度の核汚染に覆われ、居住不能となった。灰色の空の下、数百万の難民が西へ逃れ、連邦に流入し始めた。


シアトルの地下都市では、戒厳令が解除され、地上への移住が再開された。平和は戻ったものの、難民の急増で治安は悪化。略奪や暴動が頻発し、配給所には長蛇の列ができた。悠斗は仲間たちと地上に戻り、荒れ果てた街並みを見ながらつぶやいた。「勝ったけど……これが平和なのか?」


ある日、藤田茉由が配給所でもらった缶詰を開けた。「うわ、なんか臭い……」と顔をしかめたが、空腹に耐えかねて食べた。数時間後、彼女は激しい嘔吐と下痢に襲われた。「うっ……気持ち悪い!」と床にうずくまり、悠斗が慌てて医務室に運んだ。診断の結果、腐った配給品によるノロウイルス感染だった。医務室の医師は「難民流入で食料管理が杜撰になってる。こんなケース増えてるよ」と嘆いた。


茉由はベッドで横になり、弱々しく笑った。「悠斗、私って運悪いよね……戦争終わったのに、こんな目に遭うなんて」悠斗は彼女の手を握り、「すぐ治るよ。俺がついてるから」と励ましたが、内心では苛立ちを感じていた。戦争は終わったはずなのに、苦しみが続く現実が許せなかった。


一方、布哇県のヘルガからの手紙が届いた。「こちらは無事よ。核は届かなかったけど、難民が押し寄せてきて大変。悠斗たちも気をつけてね」と綴られていた。彼女は現地の支援団体と協力し、難民の世話をしているという。悠斗は手紙を読み返し、「ヘルガは頑張ってる。俺も何かしないと」と決意を新たにした。


シアトルの街は、核戦争の余波と難民問題で混沌としていた。配給品の質は落ち、病気が蔓延。茉由は数日で回復したが、彼女の笑顔は以前より儚げだった。悠斗は地下都市の暗闇を思い出し、「平和って、ただ戦争が終わるだけじゃないんだな」と悟った。勝利の代償は、あまりにも大きかった。

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